最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
米国ポートランド・新ターミナルが注目を集める理由! 『 持続可能な空港で体感する幸福感? 』 空港トップが語るリーダーの3つの真髄とは?
さて、ここからは本誌だけに語ってくれた『新たなPDXの背景とビジョン』。力強さと温かさを兼ね備えたロビンホールド港湾長が、未来への展望を次々と鮮やかに表現してくれました。
| 強さ、安全、快適性
【 耐震性 】
空港は安全が第一優先。当然ですが、新しいターミナルはマグニチュード9.0の地震に耐えられるように設計されています。ターミナル内の「Y字型柱」には、屋根と建物の構造が独立して動くことができるよう、最新アイソレーター(免震装置)が設置されています。地震時には、屋根だけでなく外壁も最大24インチ(約61センチ)まで動く仕組みに作られています。
【 セキュリティ 】
新しいターミナルのTSAセキュリティチェックポイントは、より広く。最新の設備を備えた検査レーンで、スムーズで効率的な検査を可能にしたデザイン。
最新の自動手荷物検査レーン(ASL)を導入し、3名が同時に手荷物を置けるステンレス製の個別ステーションを設置。ベルトコンベアによってトレイが自動的に回ってくるので、手でトレイを置く必要はありません。
【 レイアウト 】
第2期工事が進行中のため、現在の仮設動線には若干の不便があります。しかし、2026年初めの工事完了後には、快適な出口レーンの設置やエスカレーター・エレベーターの増設、ゲートまでの移動距離の短縮、プライベートトイレの導入、さらに癒しの場となる待合スペースの増設が予定されます。
訪れる人々の疲れをいやし、空港を超えた体験をもたらす、米国トップクラスの『プレイス』を提供します。
| 東京直行便再開への挑戦と取り組み
では、PDXの国際ハブとしての将来展望はどうなのでしょうか。
オレゴン州の最大の貿易相手国である日本。東京への直行便の運休は、パンデミック前に中断されたままで、日本関連の企業や住民には大きな不便が続いています。
この重要な問いに対して、ロビンホールド港湾長は心を込めてこう語り始めます。
「東京直行便の運休は、私たちにとっても非常に残念な出来事です。ですので、その運休が決まった瞬間から、再開に向けて全力での取り組みを行っています。
PDXの専任チームは、需要の動向を常に分析し再開に向けた戦略を積極的に実行。
また、国際貿易や経済開発チームも地域間の強い絆を守るため、誠心誠意をもって努力を続けています。この場をお借りして、私たちの真摯な取り組みをご理解いただければ幸いです。」とじっくりと答える港湾長。
「ここまでの巨大組織を率いるために必要な、あなた流のリーダーシップ哲学。その最も重要な要素を3つだけ教えてください。」
すると、じっくりと考えた後、心の奥底の情熱と共に言葉が溢れ出します。
| 今、だからこそ必須な『3つのリーダーシップ』の真髄とは?
1.好奇心『キャリアを駆り立てる原動力』
成功するキャリアの原動力は、強い好奇心です。それは、世界を学び、探求し、理解しようとする意欲です。この好奇心が、新たな挑戦への扉を開き、未知の環境に飛び込む勇気を与えてくれます。
私もまた、異文化や市場を学びたいという願望に突き動かされ、大学院卒業後にグローバルな視野を広げ、貴重な洞察を得ることができました。それは、今でも飽きることなく続く情熱の源です。
2.集中力『成果を生む規律の力』
重要なことに集中し、優先順位をつけ、気が散るのを乗り越える能力は不可欠です。好奇心が私たちの旅を駆り立てる原動力であるなら、規律は意義ある成果へと導くコンパスとなります。
規律があれば、明確な目標を設定し、その計画を正確に実行することができる。重要な項目を洗い出し、そこに集中すること。そして、リソース(情報・資源)を効果的に配分し、最優先のニーズに応じて行動すること。この考え方を、元州知事の首席補佐官時代に実践し、徹底的に学びました。
3.地域社会への貢献『リーダーシップの底力』
人々に奉仕し、地域に貢献することは、リーダーとしての重要な責務です。市民や地域の声に耳を傾け、持続可能性やDEI(多様性、公平性、包摂性)の向上に取り組むことに深い意義を感じています。
また、地域社会にとって『価値ある資産』であり続けるために必要なことは何か。それを常に考えることが、自分の経験から重要であると実感しています。
| AI導入と人々の共生
最後に、現代の空港運営に欠かせないAIの役割についてお聞きしました。
PDXがAIや先進技術を導入する中で、どのように人々とバランスを取っていくのでしょうか。また、現在から近い将来にかけて、テクノロジーと地域の価値観をどのように調和させていくのでしょうか。
「最新の技術革新を取り入れながら、すべての人にとって安全で親しみやすい空間であることを最優先しています。ですから、AIや最先端技術は利用者の選択肢の一つという位置づけです。
その最先端技術とサービスを望む旅行者には、公平性を保ちながら簡単に使える形で提供します。しかし一方で、利用を望まない方には、明確な代替手段を用意して選択の自由を尊重します。
PDXは、この考えを乗り入れ航空会社やビジネスパートナー企業と共有し、共通の価値観に基づいたテクノロジーの利用方法を提案し続けていきます。」
そうにっこりと微笑む背後には、まるで旅客機の翼のように広がる雄大なビジョンが映し広がって見えました。
次回のテーマは、『移民が見る米国、新大統領によって向かうその方向とは?』(日本への長期プロジェクト出張のため、11月末に掲載予定。)
激しい選挙戦を経て、新しい大統領が選出される11月。
新しいリーダーの就任によって、物価高にはどのような変化が?さらに、日本人を含む外国人・移民政策はどのように変わるのでしょうか。
ポートランド在住の起業家やZ世代の視点から、深く掘り下げていきます。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)