コラム

時価総額45億ドルのMagic Leapが拓くミックス・リアリティの世界 スマホは不要になるのか?

2016年04月25日(月)15時06分

Googleグラスの再来

 Magic Leapが出願した特許関連書類によると、Magic LeapはGoogleグラスのようなメガネ型ウエアラブルコンピューターを開発中のようだ。

yukawa160425-02.jpg

 Googleグラスと違って、メガネは腰に装着するスマートフォン大のデバイスとケーブルでつながっている。またメガネと連動させることで身の回りのものを入力装置に変えてしまうというものらしい。

 書類には用途の例も提案されている。例えば、入院中の患者がMagic Leapのメガネを装着することで、病室の壁にハワイの景色が投影されたりする。道路工事の作業員が装着すると、道路がゲームのステージになり、単純な作業を繰り返せば得点が上がるゲームに変えることができる、などなど。

yukawa160425-03.jpg

yukawa160425-04.jpg

 実はこういった用途は、Googleグラスが話題になったときにも議論されたことがある。つまりMagic Leapは、Googleグラスの改良版のようなものなのだろうか。

技術、コンテンツが凄い

 Googleグラスのようなメガネ型ウエアラブルデバイスと比べて、技術的に何がどう凄いのだろうか。

 当然ながら技術的なことはあまり明らかになっていない。米誌Wiredの記事によると、他社のMR(ミックス・リアリティ)メガネでは、ガラスの表面にナノレベルの隆起があり、メガネのフレーム部分に設置された光源から出た光のビームがガラスの隆起部分に当って屈折。2つに分かれてユーザーの目に届く。ところがMagic Leapのメガネは、ビームを直接ユーザーの目に当てる仕組みなのだとか。

 この仕組みの違いによって、他社のMRメガネは、遠くに物があるように見えても、実際のイメージは目の前1、2センチのところに映し出される。目の焦点は近くのままなのに、遠くに見えているように錯覚させるわけだ。この状態を一定時間以上続けると、身体的に違和感を感じるようになるらしい。

 一方でMagic Leapは、遠くにあるように見える映像を見るときの目の焦点は遠くにあり、近くに見える映像のときの焦点は近くにある。このため違和感を感じることが少ないのだとか。

 またMagic Leapのメガネを体験した人によると、他社のMRメガネに比べ映し出されるイメージが非常にきれいなのだという。

 ハードウェア的にも優れているようだが、Magic Leapのもう一つの強みは、バーチャルな画像、映像のクオリティにあるようだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

世界の石油市場、26年は大幅な供給過剰に IEA予

ワールド

米中間選挙、民主党員の方が投票に意欲的=ロイター/

ビジネス

ユーロ圏9月の鉱工業生産、予想下回る伸び 独伊は堅

ビジネス

ECB、地政学リスク過小評価に警鐘 銀行規制緩和に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 9
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 10
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story