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原油安は政策の問題にならず、物価基調押し上げ=石田日銀委員

2015年02月26日(木)12時50分

 2月26日、石田浩二日銀審議委員は、原油価格の下落を受けて物価上昇率の鈍化が続いているが、目標の2%程度に上昇していく道筋が見えているのであれば、金融政策運営の問題にはならない、との見解を示した。2011年11月撮影(2015年 ロイター/Yuriko Nakao)

[横浜市 26日 ロイター] - 石田浩二日銀審議委員は26日、横浜市内で講演し、原油価格の下落を受けて物価上昇率の鈍化が続いているが、目標の2%程度に上昇していく道筋が見えているのであれば、金融政策運営の問題にはならない、との見解を示した。そのうえで、物価の基調的な動きを見る場合、当面はエネルギー価格の寄与度を踏まえて評価していく必要があるとした。

<物価の基調、当面はエネルギーの寄与度踏まえ評価>

石田委員は、昨年夏場以降の急速な原油価格と金融政策運営の関係について、原油安を受けて消費者物価(生鮮食品除く)の前年比上昇率の鈍化が続いているものの、「原油価格の下落は、やや長い目で見れば、景気刺激効果を通じて物価への基調的な押し上げ要因になる」と説明。そうした中でも、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率は「安定的に推移している」とし、今後、物価が2%程度に向けて再び上昇していく道筋が見えていれば、原油価格の下落が「政策運営上、特に問題になることはない」との見解を示した。

もっとも、原油価格の大幅な変動で「消費者物価の基調的な動きが見極めにくくなっている」とも指摘。物価の基調は「さまざまな指標を点検しながら総合的に評価することが基本」としながらも、「当面は、エネルギー価格の寄与度を踏まえつつ、評価していくことが適当」と語った。

エネルギー価格を除いた指数では、食料も含めて控除するいわゆる「コアコア指数」が公表されているが、石田委員は「昨年来、生活必需品の値上がりが消費者マインドを圧迫してきた」ことから、「物価の基調的な動きを捉える際に、食料品を含めた指数を見ていくことも大切」との認識を示した。

一方、実質賃金算出の際にも控除される「持ち家の帰属家賃」を除いた指数を重視していると指摘。「持ち家の帰属家賃」は長く下落基調にあり、今後もそうしたトレンドが続く場合は、物価全体に対する大きな下押し要因になるとし、その場合は「家計の実感とのかい離、あるいは賃金上昇率との関係という点から、諸々の問題が生じる可能性がある」と語った。

<物価上昇スピード増せば、QQEのアクセル緩める必要>

今後の金融政策の展開については、「経済・物価情勢が想定通りに展開していけば、時間の経過とともに2%の物価安定目標の実現が近づいてくる」と展望。金融政策の出口議論は「現時点で時期尚早」としながらも、「先行きの物価が上昇スピードを増していけば、現在、力いっぱい踏み込んでいる量的・質的金融緩和(QQE)のアクセルを徐々に緩めていくことも、いずれ必要になってくる」と語った。

日銀ではQQE継続にあたり、経済・物価の上下リスクを点検し、「必要な調整」を行うとしている。この点について石田委員は「『必要な調整』は、経済・金融面での不均衡など、より長期的な視点から、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現が損なわれるリスクが大きくなった場合」への対応との考えを披露。「2%の物価安定目標の達成時期やそのペースに対して行うものではない」との考えを示した。

<日本経済、回復経路に復帰する方向性見えてきた>

日本経済については、実質輸出が「はっきりと増加に転じている」など輸出が持ち直していることや、個人消費について駆け込み需要の反動減の影響も収束しつつあるなど「本年度前半の踊り場的な局面を経て、緩やかな回復経路に復していく方向性が見えてきた」と強調。原油価格の下落は「時間の経過とともに、景気・物価の両面でプラスの効果が出てくる」との認識を示した。

もっとも、世界的な景気回復傾向の中にも「ぜい弱な部分が存在している」とし、そうした中で、原油下落によって「エネルギー・資源セクターの資本投資支出に調整圧力がかかってくるとみられる」と警戒。日本にとって競争力のある「資本財の受注・生産・輸出に下押し圧力が働く可能性もある」との見方を示した。

また、個人消費が持ち直し、増加基調を維持していくには「実質賃金のベースでプラスになっていくことが必要」と主張。企業収益の増加を背景に賃上げの「環境は整ってきている」としたが、来年度から適用される年金のマクロ経済スライドなどの影響に「留意する必要がある」と語った。

(伊藤純夫)

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