最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
アップサイクルの進化『ポートランドブランドが築く新たな波と持続可能な未来』
アップサイクルの成功の鍵?
しかし、そのアップサイクル。現代社会において本当にビジネスとして成り立っているのでしょうか。
「注文するブランドやビジネスパートナーは、着実に増え続けています。以前は小規模なエココンセプトのブランドが主流でした。しかし最近では、有名アパレルやスポーツブランドという大手メーカーからの発注が増加しているのは、うれしい悲鳴です。」
大企業と地元工房のコラボレーションの大切さ。同時に、横のつながりという提携ブランドを多く作り上げることも重要だと説くブリットさん。
世界の多くの企業が、持続可能性や地球環境への意識を高め、モノづくりに力と資金を積極的に注ぎ始めた今。従来の企業同士の上下関係に縛られず、各社が自らの役割に責任を持ち、積極的に業務に取り組む姿勢。こうした動きが、新しいビジネスコンセプトの潮流を牽引しているのでしょう。
特に最近のポートランドでは、ビジネス環境における協働の重要性がますます認識され、その変化を明確に感じています。
そんなアップサイクル製品は、地球環境にとって理想的なものです。とはいえ、どうしても新品よりも価格が高くなる傾向があります。
この物価高騰のご時世。
では、アップサイクル商品に対する理解や受け入れは、どのような状況にあるのでしょうか。
「製品の市場での成功には、価格と品質のバランスが不可欠なのは言うまでもありません。
経済的な観点から製品の競争力を考えると、アップサイクル製品は原材料調達コストが抑えられ、製造プロセスの環境への負荷も低減されます。
また、環境配慮型の製品に対する需要が高まる今、消費者は価格以上の価値を求める傾向があります。
そのため、価格競争力だけでなく、持続可能性や環境への配慮といった独自の付加価値を提供すること。ここに力を入れることが肝心です。」
高品質で手頃な価格の製品を提供し、デザイン性にも優れるPGF。これは、消費者が経済的な価値と品質を同時に求める現代のニーズに応える良い例です。
また、変化に迅速かつ柔軟に対応し、進化し続ける姿勢。
それこそが、今後のアップサイクルビジネスの成功の鍵だと感じます。
Invite challenge...挑戦を受け入れる精神!
『挑戦を受け入れ、立ち向かう!』この言葉を企業のコア・バリュー(基本的価値観)の一つとして掲げ、売り上げを伸ばし続けるPGF。
なんと、この価値観が生まれたのは、2021年の放火火災の被害を受けたことからだと言います。
「火災からの再生は、精神的にも経済的にも大きな打撃でした。しかし、地域の友人たちの支えと、献身的な従業員の働きと共に、奇跡的に復興の道を歩み始め、今日の強固なブランドとして存在しています。」
試練に立ち向かう時こそ、真の強さが内から湧き出る
「逆境に直面しても、前向きな姿勢を貫き、新たな可能性を追求することが私たちの使命です。
ビジネスの再構築の過程で学んだことは、与えられたチャンスを最大限に活かし、未来をより良くする方法を模索することの重要性。
襲い掛かる挑戦を受け入れ、立ち向かいながら前進すること。そこから、新たな可能性を模索し、未来への希望を持ち続けることの重要性を再確認しました。
ビジネスを運営し、複数業務を行い、かつ創造的であり続けるということは、常にエネルギーが必要とされます。
崩れ落ちそうになった時、私自身は、こう言い聞かせるのです。
「自分自身には創造力がある。アイデアは無限に湧き出てくる。大きな問題が立ちはだかっても、一つずつそれをやっつけ続けていくことで克服は必ずできる。一度に一つずつ問題を解決しながら、日々を勝ち取っていこう。」
アップサイクルの先駆者として、起業家として未来への可能性へと走り続けるブリットさん。その姿は、知恵の実が豊かに結実する大樹のようです。ここからさらに、新たなモノづくりの枝葉が広がっていく。そんな感覚に包まれました。
この時代、SDGsが注目を浴びる中、私たちはひとりひとりが地球環境への影響について考える機会が多くあります。
人々の消費行動や考え方は、ゆっくりとしか変わらないもの。でも、その少しの気づきや視点の変化が、私たちの未来をやさしく彩るのではないでしょうか。
あなたが望む未来を築くきっかけとなるその小さな選択。その一品が、地球に寄り添うささやかな贈り物になるかもしれません。
さて今日あなたは、どのようなモノに目を留めますか。
次回は、『ポートランド流・健康』をベビーブーマー世代の写真家(なんと、元オリンピック選手!)に教えていただきます。人生の楽しみ方、見つけ方って? 今のあなたに必要なことは? 健康寿命の3つの柱「運動」「食生活」「社会参加」を元に、具体的に何をするとカッコよくいられるの? どうやって魅力的な思考を維持しているの? 知りたいことをたくさん深堀しちゃいます!6月下旬掲載です。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)