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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

変わるニューサウスウェールズ州

Yiran An-ISTOCKS

ニューサウスウェールズ州の新型コロナウイルスへの対応はここ一か月ほどで急激に変化しました。ニューサウスウェールズ州の前州首相のグラディス・ベレジクリアン氏が10月1日に辞任しました。これはニューサウスウェールズ州の腐敗防止独立委員会(ICAC)が地域団体への助成金について、同氏が関与し、信用失墜行為があった可能性があるか調査するという発表をうけてのものでした。

新しい州首相には同州財務相のドミニク・ペロテット氏が新たに州首相へ就任しました。同氏は州首相になるとすぐに大幅な新型コロナウイルス感染対策の変更を発表しました。公共の場所でいられる大人の数の上限、葬儀や結婚式での人数制限の規制緩和をしました。そして学校再開の日も早めました。

以前までは同州の新型コロナウイルスの記者会見には常に州の主席医務官が同席でしたが、新しい州首相になり、あまり姿を見なくなりました。急な新型コロナウイルス政策の変化と主席医務官をみなくなったことから、ニューサウスウェールズ州の州首相は医療関係者のアドバイスを無視しているのではないかと噂も流れました。同氏の説明としては公衆衛生学的アドバイス、経済的アドバイスとメンタルヘルスについてのアドバイスを考慮した上での判断ということでした。

ニューサウスウェールズ州は10月11日から州の70%の人が2回の新型コロナウイルスワクチン接種を終えていればロックダウンを段階的緩和していくプランを発表しました。10月18日に2回接種完了人数が80%に達したので規制は緩和されました。

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画像:andres-ISTOCK

新型コロナウイルスの新規市中感染者数も多いときでは1400人以上でしたが、ここ数週間は毎日件数が減っていて、10月23日の新規市中感染者数は300人以下でした。今のところ規制緩和は順調に進んでいるようです。しかし、高いワクチン接種率のシンガポールなどでも感染者がまた増えてきているので油断はできません。

ニューサウスウェールズ州の州首相は規制緩和にとても積極的で、ニューサウスウェールズ州は11月1日から予防接種を2回受け、飛行機に搭乗する前の新型コロナウイルス検査が陰性だった人は隔離なしでニューサウスウェールズ州に入れると発表しました。そしてこれは海外からの旅行者などにも適応されると発表しました。事前報告を受けていなかったモリソン首相、他州知事や多くの医療関係者はこの発表にびっくりしました。モリソン首相はその後11月1日から隔離なしでニューサウスウェールズ州に海外から入国できるのはオーストラリアの国籍か永住権を持つものとその家族のみと加えて発表しました。この方針はまだ世界各地からオーストラリアに帰国できていないオーストラリア国民の帰国の大きな助けになりそうです。







参考
https://www.abc.net.au/news/2021-10-02/what-happens-after-nsw-premier-gladys-berejiklian-resignation/100509550
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/10/90031e01285bfcf0.html
https://www.sbs.com.au/news/dominic-perrottet-unveils-changes-to-nsw-s-reopening-plan-from-next-week/84673ccc-b784-4800-9191-26db46c609e8
https://www.news.com.au/national/nsw-act/politics/nsw-premier-denies-ignoring-health-advice-on-reopening-plan/news-story/dfdefb70077be34ba893e821e6c24af4
https://www.nsw.gov.au/sites/default/files/2021-10/DCS-roadmap-landscape-191021.pdf
https://www.nsw.gov.au/covid-19/stay-safe/rules
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/singapore-reports-highest-single-day-rise-covid-19-cases-2021-10-19/
https://www.nsw.gov.au/covid-19/travel-restrictions/quarantine

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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