World Voice

powerd_by_nw

日々のSDGsと多様性 - ポートランド・コーディネーター手帳

山本彌生|アメリカ

クリーンエネルギーとポートランド、明るさと未来への3つの鍵

自然豊かなオレゴンの土地。これからの20年間で、いかにクリーンエネルギーを広められるかが、この地域の住みやすさに繋がる。 Photo | NW RiverPartners, Kurt Miller

| エネルギーと人生のタービンチェンジ

コロナ禍で、多くの企業勤務者の生活体制が変わったと言われます。その中でもアメリカにおいてのトップは、なんといってもリモートワークとなったこと。同時に、ガソリン車を卒業する人が増えたことです。

在宅勤務が多くなったと同時に、免疫力アップのために食生活の改善を始める人も増えています。

元来、地消地産、地域特産物の多い町で有名なポートランド。地元の新鮮素材を使いシンプルでヘルシーな自宅料理の人気メニューも数多くあります。ケール、ビーツ、芽キャベツなどの蒸し焼きソテー。地鶏の岩塩焼き。特産品のオレゴン産サーモンのグリル焼き。米国有数のベリー品種数を誇るオレゴンならではの、ミックス・ベリーパイ(お砂糖控えめで)。そして、健康効果も期待をしての浅煎りコーヒーやハーブティー等々。町の近郊の自然や農園が守られる、素晴らしい食環境である証しです。

同時に、生活全体を見直す傾向も出てきています。朝早くに起床して自然のリズムに逆らわず、出来るだけ無理をせずに暮らしを整える。意識してバランスを取るように努める人が、より一層増えました。

そんな一人が、私が長年信頼を置いて協働をしているカートさん。クリーンエネルギー会社に転職をして、2年目。地域電力会社を代表する「Northwest RiverPartners」(以下、NWRPと訳す)のエグゼクティブ・ディレクターです。

NWRPは、2005年に設立されたNPO組織。オレゴン州と州境にあるワシントン州バンクーバー市をカバーして、電力を供給しています。登録利用顧客は、行政事務局、大企業、中小企業、農業従事者、個人。現在、400万人以上が利用しています。

そのカートさん、最大大手のポートランド電力に約20年勤務。エネルギー供給から組織変更管理まで、さまざまな分野での専門家としてその役割を果たしていました。その間、地域最大のスマートグリッドの開発を指揮して、電気自動車用のハイウェイプロジェクトを成功に導きます。その後、西海岸他州の電力会社と「時間単位で電力を交換できるようにする」大規模プログラムを作り上げるリーダーとしても活躍。ホワイトハウスでは、多様性と包括性の諮問委員会を2年間率いるという活躍により、多くの市民からその名を知られる方です。

そのような大きなプロジェクトに多く関わるうちに、将来のエネルギーの行く末を考え始めたといいます。そして、NWRPに転職したのが2019年。エリートコースと言われる電力会社から、未来のための社会作りを進めたいというステップを大きく踏み出しました。

『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』と『海の豊かさを守ろう』というSDGsの目標と共に。この社会と環境に掛ける思いとは、いったいどのようなものなのでしょうか。

その人柄をそのままを映し出している、偽りのない豊かな微笑。その瞳の奥にどのような願いがあるのでしょうか。

今話題のクリーンエネルギー。でも、大きすぎるスケールの話題、自分とは関係のない世界とも考えがち。

とはいえ現実は、オール家電や電気自動車、そして気候変動による電力消費など。私たちの生活は、ますます電気を必要としている生活へとシフトしていっています。そして同時に、皆さんのなじみのある土地にあるダム。その水力発電が、あなたの地元特産品と関係があるとしたら、どうでしょうか。

大きな一部を、あなたの暮らしの一部として。今、気候変動を肌で感じている季節にお届けするストーリーです。

Kurt water back self (2).jpegPhoto | NW RiverPartners, Kurt Miller

| 社会問題と日常生活はつながっている

NWRPの目的。それは、『水力発電を礎(土台)として、クリーンエネルギーの可能性を牽引、サポートすること。そして、持続可能な電力供給活動を広めること。』

正直、クリーンエネルギーの話を直接聞くなんて、初めての経験の私。初心者にわかりやすく、かみ砕いて説明をして欲しいとお願いをすると、にっこり微笑むカートさん。

「そうですよね。エネルギーは複雑な問題なので、まずは地域への教育。ここに大きい時間を割いているんです。水力発電システム自体、いかに地域社会や自然環境に貢献しているか。その正しい情報を広めることに力を注いでいます。

特にこの自然豊かなオレゴン州では、『特産物のサケの繁栄と保護』と『水力発電の共存』に集中をしています。しっかりとした科学的根拠に基づいて、その解決策を見いだすこと。地域とクリーンエネルギーの共存共栄は、これからの未来に不可欠な要素ですから。」

2020年以降の地球にとって、クリーンエネルギーはより重要なものとなっています。この地域の再生可能エネルギーの90%近くを供給し、風力発電や太陽光発電の生産量の浮き沈みとのバランスをとるのには欠かせないツールです。

というのも、オレゴン州では主流電力会社に対して、2040年までに化石燃料*による発電をすべて廃止することを義務付ける法律が成立しました。ですので、この移行を可能にするためにも水力発電が必要となってくるわけです。

〚*石炭・石油・天然ガスなど、燃料として用いられるもの。〛

二酸化炭素を排出しない『カーボンフリー』の新しい自然エネルギーの供給源として、今後さらに重要な役割を果たしていくとされる水力発電。その理由の一つが、コスパの良さです。ダムに水を貯めておき『必要な時に』タービンで放水して発電するという方法は、すでにご存じの通り。

では、再生可能エネルギーとして注目を集める、風力発電や巨大太陽光発電はどうなのでしょうか。

「実は、風力、太陽ともに「間欠性*」という大きな課題があります。安易に想像がつくように、風や太陽光の有無によって発電量は変動します。実際の問題として、エネルギーの需要と供給が、毎秒間完璧にバランスが取れていない場合。どうなると思いますか。そう、停電が発生するのです。さらに、維持コストが高いことも一つの課題となっています。

〚*一定の時間を置いて、物事が起こったりやんだりして安定化しないこと。〛

早ければ来年にも、米国北西部州では、電力容量が不足しはじめる可能性がある。そう、研究報告がされたことを受けて、数百人の北西部のエネルギー関係者や専門家が招集されました。それから継続的に、将来の電力資源と供給に対処するための話し合いが行われています。」

その不足原因として、あぶり出されたことがら。それは過去数十年に、水力発電システムを縮小したこと。また、ダムを排除しようとする動きが活発化した点だといいます。さらにダムを破壊撤去した分、代替えのクリーンエネルギー電力発電を建築しなかったこと。そこも大きな問題でした。

「新しい供給電力の発信元が無いまま、ダムが撤去されていきました。その中で時代は一気に、電気自動車の普及期に。おまけに温暖化にエネルギー消費増加が伴って、莫大な電力を必要とする方向へと突入してしまったのです。」

Kurt with helmet (2).jpeg安全性評価プロジェクトが行われているエンロー・ダム。Photo | NW RiverPartners, Kurt Miller

とはいえ、すべての旧式のダムの保持を推奨しているわけではないと、カートさんは続けます。「魚道の機能を持たず、エネルギーの生産量も少ない古いダムの撤去は必要です。」

すでに多くの人が知るところとなっている、環境問題。1970年代以降、海の温暖化が止まらない。世界中の海の魚の個体数が減少している。気候変動や海の温暖化によって、あらゆる生命体に悪影響を及ぼしている事実が次々に浮き彫りにされています。

そして偶然とはいえ、サケの苦境減少はダムが理由だ。そんな推測論からの発言がはびこったのもこの頃でした。

「しかし、メンテナンスがキチンと行われていたり、システムがアップグレードされたダム。そこから流出したサケの稚魚は、成魚回帰が同率となっていると科学的研究によってわかっています。

海の生態を守るため。気候変動の危機に立ち向かうためには、劣化した古いダムを使い続けることは最善の道ではありません。未来のエネルギーを考えた時、そして未来の目標に到達するためには、新しいシステムを備えた水力発電が不可欠です。」

カートさんは、こう静かに熱く続けます。

「日本の環境と米国オレゴン州では違いがあります。でも、共有できる点もあります。

先ずは、あなたの生活やビジネスで使用する電力。それは、どこから来ているのか。また、現在か将来的に、脱炭素型発電を使用する。そんなオプションはあるのか。そこを考えてみてください。

もう一つは、地元や故郷の自然と特産物をどのように守っていけるのか。これからの未来に必要な環境を考えて、共存共栄が可能な道を試行していくことです。」

カートさんが語る、持続可能なエネルギー。では、日本に住んでいるあなたに伝えたい『3つの鍵』とはどのようなものなのでしょうか...

Profile

著者プロフィール
山本彌生

企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。

Facebook:Yayoi O. Yamamoto

Instagram:PDX_Coordinator

協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ