World Voice

パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

フランスの自発的妊娠中絶の増加にある背景

年々増加する妊娠中絶の背景にあるものは・・  Pixabay画像

フランス調査研究評価統計局(DREES)の発表によると、2023年にフランスで中絶を受けた女性は243,623人で、2022年よりも8,600人の増加、3.7%増加していると発表されています。この数は、パンデミックの期間に急激に減少した後、確実に増加を続けていると言われています。フランスは、これまでも望まない妊娠・中絶に至らないための方策として、25歳以下の女性への避妊ピル、パッチ、インプラント、膣リング、ホルモンIUD、さらには、筋肉内注射等を無料化したり、18歳から25歳までのすべての若者が薬局で無料でコンドームを受け取ることができるシステムなどを導入してきました。

にもかかわらず、この妊娠中絶の数の増加が続くのには、「避妊」に関する対処とともに、「中絶」に関する権利やアクセスに対して、政府が積極的に関わってきた結果でもあると思われます。

女性の権利を守る中絶に関する法律の改正の結果

フランスでは1975年以来、「自発的な妊娠中絶を行う権利」が法律によって保障されています。これにより、妊婦は誰でも正当な理由を示さずに医師や助産師に妊娠中絶を求めることができるようになりました。また、さらに2022年3月には、中絶へのアクセスを改善するためにいくつかの修正を加えています。この権利に関して、フランス政府は、「自分の身体をコントロールする女性の権利を支持する大きな進歩を構成するものであり、公衆衛生の進歩でもあり、女性が安全な環境で中絶を受けられるようになる大いなる進歩である」としています。

2022年に改正された法律では、中絶を認める法的期間を妊娠12週から14週に延長、遠隔診察での薬による中絶実施、成人と同様に未成年者に対しても情報相談と心理社会的面接の間の最低法的熟考期間の廃止、医療施設外での薬による中絶への幅広いアクセスの許可(専門家の前で最初の薬を飲む義務を排除、薬による中絶の規制期限を妊娠5週目から7週目まで延長など)、保健センターの医師および助産師による中絶の許可などを盛り込み、中絶へのアクセスの門戸を拡げています。

この法律改正が、中絶件数が増加している要因の大きな位置を占めていることは言うまでもありません。

増加している妊娠中絶の実態 薬による中絶の主流化

年々、増加している中絶の内訳を見てみると、増加しているのは、主に医療現場で行われる薬による中絶であると言われています。この数字は1年で10,400人も増加しています。また、病院やクリニックの外で行われた中絶のほぼ半数は助産師が行っており、一般開業医よりもはるかに多いのです。2023年には、1,183人の助産師が41,000件の中絶を行い、888人の一般開業医が22,500件の中絶を行っています。

また、中絶は20歳から34歳の年齢に集中しており、その中でも25歳から29歳の間であり、出生率が最も高い年齢であることも、注目されるべき点の一つでもあります。このうち、薬による中絶がその4分の3以上を占めています。本来ならば、妊娠出産に最も適した年齢の女性に最も中絶する件数が多いことは、客観的に見れば残念なことでもありますが、これには、社会の経済的状況の悪化も要因の一つであると考えられています。

いずれにせよ、もはや中絶の4分の3は薬による中絶になっているということは、長期的にはこの薬による中絶の技術が優勢になる傾向が強まっていると見られています。

また、この中絶に関する統計のうち、後期中絶は、この増加のうちの10%に過ぎないと言われていますが、外科的な中絶手術の割合は若年層で高く(15歳~19歳の29%、45歳~49歳の15%)、平均妊娠期間も長くなります。若年層の平均妊娠期間が長くなる事情は察するにあまりありますが、この場合、公立病院の利用が多く、都市の診療所よりも匿名性が高いという事実によって裏付けられていると言われています。

そして、これは、中絶へのアクセスの問題以前に性教育にも問題があるという専門家もおり、特に若者の間で避妊具の使用が減少しているという側面もあると言われ、青少年のほぼ3分の1が避妊具を使用していないと回答しているという報告もあります。

青少年や若年層の避妊のためのピルやコンドームを無償化したり、中絶へのアクセスの門戸を拡げたりする一方で、近年、男性と女性の不妊症が大きく進行している不妊症対策、「20歳前後の全ての人を対象とした完全な不妊症検査」の無償化、「将来、子どもを持ちたい女性のための卵子の自己保存キャンペーン」などにも果敢に取り組んでいるフランス政府ですが、一見、全然、逆のことをしているようでも、それぞれの立場の人々にとって、よりよい方法に近づける方法を提示してくれているような気がします。

中絶というネガティブであまり取り上げにくい問題でありながら、女性にとっては、深刻な問題でもあり、なにかの参考になればと今回は取り上げさせていただきました。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ