コラム

それでも2020年に東京で五輪を開くべき理由

2012年04月09日(月)09時00分

今週のコラムニスト:李小牧

〔4月4日号掲載〕

「ソウキョウ構想」という言葉をご存じだろうか。漢方薬の名前みたいだが、ソウキョウは「双京」と書く。京都の行政や経済界、学者たちがまとめようとしている提言で、皇室機能の一部や文化庁、観光庁の京都移転がその目玉だ。

 歌舞伎町で24年間生きてきた李小牧なら当然、人が減って東京が寂しくなることに反対するはず──読者の皆さんはそう思うかもしれない。「京」に「都」と名前に2つも都がある京都が、何も首都機能まで欲しがらなくてもいい気もするが、私は必ずしも反対しない。何より、国の人口の4分の1が東京とその近くに集中するリスクを減らすことができる。去年の福島原発事故の恐怖を思い出してほしい。

 ただし、私がこの構想に賛成するのには条件がある。2020年の東京オリンピック実現だ。
東京五輪の招致活動に対して「日本のような経済大国が『震災からの復興のため五輪を開きたい』というのは、新興国や貧しい国から見れば戯言(ざれごと)だ」という批判もある。ただ私に言わせればその逆で、震災こそ格好の売り込み材料になる。

 もちろん哀れを誘うのではない。あれだけの大震災後も、被災地がこれほど衛生的で治安の保たれている国は世界中どこを探してもない。反原発デモも起きてはいるが、文化大革命で紅衛兵の政治運動の暴れぶりを見てきた私に言わせれば、警官の指示どおりにきちんと列をつくって歩くのは「運動」のうちに入らない。

 確かに被災地に瓦礫はまだ大量に残されている。ただなかなか処理が進まないのは、日本がトップの命令ですべてが動く独裁国家でなく、しっかりした民主国家であることの裏返しでもある。私が先日、中国版ツイッターの新浪微博(シンランウェイボー)でこうつぶやいたら、中国人フォロワーたちの大半はバカにするどころか、日本の民主主義の素晴らしさを絶賛していた。

 オリンピック招致に立候補している5都市の中で、東京の住民支持率は最低だ。ただこれは、都合の悪いことをあえて隠さない民主国家の表れでもある。65%も支持があれば十分だ。

■五輪と「双京」で日本再興を

 日本のやることなすことをとにかくけなす中国版ネット右翼「噴青(フェンチン)」からも、東京でのオリンピック開催に反対する声は出ていない。中国がOKなら、ほかの新興国から反対が出ることはまず考えられない。中国は世界第2位の経済大国だと威張っているが、国民1人当たりのGDPでは日本にはるかに及ばない。中国にできたオリンピックを、経済力でも環境でも上回る日本が開けないわけがない。

 先日、「一汁一菜」のわが食卓を微博にアップしたところ、ある中国人フォロワーが「人民代表(中国の国会議員)より清廉ですね!」と、実に皮肉の効いた返信を送ってくれた。日本人は気付いていないかもしれないが、倹約精神や清潔さ、治安の良さなど世界が日本人に学ぶべきところはまだまだたくさんある。

 名古屋の河村たかし市長の南京大虐殺に関する発言に批判の声が上がる一方で、実は中国人の中には「中国の主張する犠牲者数がころころ変わるのはどうなのか」という疑問の声もある。正確なデータや根拠にこだわる日本人の良さが、今や中国人を変え始めていると言っていい。

 東京オリンピックは、震災で傷ついた日本が立ち直った姿を世界に見てもらう絶好の機会になるはずだ。そんな日本の姿は、新興国やさらに貧しい国の手本になる。華々しい東京五輪で日本人全体を元気づけた後、京都への一部遷都を実現すれば、これ以上ないバランスの良い国づくりができるはずだ。

 2020年に無事東京オリンピックが成功して、その後京都への一部遷都が実現したら、私も京都に移り住んでいい。その頃は60歳だが「先斗町案内人」としてまだまだ活躍できるはずだ(笑)。

プロフィール

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・マーティ・フリードマン(ミュージシャン)
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・李小牧(歌舞伎町案内人)
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・アズビー・ブラウン(金沢工業大学准教授)
・コリン・ジョイス(フリージャーナリスト)
・ジェームズ・ファーラー(上智大学教授)

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