最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
人もペットも健康寿命がカギ!『持続可能なポートランド・ドッグフード』
| 環境に良い商品開発ともの作りが、社員の働きがいに繋がる
この体験が、命の尊さ、共に生きるという観点に立った『持続可能なビジネス』により力を入れていく節目となりました。それはドッグフード本体だけでなく、付随していることやモノにも持続可能を突き詰めていくという総合的な製品作りです。
パッケージには、リサイクル材料の層で構造化された特性のレトルトポーチを開発。これによって、コーティング素材が原因でリサイクルができないという通常の問題を解決しました。
また、『ペット・サステナビリティ同盟*』との協働によって、ペット産業の持続可能商品を広げる働きをしていきます。
さらに注目を集めているのが、送料負担の『パッケージのリサイクル返却システム』。使用済みのパッケージを指定封筒に入れて、返却してもらうプログラムです。もちろん、中小企業としては大きな負担です。でも、このような持続可能に必要な取り組みを率先して行う大切さを感じています。
それだけにはとどまらず、事業成長や管理、加えて従業員に対しても持続可能を意識していると話を続けます。
「自分を超えたスキルを持つ人材を採用することは、とても大切な要素です。オーナーは、概して自分より能力が高い者を雇うことに尻込みをする傾向があります。でも、色々な能力やスキルを持っている人がパズルのピースの様に組み合って、初めて新しいコンセプトも生まれる。そしてそれが、持続可能なより良い製品に繋がると信じています。
また、従業員の『地球環境に直接影響を与える製品を製造している』という気持ち。これによって、やりがいのある職場意識が自然に生まれてくるのもうれしい作用です。」
| 働くあなたへのヒント
現代社会では、生活を維持するため、又、生きがいのために子育てをしながら働くことが当たり前になっています。母であれ父であれ、仕事と育児のバランスを取ることのはとても難しい。そんな自らの経験を振り返ります。
「常にバランスよくコトが進むなんていうことは、まずありません。ですから、柔軟な頭と心をもって生活をしていくこと。これは、一つのサバイバル方法です。」
実の所、日本と同様にアメリカでも、働く親のための強力なサポートシステムが無いのが現状です。生活とキャリア保持のため、出産後すぐの復帰にはベビーシッターを雇い入れることが必要となります。でもその時給は、最低賃金の数倍! 乳児保育園に入れられる月年齢になったとしても、その保育園代は自分の月給とほぼ同額レベル! ダブルインカムでも辛いところ、シングルマザーやシングルファザーは苦悩に強いられます。よって、パートに置き換えたり転職するしか無かったり。生活に困窮する人がいるのも、このアメリカの現実です。
そして、ケイトさんはこう続けます。
「今の時代、私たちは思いのほか、長い人生を生きていかなければなりません。もしもあなたが、早期退職や定年をして『何か』を始めたいという気持ちがあるのなら、その可能性を探ってみるのはどうでしょうか。
人生は決して、まっすぐな道ではありません。でも大切なのは、その周りくねった回り道をあなた自身がいかに楽しんで進んで行くのかではないでしょうか。」
実は私は、ケイトさんが事業を始める前からの知り合いでした。退院後、リハビリ経過中に杖をつきながら、子供を迎えに来る姿をずっと見つづけていました。
ともすれば、サバイバルストーリー、強じんな心を持つという印象で見られがち。でも、『折れながらも、自分の人生だから前を見て進んで行くのは当たり前』と、昔より一回りも大きい、まるでひまわりのような笑顔がそこに咲いています。
今、長引くこの自粛生活よって、激変する生活環境と健康への懸念を皆抱えています。
だからこそ、起きうることに先んじて思いを巡らせる。それは、この長い人生そのものに退屈しない知恵に通じるのではないでしょうか。
自分自身を慈しみながら、自分の足で歩き進んで行くことを道しるべに。先ずは今、目の前にある何かに、ほんの少し取り組んでみる時期なのかもしれません。
「本、コト、ときおりコンフォートフード」
ケイト|she/her|ポートランド ペットフード カンパニー代表
オレゴン産チーズ、サーモン、地元の野菜、素材を生かしたシンプルな家庭の味
子供が小さい頃は、夕食時まで待ちきれない時のためにチーズを食卓に置いていました。今、カリフォルニアに住む彼らが帰省した時のリクエスト。それは、新鮮なサーモングリルと地元朝採れの野菜。そしてもちろんチーズです。今、温暖化で特産物にも変化が起こっています。地元の農家が守られ、新鮮な地元産が食卓にいつまでも並ぶ日が続くことを願ってやみません。
記:各回にご登場いただいた方や記載団体に関するお問い合わせは、直接山本迄ご連絡頂ければ幸いです。本記事掲載にあたってのゲストとの合意上、直接のご連絡はお控えください。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)