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「『阿吽の呼吸』でがん退治する抗腫瘍細菌」をさらにパワーアップさせた「遊び心」とは?
(写真はイメージです) M-Production-Shutterstock
<2023年に北陸先端科学技術大学院大の都英次郎教授らが腫瘍細胞中に発見し、単離に成功したことで話題になった抗がん作用のある細菌。同教授らの研究チームがこれに「意外なマイホーム」を与えてみたところ、抗がん活性や生体適合性が向上することが明らかに>
2024年のノーベル物理学賞は、人工知能(AI)の目覚ましい発展の中核となった「機械学習」の基礎研究に与えられました。
AIが人間の知性を超える時代が来ることは確実視されています。研究者の仕事もAIに取って代わられるのではないかと懸念される現在、ヒトの研究者が生き残るには「ひらめき」や「発想の転換」が何よりも重要になってくるかもしれません。
北陸先端科学技術大学院大物質化学フロンティア研究領域の都英次郎教授、大学院生でJAIST SPRING研究員の宮原弥夏子氏らと筑波大の研究チームは、モデルマウスの実験で、腫瘍細胞中に含まれる抗がん作用のある細菌を熱帯魚ショップなどで買える水槽濾過材で培養すると、抗がん活性や生体適合性が向上することを発見しました。研究成果は、生物・化学系の著名学術誌「Chemical Engineering Journal」に7日付で掲載されました。
研究者らはなぜ、通常では培地としては用いられない「水槽濾過材」に着目したのでしょうか。そもそも、腫瘍細胞の中に刺客のように潜んでいる細菌は何者なのでしょうか。概観してみましょう。
従来の「がん細菌療法」の限界
今回の研究の背景には、23年に都教授らが腫瘍組織から強力な抗がん作用を持つ複数の細菌を発見し、単離(混合物から特定の物質だけを純粋な形で取り出すこと)に成功した成果があります。
近年、がんの治療法は目覚ましく進展しています。放射線治療では、よりピンポイントに照射できて、照射回数も少なくて済む陽子線や重粒子線を用いる方法が拡大しています。がん免疫療法の発展に貢献して2018年にノーベル生理学医学賞を受賞した本庶佑・京都大がん免疫総合研究センター長は、「2050年までに、免疫学的介入によりほとんどのがんを制御できるようにする」という夢を掲げています。
体内のがんを標的として、その部分に特異的な薬物や細菌を使う手法も、年々進歩しています。しかし、従来の「がん細菌療法」は「抗がん剤の運び屋として使う」という概念を超えるには至らず、薬効も十分とは言えません。
さらに、抗がん活性を発現するためには、細菌に遺伝子工学を用いた操作や改変が必須です。がん細菌療法に使用されるのは食中毒の原因菌としても知られるサルモネラ菌やリステリア菌が大半であり、遺伝子組換えによって弱毒化されているとは言え、体内で再び強毒化するリスクは常にあります。
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