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安保法制で自公が法案の骨格に実質合意、自衛隊の任務拡大

2015年03月18日(水)19時02分

 3月18日、自民、公明両党は、新しい安全保障法制の骨格について実質合意した。写真は航空観閲式に出席した安倍首相、2014年10月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 18日 ロイター] - 自民、公明両党は18日、新しい安全保障法制の骨格について実質合意した。既存の法律を改正して集団的自衛権の行使を可能にするほか、新法を作って他国軍の後方支援を拡大するなど、自衛隊の任務を広げる。20日に両党で正式合意した上で、政府が法案作業に着手する。

この日合意した骨格は、今後の法案作成の基礎になるもの。共同訓練や共同哨戒する他国軍が攻撃を受けた場合に、自衛隊がその国の艦船などを守れるよう自衛隊法を改正することや、朝鮮有事など日本の安全保障に影響する事態が起きた際に、後方支援の対象を米軍以外に広げたり、支援内容を拡大できるよう、周辺事態法を改正することを盛り込んだ。

日本の安全保障には影響しないものの、国際社会の安定のために活動する他国軍への支援を常時可能する新法の制定も示した。2001年の同時多発テロ事件を受け、補給活動のために自衛隊をインド洋に派遣した際や、イラクの復興支援で自衛隊を派遣した際は、時限立法で対処した。

焦点の集団的自衛権の行使では、他国が攻撃された場合でも自衛隊が武力を行使できる新たな事態を武力攻撃事態対処法に追加。そうした事態の定義を明確にするほか、自衛隊に防衛出動を命じるには原則として国会の事前承認を義務付けるとした。

<条文作成後に協議再開>

自公はこの日の協議後、それぞれ党内で骨格に対する了承を取り付けた。20日に再び両党が集まり、正式に合意する。これまでの協議で意見が一致していない論点があるため、政府が条文を作成した後に協議を再開する。

自公協議の座長代理を務める公明党の北側一雄副代表は「いくつか大事な課題が残っているが、条文を見て協議をしないとち密な議論ができないので、政府に早急に条文作成してもらい、4月中旬以降に与党協議を再開する」と語った。

政府は大型連休明けの5月中旬に法案を国会へ提出したい考え。

◎自公が実質合意した法案骨格の概要

(1)武力攻撃に至らない侵害(グレーゾーン事態)への対処

日本の防衛にかかわる活動を行う米軍の武器などについて、自衛隊による防護を可能にする。米軍以外の武器防護も法整備の検討対象とする。手続きについて内閣の関与を確保する。

(2)日本の平和に関係する活動を行う他国軍への支援

日本の平和と安全に重大な影響を与える事態が発生した際に活動する米軍への支援内容を改正する。米軍以外の軍隊も支援できるようにする。原則として国会の事前承認を必要とする。

(3)国際社会の平和と安全への貢献

新法を制定し、国際社会の平和のために活動する他国軍への後方支援を常時可能にする。支援対象は国連決議に基づく活動であること、または関連する国連決議があることが前提。

(4)国際平和活動の実施

PKO(国連平和維持活動)に従事する自衛隊の活動内容を拡大、武器使用権限を見直す。国連が統括しない人道復興支援活動などへの参加は、従来のPKO参加5原則と同様の厳格なものとする。隊員の安全確保に必要な措置を定める。

(5)憲法9条下で許容される自衛の措置(集団的自衛権)

昨年7月に閣議決定した武力行使の新三要件を条文に過不足なく盛り込む。新三要件で武力行使が可能になる「新事態」の定義を明確にする。防衛出動の際は、原則として国会の事前承認を義務付ける

(6)その他

・船舶検査活動:国際社会の平和と安全のため、日本周辺での有事以外の検査活動について法整備を検討する。

・在外邦人の救出:事態が発生した領域国の同意があり、同国政府の権力が維持されていることなどを前提とした上で、武器使用を伴なう救出に対応できるよう法整備を検討する。

*内容を追加しました。

(久保信博 編集:山川薫)

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