コラム

開発するなら今 AIツール戦国時代とその勢力図

2023年09月26日(火)11時00分

使いやすさを工夫したGPTラッパーが健闘

意外なところではツールを1から独自に開発したのではなく、OpenAIのAIモデルを微調整するなどして開発したGPTラッパーと呼ばれるようなツールが結構健闘している。ラッパーとは包み紙の意味で、中身はOpen AIのAIモデルなんだけど、外側、つまりUIUXなどのデザイン部分だけを特定の用途に特化させたという意味。

僕が論文を読むときによく使うChatPDFや、 YouTube動画の要約を作成してくれるEightifyなどといったAIツールも、GPTラッパーだ。これらのGPTラッパーがAIツールの上位50の約1/3を占めているという。

カテゴリー内の圧倒的勝者は未定

AIツールをカテゴリー別に見ると、最も多いのが「一般的アシスタント」で、全体の70%を占める。ChatGPT、Bard、Poeなどがこのカテゴリーに入る。次にCharactor.aiなどの「話し相手」が13%、画像生成などの「コンテンツ生成」が10%、「コンテンツ編集」が3.7%となっている。

それぞれのカテゴリー内での勢力図はまだまだ流動的で、例えば画像生成のカテゴリーでは首位のMidjourneyに LeonardoAIが急速に接近してきているようだ。一般消費者がこうしたAIツールを日常的に使うようになり首位のツールのブランドが確立してしまえば、新規参入は困難になる。AIツール事業に参入するのであれば、今がその時期だと思う。

モバイルアプリに比べて料金は割高

またトップ50のAIツールの約90%が有料で、年間利用料は平均252ドル(約3万円)。これは一般的なモバイルアプリよりもかなり割高。僕の知ってるモバイルアプリって300円くらいで購入できたり、年間利用料が数千円程度。

ところが先日サブスクした睡眠AIコーチの利用料は月間30ドル(約4000円)だった。確かに高い。多くがGPTラッパーなので、開発企業自身もAIモデルの使用料をOpenAIに支払わないといけないからだろうか。それとも利用者にとってこれまでのモバイルアプリより使い勝手がいいので、比較的高額な利用料を問題なく支払っている人が多いということだろうか。

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2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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