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アングル:ドル高進展の条件、金利上昇で崩れない米株

2015年02月12日(木)18時20分

 2月12日、ドル/円が一気に120円の大台を回復した背景には、米金利上昇でも崩れなかった米株の存在がある。写真は外為取引業者、2014年10月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 12日 ロイター] -

ドル/円が一気に120円の大台を回復した背景には、米金利上昇でも崩れなかった米株の存在がある。

米利上げへの抵抗力を米株が付けてきたことで、リスクオン方向の動きが加速した。ただ、一部の米企業では、ドル高による悪影響も目立ち始め、微妙なバランスが崩れて相場が逆回転することへの警戒も根強い。

<抵抗力増した米株>

約1カ月ぶりの水準にドル/円を押し上げたのは、米金利の上昇や軽かったポジションの影響もあるが、米株の動きだった。

経済指標の改善で米金利が上昇しても米株が下落してしまえば、リスクオフ方向の円買いが出やすくなり、ドル高・円安は進みにくくなる。

しかし、6日の1月米雇用統計発表後、米ダウ<.DJI>は2日続落となったものの、その後は0.7%の上昇に転じた。

2年債利回りは2月初旬の0.45%付近から一時0.6760%に、10年債は同1.66%付近から一時2.0280%へと上昇しているが、以前のような神経質さはみられなくなっている。

「雇用統計発表直後の米株下落は、金利上昇に見合った健全な反応の範囲内。その後、株価が戻してきていることで、ドル買い/円売りが正当化されやすくなっている」(国内金融機関)という。

<ドル買い、仕掛けやすい条件整うとの声も>

足元のドル買い/円売りの主体は、外国人投資家と年金など一部の日本勢とみられている。水準が切り上がったことから輸入企業はドル買いに様子見姿勢を強めており、120円台では輸出企業による売りや米国債の利払い・償還の円転玉だとされる売りが頭を押えているが、先行き1─2週間では、先高観も強まってきた。

「市場のセンチメントが変わり、再び中期的なドル高の流れが強まってきた」と、邦銀のあるディーラーは指摘する。米金利が上昇する中で、株価は値を崩しておらず、持ち高も軽くなっているとして「ドル買い/円売りを仕掛けやすい条件が整っている」(同)という。

ドル高・円安けん制発言が警戒された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では「米国は政府としてドル高の是認を繰り返し、日欧の金融緩和は通貨安競争のレッテルを貼られなかった。無難に終えたことで、政治的なノイズでトレンドが変わることはなくなった」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト、植野大作氏)という。

米金利の水準を考えれば、119円前半は押し目買いにいい水準との指摘もある。テクニカルの面からも、昨年12月高値からの三角保ち合いを上抜けており、「様子見だった向きも参戦しやすくなっている。悪材料が出てこなければ、リーマンショック前の高値124.14円も視野に入ってくる可能性がある」(国内金融機関)との声も出ている。

<リスクはFRB議長の議会証言>

この流れが巻き戻されるリスクとして意識されるのは、さらに金利が上昇した場合、株価が耐え切れなくなる局面があるかどうかだ。

当面の経済指標では、きょう12日に発表される米1月小売売上高が注目されている。また、米30年債入札の動向もポイントになりそうだという。「30年債を無難にこなせば、しばらくノイズは入りにくくなってくる」(別の国内金融機関)という。

その先に控えるのは、2月24─25日のイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長による議会証言だ。利上げ時期を示唆するような発言は想定しにくいとの向きが多い一方、発言トーンから利上げ期待が急に高まって、金利が強く反応する事態も警戒されている。

(平田紀之 編集:田巻一彦)

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