コラム
東京に住む外国人によるリレーコラムTOKYO EYE
世界=欧米への憧れが日本をダメにする
今週のコラムニスト:クォン・ヨンソク
〔11月21日号掲載〕
なぜ僕らは21世紀のいまだに、こんなにも欧米が大好きなのだろう。ノーベル賞、ブランド物、メジャーリーグ、プレミアリーグ、ハーバード......。僕たちは骨の髄から欧米を「崇拝」している。
日本の大学もアジアからの留学生など眼中になく、数少ない欧米からの留学生の争奪戦になっている。だが僕の経験上、彼らの知的レベルとやる気は決して高いとは言えない。ガールフレンドが来日するので、ゼミを3週間休みたいと平気で言ってくる学生もいた。こんな学生をお客さま扱いする大学は恥を知るべきだ。
欧米崇拝が根強い理由は「欧米=世界」という認識にある。先日、プロ野球のドラフトで大谷翔平投手の米メジャーリーグ直行表明が話題になった。花巻東高校の佐々木洋監督は「岩手から世界で活躍する選手になってほしい」とエールを送った。
だが「メジャー=世界」なのだろうか。大谷選手は単にアメリカのプロ野球に就職したいだけだ。そこだけが野球の「世界」ではない。WBC二連覇の日本は世界ではないのか?
なぜ、日本やアジアは世界に含まれないのか。卓球の福原愛が中国に行っても「世界で活躍」とは言わないし、韓国にテコンドーやアーチェリーの修業に行っても「世界を相手に」とは見なされない。なぜ自分たちが世界だと思わないのか。太平洋かユーラシア大陸を横断しないと世界にはたどり着けないのだろうか?
野球選手のメジャー流出を防ぎたいなら、まず「大リーグ」という意訳を改め、日本人メジャーリーガーに対する過熱報道を見直すべきだろう。その上で「北米一決定戦」をワールドシリーズと呼ぶ彼らの傲慢さを批判すべきだ。
■少女時代をまるで売春婦扱い
事情は韓国も変わらない。以前会ったソウル大学の先生の話を思い出す。子供をアメリカに留学させた彼は、今はニューヨークで働く息子家族に会った帰りにため息交じりに語った。せっかく教育に投資して「グローバル人材」に育てたが、息子や孫には年に1回も会えず、アメリカ企業で働いているので結局、彼の能力はアメリカのためにしか生かされない。
では、僕らの一途な欧米崇拝に対する欧米側の答えは何だろう。先日話題になったサッカー日本代表・川島永嗣選手の写真を用いた仏テレビ局の悪質な「ジョーク」は、彼らの根深い人種偏見と傲慢さを物語る。K・POPアイドルの少女時代も、フランスで男性出演者から「今日は誰にしようかな」とまるで売春婦扱いの「ジョーク」を飛ばされた。それでも韓国メディアは「少女時代、フランステレビに出演」と騒いだ。これが文化大国フランスの素顔だが、ルイ・ヴィトンの店に長蛇の列をつくるアジア人を見れば無理もないのかもしれない。
一番の問題は、欧米崇拝の陰で自国とアジアを自らさげすんでいることだ。留学生や在外研究で日本に来ている韓国人は決まって「実はアメリカか西欧に行こうと思っていたんだけどね」と、自分は本来日本なんかではなく「世界」に行ける立場にあったと弁明したがる。韓国やアジアに行く日本人も同様だろう。
なぜ、僕達はこれほどまでに自虐的に自国や隣国をバカにし、「欧米=世界」に憧れているのだろう。当の欧米人の中には、仏教や儒教文化、日本文化、村上春樹、PSYや韓国映画に熱狂している人もいるというのに。このままでは欧米への憧れが人材流出を促し、日本や韓国を空洞化させて自らを本当に陳腐で亜流な存在にしてしまうかもしれない。
だから、iPS細胞騒ぎを起こした森口尚史のような人が出てくるのだ。彼をバカにするのは簡単だが、彼は欧米崇拝病がつくり出した僕らの自画像なのだ。そこでタカアンドトシよ、もう一度ツッ込んでほしい。
「それでも、まだまだ、欧米か!」
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