コラム
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中国で一番有名な日本人、加藤嘉一君への手紙
今週のコラムニスト:李小牧
[7月6日号掲載]
尊敬する加藤嘉一君へ──。
先日は日本の震災をテーマにした香港フェニックステレビのトーク番組の収録、お疲れさまでした。このコラムをまとめた『歌舞伎町より愛をこめて』(阪急コミュニケーションズ)の中国語版『日本有病』の前書きも書いてくれてありがとう。中国版ツイッター新浪微博に60万人のフォロワーがいる君に書いてもらえば、完売間違いなしです。
君は18歳のときに単身、名門の北京大学に留学。05年の反日デモのときに留学生会長として流暢な中国語でテレビにコメントして注目を集め、以後、中国でジャーナリストとして活躍を続けています。中国語で出版した本も既に6冊。君が「中国で一番有名な日本人」なのは間違いありません。まさに「勢如破竹(破竹の勢い)」ですね。
私と加藤君は最近、日本で共著を出した仲でもあります。しかし私は人生の先輩として27歳の君に伝えなければならないことがある。それは君の生き方に関することだが、同時に日中関係に影響する話でもあるから、よく聞いてほしい。
具体的に言いましょう。君は日本でのテレビ出演や執筆活動ではほとんど言わないこと、書かないことを中国での言論活動でかなり露骨に口にしている。それは日本の悪口です。
先日のフェニックステレビの番組では、震災後に菅首相の支持率が下がったことについて「日本有病(日本は病気だ)」と発言しましたね。日本で23年暮らす私から見れば、四川大地震で多くの子供が手抜き工事の校舎の下敷きになって死んだのに、中央の指導者が誰も責任を問われない中国のほうがずっと「有病」です。
■心の中の「国境」を利用するな
それに菅首相が被災者に「あなたたちは家がある」と無神経な発言をしたと語っていましたが、いつどこで発言したのでしょう。首相に常に同行している日本メディアはまったくこの「暴言」を報じていなかったようですが、これはどういうことでしょうか。
英フィナンシャル・タイムズ紙の中国語版ウェブサイトのコラムでは、最近安全上の理由から減速することを決めた中国の高速鉄道について「430キロ出しても320キロの日本の新幹線より走行は安定しており、安全なことが実験で証明されている」と書きましたね。なぜ日本の新幹線を引き合いに出すのでしょう。こんな例はほかにもあります。
若い日本人がたった独りで中国を生き抜き、ここまで成功するためには大変な苦労があったでしょう。だからといって日本や日本人を利用していいはずはありません。中国人にも日本人にも心の中に「国境」がある。君はその「国境」を利用している。中国で日本人の君がジャーナリストとして活動できるのは、中国政府が本当に嫌がる民主化や言論の自由について君が決して口にしないからです。
君は中国の読者が日本の悪口を求めていることをよく理解している。ただ中国の知識人たちはとっくにその欺瞞に気付いている。新浪微博で指摘されているから知っているはずですが、君はそれを無視しています。私も確かに日本の悪口を言うけど、中国の悪口だって言う。日本の悪口を中国人に広めるのは、両国にとって決していいことではありません。
大学を出て、社会経験や下積みもないままジャーナリズムの第一線で働く......一見華やかですが、どこか無理がなかったでしょうか。君は「外国で裸一貫から始めたところは李さんと同じ」と言いますが、最初から名門大学に入学できた加藤君と、ティッシュ配りから日本生活をスタートした私が同じはずはありません。
どうでしょう、ホストや風俗嬢といった名講師陣を誇るわが「歌舞伎町大学」で一度学んでみては。庶民が作る歌舞伎町大学の教科書も、共産党が作る北京大学の教科書より有益なはずです。
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