ニュース速報

ビジネス

欧州レポ市場の債券が不足、ECB量的緩和で市場にゆがみ

2015年03月18日(水)00時36分

[ロンドン 17日 ロイター] - 欧州レポ市場で国債を調達するコストが急上昇しており、欧州中央銀行(ECB)の国債買い入れが引き起こしている市場のゆがみを浮き彫りにしている。

レポ取引では国債など債券を担保に資金調達を行うが、現金を差し入れて債券を調達することに利用することも可能。レポ取引は債券取引の決済を支える役割を果たしている。

ECBは量的緩和(QE)策で買い入れる債券を市場で再び貸し出す方針を示しているが、QE開始後も、どのような形を取るのかは不明なままだ。

みずほのストラテジスト、ピーター・チャットウェル氏は、「QEをできるだけ早期に、すべての運用面での詳細を確定する前に実施したことは非常に明らかだ」と指摘。「この不透明感は、われわれの資金調達市場が通常通り機能していないことを意味する」とした。

過去2週間に、レポ取引の適格担保であるイタリアとスペイン国債のバスケットの利回りは3カ月以上の借り入れ期間においてマイナスの水準に低下した。

つまり、レポ取引実施機関は現金を差し入れてこういった国債を調達するのに、事実上のプレミアムを支払っているということだ。 アナリストらによると、市場に債券が不足していることを示しているという。

ブローカーらの提示した価格によると、銀行は、最上位のトリプルA格付けのドイツ国債をECBの買い入れ対象とはならないような低い利回りで購入し、レポ取引で貸し出すことで 大幅なプレミアムの支払いを受けることができる。

ただ、トレーダーらは、価格は決まっているものの、レポ市場では国債を短期間しか貸し出さない取引先しかみつからない場合が多いと指摘する。

1人のブローカーは、ECBの買い入れ対象となるドイツ国債について、3カ月借り入れるには債券の銘柄を特定しないジェネラル取引の担保よりも高価になっていると述べた。

ECBのクーレ専務理事は先週、このような市場のゆがみを証券貸出によって軽減させたいと表明。この対応によって流動性ひっ迫の問題が解決されるかについては、アナリストらの見方は分かれている。

ECBは来月の理事会でさらなる詳細を公表する可能性があるが、いかなる制度も年半ばまでに完全実施となる可能性は低い。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、5月前年比+2.6%に鈍化 コア

ビジネス

ECB、インフレ目標達成に自信 統計のぶれ無視でき

ビジネス

トヨタ初の高度運転支援機能付きEV、25年に中国で

ワールド

トルコ、資金洗浄の「監視強化リスト」から除外
MAGAZINE
特集:小池百合子の最終章
特集:小池百合子の最終章
2024年7月 2日号(6/25発売)

「大衆の敵」をつくり出し「ワンフレーズ」で局面を変える小池百合子の力の源泉と日和見政治の限界

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地...2枚の衛星画像が示す「シャヘド136」発射拠点の被害規模
  • 3
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス卿が語る
  • 4
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セク…
  • 5
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 6
    衛星画像で発見された米海軍の極秘潜水艇「マンタレ…
  • 7
    貨物コンテナを蜂の巣のように改造した自爆ドローン…
  • 8
    「次世代のトム・クルーズ」と話題のイケメン俳優、…
  • 9
    白昼のビーチに「クラスター子弾の雨」が降る瞬間...…
  • 10
    偉大すぎた「スター・ウォーズ」の看板...新ドラマ『…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地...2枚の衛星画像が示す「シャヘド136」発射拠点の被害規模
  • 3
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス卿が語る
  • 4
    偉大すぎた「スター・ウォーズ」の看板...新ドラマ『…
  • 5
    「何様のつもり?」 ウクライナ選手の握手拒否にロシ…
  • 6
    スカートたくし上げノリノリで披露...米大物女優、豪…
  • 7
    衛星画像で発見された米海軍の極秘潜水艇「マンタレ…
  • 8
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 9
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セク…
  • 10
    ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイ…
  • 1
    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に
  • 2
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 3
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間
  • 4
    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…
  • 5
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 6
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 7
    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…
  • 8
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 9
    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 10
    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中