最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
【大統領選・米国レポート】白人貧困層のリアル『ヒルビリー・エレジー』が映し出す、日本社会との意外な接点とは?
米国ヒルビリーの投影、日本の貧困の現実
ヴァンス氏の書籍は、アメリカの労働者階級が直面する貧困の現実を鮮烈に描き出しています。彼の幼少期の体験は、貧困が個人やコミュニティ全体にどれほど深く、そして破壊的に影響を与えるかを浮き彫りにしています。
彼の生い立ちを日本に置き換えると、こんな感じかもしれません。
「主要産業も皆無な荒れ果てた地方に生まれ、極貧の家庭で育つ。県外へ出る力も、資金もなく。親からの暴力やアルコール中毒、ドラッグという環境に苦しみながらも、必死に勉学に励む。自衛隊に入隊後、防衛大学校に進学。奨学金を得て東京6大学に進むが、コネもなく、就職活動でエリート社会と自分の生い立ち、文化や振る舞いの差に愕然とする。絶望の淵から何度も立ち上がり、ついに地方議員から国政へと進出...。」
アメリカで起こっている現象が示すヒルビリーの現実。それは、日本における貧困問題とも痛ましく重なり合って見えます。
現代の日本では、貧困は一見しては分かりにくいのが特徴です。戦後の混乱期や他国の極貧生活者のように、ぱっと見で分かるような苦しさが隠されています。
「貧困といいながら、高価なスマホを持っているじゃないか!」という安易な批判もよく耳にします。
しかし、今やスマホがなければ、生活が成り立たない時代です。特に貧困家庭にとっては、唯一の外部との交信手段であり、命を守るための必須品となっています。
現代では、出費の優先順位がすでに変化しています。スマホやインターネット代を優先するために、光熱費や食費を削らなければならない時代です。
日本の経済格差は広がり続け。困窮する家庭では、子供の栄養源を給食に頼るしかない現実。夏休みが近づくたびに、子供の食事が減ることを心配する親が急増しているのです。
子供の貧困は、近年の統計で9人に1人。つまり、日本の1クラスに複数の子供が貧困家庭で育っているという事実。
ヒルビリー現象が写し出す、経済大国1位アメリカの影。それを他国の問題として傍観することは、もはやできない気がします。
経済大国第3位の『美しい国と評される』日本。しかし、その美しさの裏側には深い現実が横たわり。今、私たちの前に、鏡のように映し出されているのではないでしょうか。
現時点で、支持率が拮抗している大統領選。
国の未来を揺るがすインフレ、外交、銃規制、難民、中絶問題、さらには国際紛争。山積するこれらの課題に対し、選ばれしリーダーがどのように手腕を発揮するのか。
特に、国民が切望しているのは物価高への解決策。
現時点で、ハリス氏は「バイデン政権を引き継ぐ」と言うだけで、具体的な経済政策は示していません。一方、トランプ氏の極端な経済論理は「クレイジーだ」との声も多く聞かれます。
9月10日に予定されるTV討論会で、両者の論争は激化するでしょう。さらに、10月1日には副大統領候補同士の討論も控えています。
無論、次期大統領によって、日本の経済、円安、物価、さらには日米・日中関係の行方が大きく変わることは、火を見るよりも明らかです。
11月5日の投票日まで、残された日は約80日。
歴史に新たな章が刻まれる瞬間が、今まさに迫っています。
次回は、先日オープンしたばかりの『ポートランド空港・新ターミナル』にフォーカス! 全米優秀空港を誇るPDX。そこで、著者の長年の友人でもある、ポートランド空港のトップに特別インタビューを敢行。(オープニング前夜祭のプライベートパーティーの様子もレポートしちゃいます~。)
持続可能、地産資材使用デザイン、ローカルコンセプト。全米初・一番を謳う空港とは? 経済に大きく関わる、日本への直行便復活の可能性は?
普段では聞けない内容が盛りだくさん! 9月中旬掲載です。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
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協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)