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コラム
池上彰Newsweek斜め読み
政治家を育てる質問
12月16日の衆議院選挙投票日。テレビ東京の開票特番「池上彰の総選挙ライブ」を担当しました。
放送中から思わぬ反響をいただき、テレビ東京にはいまも再放送やDVDの発売を求める声が寄せられているそうです。
テレビ東京の人たちはもちろんのこと、外部スタッフが総力を挙げて制作・放送したものですから、当然の評価とはいえ、その一翼を担った私も嬉しく思います。
いつも「いい質問ですね」が口癖の私としては、視聴者に「いい質問ですね」と言ってもらえる内容を目指したからです。
ただ、党首や候補者への私のインタビューは、ジャーナリストとして当然のことをしたまでで、これに関する評価は面映ゆいものがあります。
というのも、たとえばアメリカのテレビの政治番組なら、政治家に対しての容赦ない切り込み、突っ込みは当然のことだからです。
日本なら「失礼な質問」に当たるようなことでも、平然として質問をしますし、質問を受けた側も、怒ることなく(怒ったら負けですから)、見事に答えます。そんな当然のことをやってみたに過ぎないのです。
私の質問に対する政治家各氏の反応はさまざまでした。怒り出す人、論点をずらして反論を試みる人、他党の例を出して誤魔化そうとする人、絶句する人----。期せずして政治家の性格やレベルが浮き彫りになりました。
こうしたインタビューが評価されるということは、逆に言えば、これまでの政治番組や選挙特番が、政治家に対して、厳しい質問をしてこなかっただけなのではないでしょうか。
「当選おめでとうございます。いまのお気持ちは?」レベルの質問をしていては、政治家の答えも容易に予想できます。聞かずもがなの質問。それでは「いい質問」ではないのです。
まして、政治家に質問を投げかける側が、政治の勉強をしていなかったりするようでは、本質を引き出すことはできません。
いまの日本の政治家に関しては、その質が低いのではないかと批判されます。それはその通りなのですが、政治家と真剣勝負をしてこなかった日本の政治ジャーナリズムにも責任があるのだと思います。
なれあいの質問、返事が容易に予想できる質問ばかりを投げかけていては、政治家は緊張することがありません。自分を高めていこうという意欲をかき立てることもありません。
まずは、政治報道に関わるジャーナリストが、「いい質問」を鍛え上げること。日本の政治を立て直すためには、ここから始めてはいかがでしょうか。
政治家を育てるような質問を考えるのです。
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