最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
今のまちづくりに必須!『4つの要素と最大のカギ』とは。日本から注目のポートランド州大プログラム
| まちづくりの4つのポイント!
山本「どういうきっかけで、日本語による『まちづくり人材育成プログラム』は始まったのでしょうか。」
西芝「開始をした2004年当時は、行政職員対象でした。でも時代と共に変化をして、今では『住民が主体となるまちづくり』にフォーカスを置いた、だれでも参加できるプログラムになっています。」
山本「そういうニーズは、今の日本に多いのですか。公共放送のアナウンサーが、退職後の仕事として『まちづくり』を選んだ事でも、今注目を集めていますよね。」
西芝「驚くほど多いです!長年にわたって、『良いまちづくり』を探し求めている日本の地域やコミュニティーは想像以上。そのような行政、NPO、学生、そして一般企業の方が、ヒントを求めてたくさん参加しています。」
山本「具体的に、どのような事を学んでいくのですか。」
西芝「先ずは、JaLoGoMaが独自に作成した教材を使って『ポートランドのまちの仕組み』を理解してもらいます。次に、ポートランドの『住民が主体となるまちづくり』を学び。それを基にして各参加者が、『今までの自分のやり方はどうだったのか?』をじっくり考えてもらう仕組みです。」
山本「とは言っても、現実的に日本とポートランドは、町のつくりや行政のありかたが根本的に違いますよね。どのように日本にあてはめて、実行していくのか謎です。」
西芝「実はJaLoGoMaでは、ポートランドのまちづくりの形や仕組みをそのまま日本のまちづくりに取り入れることは薦めていないのです。」
山本「えっ?そうなんですか。」
西芝「ポートランドで行われている事柄で、まず自分のコミュニティーで活用できる基本があるのかを考えてもらいます。そしてそれを、どの様に自分の地域に適応させていくのかを深堀りする。加えて、それらを皆で自由にディスカッションして広げていく。この独特のプログラムとプロセスを基にして、各参加者のコミュニティーの在りようを考えていきます。」
山本「コピペのような型枠の内容ではなく、自分のケースにあてはめて考えるというのがキーポイントの一つですね。」
西芝「だって、それぞれの地域やコミュニティーの抱えている問題はそれぞれですからね。」
山本「ところで2017年以降、市は開発や町づくりの分野で方向転換をしました。今現在のJaLoGoMaでは、どのような事に重点をおいて指導をしているのでしょうか。」
西芝「では、大きなポイントのみ4つ挙げますね。」
JaLoGoMa まちづくり 4つのキーポイント
① 関係者や団体とパートナシップを 組み、協働体制で向かい合う
② それぞれの立ち位置から、各自がリーダーシップをとる
③ 行政と住民は対等な立場であり、大人と大人の関係である
④「公正性のレンズ」でプロジェクトを吟味する
山本「この4つのポイントを聞いて、以前お聞きした『氷山』モデルを思い出しました!」
| まちづくりに必要な『見えるもの』と『見えないもの』とは?
西芝「まちづくりには、『目に見えるもの』と『目に見えないもの』があるということを忘れてはいけません。」
山本「今の時代に必要なのは、どちらでしょうか。」
西芝「両方重要です!そしてポイントは、目に見えないものを無視して、見えるものの形や枠だけを真似をして日本に取り入れようとしても無理だということです。安易に枠や形を輸入して真似しただけで満足するのでは、やはり結果は伴いません。」
山本「今、一番気になるのはコロナ禍での町づくりです。特に今年取り上げた内容はありますか。」
西芝「はい。大きく言うと3つあります。①コロナ禍で『見えないもの』に変化が生じているかを考える。SDGsで最も重要とされている コミュニティーや地域の②公正性、そして③持続可能性です。ポートランドの過去の取り組みからひも解いて、どう今に影響をしているのかを参加者と共に大いに語り合いました。」
| 短期での答え出しではなく、その『枠組みを作り上げる』がカギ!
山本「ここまでお聞きして、このコロナ禍でより一層、町づくりと人とのつながりが大切になってきている気がします。」
西芝「まちづくりは、そこに住む人々から『どういうところに住みたいか』『どういう生活をしたいか』という声をしっかり吸い上げることが大切です。基本は、『人がまちを作る』『コミュニティーがまちをつくる』そして『コミュニティーの強化』の3つです。」
山本「ということは、地域の多様性も必要になっている時代なのでしょうか。」
西芝「もちろんです。多様な人の意見にきちんと耳を傾けていくことは重要です。今まで話しを聞いてこなかった方の顔を思い浮かべて、その方に何らかの形で働きかけることをぜひ始めてほしいですね。」
山本「お話しを聞いていると、行政や企業というより私達一人一人が意識をして地域やコミュニティーを作り上げていく。この意識と行動が必要になっている時代、ということでしょうか。」
西芝「そうなんです。特に、それぞれの人がそれぞれの立ち位置からリーダーシップをとることは、まちづくりには外せないことがらです。」
山本「日本の町づくり。それぞれ独自の問題を抱えている地域は、一刻も早く解決したいと焦る気持ちがありますよね。」
西芝「わかります。でも残念ながら、まちづくりに関しては短期での答えだしは難しい。そして、これができれば完成といった指標はないのです。地道にていねいに時間をかけて『人を繋ぐ、ネットワークをつくる、人の話を聞く機会を増やす』と試行錯誤続けていくこと。これが、本当の意味でのまちづくりなのです。」
山本「最後に、これからの日本の町づくりに必要不可欠なことは何でしょうか。」
西芝「自分達のコミュニティーを自分達で作り上げることが可能になる『プロセス (枠組み、手順) を作る』ことが最大のカギです!今までのように、行政やまちづくり専門家による上意下達式の主導から脱皮をすることは、今の時代不可欠です。そしてなによりも、多様な人々の意見を聞き入れていく事も必要ですね。拾い上げていなかった事柄から、ヒントを得られることも多いですから。」
日本でもポートランドでも、このコロナ禍で、ますますコミュニティーや地域の大切さに目を向けるようになっています。
でも、急に持続可能な地域のあり方と問われても少し難しいかもしれません。そんな中、先ずは今まで耳を傾けることのなかった、弱い声を少しずつ拾い上げてみるのは難しすぎますか。
そして、今まで声を発することが出来なかったというあなた。無理せず頑張りすぎず、優越なしに引け目を感じることもなく『半歩』踏み出してみるのはどうでしょうか。そんな、まだ見ぬあなたの声を、私は聞いてみたいです。
JaLoGoMaは、オンライン講座として今年の夏にも開催されます。日本国内で、まちづくりに取り組んでいるあなた。過去の事例のまちづくりではなく、コロナ禍で新しく追加された『実際の本場』のプログラムに参加することによって、最大のカギが見つかるかもしれませんね。
「本、コト、ときおりコンフォートフード」
ダン|he/him|JaLoGoMaスタッフ
Between the World and Me|タナハシ・コーツ 著〚ピュリッツァー賞受賞作〛
僕が、多様性のトレーニングプログラムを受けている時に読み、影響を受けた本です。アフリカ系アメリカ人であるコーツ氏自身の経験と人種差別に支配されているシンボリックな壁について、実に美しい文体で綴られています。アメリカの多様性、人種、公平、正義の変化の必要性を深く見つめている内容を読むたび、心が揺り動かされるのです。
記:各回にご登場いただいた方や記載団体に関するお問い合わせは、直接山本迄ご連絡頂ければ幸いです。本記事掲載にあたってのゲストとの合意上、直接のご連絡はお控えください。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)