最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
ポートランドから『トレンドのおいしいコーヒー豆』を生産者保護の目線で発信
| 『気候の変動に具体的な対策を』
日本を含めて、世界的に気候が変動しているということは、ここ数年私たちが肌で感じているところです。
実はこの気候変動によって、経済的困難に陥っているコーヒー生産者や労働者が増えています。そしてこれは、コーヒー産業の深い問題に発展しているのです。
そんな彼らの生活を守る為にも、新しい農学、思考、マーケティングを学んだ人が新たに生産分野に参入することが大切だと言います。そしてその人たちが、農園に留まり働き続けられるような経済的システムを作り上げ、そこで働き続ける動機付け(働きがい)が要となるとエリンさんは語ります。
「働く環境の改善と品質改良を目的とした、コーヒー豆国際品評会。ここからズレないために、コンペ参加費用は無料。加えて、豆の改良、品種や加工の実験、市場との経済関係の構築に必要なツールも無料で生産者へ提供をしています。
そして絶対に忘れてはいけない事、それは収益性です。生産者が自分の家族や労働者を養える分の収入に結びつけることは、必然問題です。市場価格は20年前とほぼ同じレベルにとどまっていますが、それに伴う全てのコストは上がりっぱなし。それに加えて、この気候変動による作物への悪影響が、さらにそのダメージを広げています。
多くの 農園家が悩んでいる事。それは、お金と時間を投資してコーヒー豆を作り続けるか。または、コーヒーはあきらめて別の作物を作り始めるか。はたまた、廃業や転職をするか。生きていくために、このような難しい決断を迫られているという現実が今あります。 」
世界の多くの人が、毎日おいしいコーヒーを安定した価格で飲み続けられること。そのためには、貧しい地域のコーヒー生産者が、持続的に仕事を続けていくことができるかどうか。わたし達消費者としても、そこを意識してほしいと静かに話します。
「 彼らの努力に報いるためにも、その労力に見合った世界水準の価格でコーヒー豆を販売することが大切なのです。
具体的に言うと、COE国際品評会コンペと農園支援プログラムを継続的に行っていくこと。そして仕入れる側は、出来るだけ高値でカップ・オブ・エクセレンス称号のコーヒー豆をオークション落札していく。これによって、スペシャルティコーヒーの生産者に支払われる金額も上がります。すると、農園の労働者もその労力に見合った賃金を得ることができます。
こうすることで、コーヒー業界全体が改善され発展し続けていくことが可能になる。ついては消費者も、コーヒー豆生産者と労働者の生活を健全な形でサポートすることになり『一本の線となって』繋がることができるのです。」
近年では、『透明性のある持続可能』のあるビジネスにその注目度が集まっています。そして、このような仕組みとストーリー性を持つ商品。顧客はそこに魅力を感じ購入をする。こんな時代の雰囲気は一層強まるばかりです。
| これからのトレンドコーヒー
今まで毎年、選抜された国でおこなわれていた国際品評会。しかし、このコロナ禍。2020年は、審査員の手元に事前に豆を送ってもらう形で、初のオンライン開催となりました。
この時の優勝者の豆は、エチオピア産。花とフルーツの風味が絶妙にミックスした絶品とのこと。口に含むと丸みがあり甘さも感じ、複雑で華やかな味わいが特徴でした。
そして、今後の豆のトレンドとして注目を集めているもの。それは、『嫌気性発酵』。コーヒー豆の精製過程において、酸素に触れさせず微生物の活動で発酵させるという手法です。別名、「アナエアロビック」といわれます。
また、『イーストを使った発酵』をおこなっている生産者もいます。こうすることで、味も甘さが数段強くなりキャラメルのような味と風味に変化をするとのこと。
このように、美味しさに対しての追求が止まらない生産者と消費者。新しい豆の開発とグルメ志向の流れは、ますます加速していく予感がします。
わたしたちの日々の暮らしに深く根付いた、コーヒーとその文化。その芳醇な味わいと独特の香りの一杯に、心も身体も癒されます。
そんな一杯を、今日あなたが飲む時。遠く離れた農園を思い描いて、いつもよりゆっくり味わってみるのはどうでしょうか。そこから、すこし垣間見えるこの地球の環境。あなたなりに、その深い琥珀色から感じることが出来るかもしれません。
では、ここで一服。いつものコーヒーにしますか。それとも、ちょっと種類を変えて飲んでみましょうか。
「本、コト、ときおりコンフォートフード」
エリン|she/her|マネージング・ディレクター
海とサンゴ礁、自然と一体化することで感じ得ること...
スキューバダイビングは、私のお気に入りのアクティビティ。 定期的にすべての喧騒から逃れるために、きれいな水を求めて旅に出ます。水中では自分の呼吸音以外は何も聞こえず、とても瞑想的。自分が、海洋生物の一部であることを体感する瞬間です。海中の美しいサンゴ礁を見るたびに、日々の暮らしの中で自分が出来ることはなにかを思い描く。そして美しい海と環境を守るために、自然への悪影響を減らしたいという気持ちがより募ります。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
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Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)