コラム

人のデータを勝手に使うな!データ経済社会は自己管理が原則に

2015年09月16日(水)17時23分

 EveryStamp以外にも、加速度、音質、気圧などのデータを取得できるウエアラブルデバイスEveryStickの開発も進めているという。

 
抗えない時代の流れ

 EverySenseの動きに期待する研究者がいる。東京大学の橋田浩一教授だ。同教授は、データを消費者自身が管理するという概念である分散型パーソナルデータストア(PDS)の研究の日本での第一人者だ。

「企業が集めた消費者のデータを別の企業に提供しようとするから話がややこしくなります。消費者自身が本人同意のもとに提供すればいいんです」と同教授は指摘する。「消費者が生成したデータは、消費者自身が持つべきだという考え方は以前からありました。ただようやく最近になって、技術的にそれが可能になってきたんです」。

「ビッグデータといっても自社のデータを解析しても分かることは限られています。企業が本当に欲しいのは、自社にないデータなんです」。しかしデータ漏えいやプライバシー侵害の問題があって、企業間で消費者データの流通はなかなか進まなかった。ところが消費者側でもデータを管理し、消費者の同意のもとでデータが流通するのであれば、何の問題もない。

 まさしくEverySenseが手がけようとしている仕組みは、PDSの1つの形になる。あとはこうした仕組みが可能だということが社会に認知されればいいだけ。「新聞などでPDSが普通に取り上げられるようになれば、その手があったかということで、データのやり取りに乗り出す企業が次々と出てくると思います。そうなれば、あとはドミノ倒し。一気に普及すると思います」。

 EverySenseのような個人が自分のデータを管理する仕組みが普及し、あらゆるデータが自由に活用できるようになれば「いろんな人がいろんなビジネスを思いつくと思います」と同教授は言う。「効率的市場仮説や完全情報市場に近い状態ができてしまうと思う。日本の国力がすごく強くなると思いますよ」。

 真野氏も「個人が自分のデータを管理するのは時代の流れ。その流れには抗えないと思います」と語っている。

米国から狙う世界

 ところでEverySenseは、米国シリコンバレーに本社を置く米国法人だ。社長の真野氏は日本人だし、株主はインフォコム株式会社など日本企業が名を連ねている。世界的なインフラになることを目指して米国で設立したのだという。

「個人向けのオシャレなウエアラブルデバイスって日本であまりはやっていないので、ウエアラブルデバイスからデータを集める業務は主にアメリカでやろうと思っています。日本では農地のデータとか、産業界のデータを集めるところに注力しようと考えています。そしてそれをアジアでさらに発展させるつもりです」と真野氏は語ってくれた。


プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州8カ国に10%追加関税、トランプ氏表明 グリー

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F

ワールド

イラン抗議デモ、死者3000人超と人権団体 街中は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 6
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story