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アングル:中国に業界再編の波、国有企業肥大化の懸念も

2015年03月12日(木)14時11分

 3月12日、中国政府は自国産業の世界的な競争力を高めるため、さらなる業界再編に取り組む方針だ。国有企業を効率化させる狙いもあるが、一方で有力企業の肥大化が進むとの懸念も出ている。写真は、中国の国旗、1月撮影(2015年 ロイター/Aly Song)

[北京/香港 11日 ロイター] - 中国政府は自国産業の世界的な競争力を高めるため、さらなる業界再編に取り組む方針だ。国有企業を効率化させる狙いもあるが、一方で有力企業の肥大化が進むとの懸念も出ている。

李克強首相が全国人民代表大会(全人代)での政府活動報告で打ち出したのは「中国製造(メイド・イン・チャイナ)2025」。国外での鉄道敷設や原子力発電所の建設など、主要産業の振興に注力し、国際的に競争力のある巨大企業を誕生させる取り組みの一環だ。

中国の家電大手、TLC集団の李東生・最高経営責任者(CEO)は「規模と強みがなければ、国際化はかなり難しい」と話す。3月中の発表が見込まれる再編計画には、国の保有株式を管理する資産運用会社の設立をはじめ、政府がコントロールする企業に民間からの投資を認めることや、業績連動型報酬の導入など、幅広い施策が盛り込まれると専門家はみている。

中国景気が鈍化する中、国有企業の効率化は重要課題で、「2025」戦略はその取り組みの一環だ。政府は、エネルギーや運輸、国家安全保障に関係する企業など戦略上重要な産業の管理を強化しつつ、それ以外については株式売却や上場を通じて管理の手を緩める方針。

調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの調査部門幹部、アンドリュー・バストン氏は「中国は世界的に競争力のある企業を誕生させることを狙っている。企業規模の拡大を進めることが、それを達成するための1つの手段だ」と述べた。

<造船、エレクトロニクスなどで再編加速か>

最近の流れとして原子力や鉄道の分野での合併が顕著になっているが、その他の製造業セクターでも再編が加速する可能性がある。

李首相が「2025」戦略を宣言した同じ日に、資産管理当局が大手鉄道車両メーカーの中国北車(CNR)<601299.SS>と中国南車(CSR)<601766.SS>の経営統合を承認。両社の合併は12月に公表されていた。

2月には中国電力投資と国家核電技術公司(SNPTC)が合併を模索していることが明らかになった。アナリストによると、総資産は960億ドル超という。

中信証券(CITIC証券)のチーフエコノミスト、Zhu Jianfang氏は「中国にとっての再編は、世界的な視野から捉えられるべきだ」と述べ、様々な業界でさらに再編が行われるとの見方を示した。

業界の専門家によると、造船、エレクトロニクス、建設の分野での合併が見込まれる。業界関係者や現地メディアの報道によると、既に中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)の合併計画が進行中だ。

北京を拠点とする長盛基金管理のポートフォリオ・マネジャーは現在進められる国有セクター改革で恩恵を受けるとみられる企業を積極的に模索することが最優先事項の1つになっていると明らかにした。安徽省や上海などにある国有企業の多くが今後、親会社からの資産注入を受けるか、上場する可能性があるという。

<疑念を抱く業界幹部も>

ただ、国家主導の合併で、世界的により競争力のある国有企業が誕生するとの見方に疑念を抱く業界幹部もいる。これまでの10年で、低利の融資や助成金により有力な国有企業が肥大化し、効率化を犠牲にした事業拡大が行われたからだ。

中国の石油・ガス分野の専門家は、一部で資産統合の動きが見られる可能性は認めつつも、先月、国外で伝えられた中国石油天然気集団(CNPC)と中国石油化工(シノペック)の合併観測については否定した。そうした合併はコントロールできない程巨大な独占企業を誕生させ、中国の消費者が不利益を被ることになる、と指摘した。

(Matthew Miller記者、Charlie Zhu記者;翻訳 青山敦子;編集 加藤京子)

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