パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
クリスマスから年明けにかけてのフランス人の食卓にのぼる食材
フランスでは、一年のこの時期、クリスマスから、年越し、年明けにかけて、ダイエットはおよそ不可能な日々が続きます。クリスマス前になると、スーパーマーケットには、いつもは見かけないものが登場し始め、また、スーパーマーケット内の商品の配置も変わり、この時期、何が消費者にとって、最も優先される食材が見えるような気もします。そして、それをいそいそと買い集める人々はどこかウキウキとしていて、楽しそうで、それぞれが買い集めている食材を見ながら、それぞれの食卓の様子を思い浮かべたりするのも楽しいものです。
フランス人にとってクリスマスといえば・・という食材
ある調査によると、今年、フランス人がクリスマスのために使う予算は一人あたり、549ユーロ(約8万6千円)と言われており、昨年に比べると若干、減少しています。この549ユーロには、食費だけでなく、帰省のための交通費やプレゼントの費用なども含まれているので、このうち食費は120ユーロ程度と言われています。しかし、シャンパンは+18%増、スモークサーモン+15%増など、あらゆるものの値段が上昇しているなか、予算は減少していることを考えれば、実際には、各家庭はけっこう節約モードなのかもしれません。
それでも、フランスでは、クリスマスから年末年始にかけての行事の中でも、やはり、ハイライトは家族とともに過ごすことがメインなクリスマスディナーで、お正月は一応、元旦は祝日でお休みですが、三が日というものはなく、2日から仕事が始まります。なので、私が思うにフランスのクリスマスディナーは日本のお正月のおせち料理のようなものにあたるのではないか?と思っています。
フォアグラの棚はこんな感じ、敢えて値段も一緒に撮影しました・・ 筆者撮影
そのフランスのクリスマスディナーに欠かせないものの一つは、フォアグラなのではないか?と私は思っています。日常でも、スーパーマーケットには、フォアグラはいつでも売っていますが、この時期、フォアグラはきれいにリボンでお色直しされたものなどを含めて、スーパーマーケットの入口近くに堂々と君臨し、また、確実に多くの人が買っていきます。本当に老若男女にわたり、かなり真剣にフォアグラを選んでいます。個人的には、「歳をとると、こってり系のものは受け付けなくならないのかな?」などと思ったりもしますが、フランス人にとっては、フォアグラは例外のようです。
定番人気のスモークサーモン 筆者撮影
そして、次にサーモンフューメと呼ばれるいわゆるスモークサーモンです。これも一年中、スーパーマーケットには置いてあるものですが、この時期は、ファミリーサイズというか、大きなパッケージのものがフォアグラの近くに店頭にならびます。フランス人のサーモン好きは有名で、最近、どこのスーパーマーケットでも見られるようになった「お寿司」でも、フランスでは主役はサーモンで、中にはサーモンだけの盛り合わせがあったりします。生魚を食べる習慣がなかったフランス人の間でお寿司が広まったのも、このスモークサーモンを食べる習慣が影響しているのではないか?などとも考えます。
年々、売り場面積、縮小気味の生牡蠣 でも、これもクリスマスならではの食材 筆者撮影
そして、生牡蠣もクリスマスになると殻付きの牡蠣が箱詰めになって売られていて、クリスマスディナーを彩るもののひとつではありますが、どうやら、最近は、生牡蠣は、少々、人気が停滞しているようで、売り場面積も縮小されてきているような気がします。
人気停滞といえば、今年、最も驚いたのは、「ワイン」の売り場面積の大幅縮小です。フランス人のワイン離れが叫ばれ始めて久しいのですが、これほど顕著に目の当たりにしたのは初めてのことで、ワインに変わって、ウィスキーやウォッカやジンなどが台頭してきています。フランス料理にはワイン、生牡蠣に冷えた白ワインなど最高ではないか?と思うのですが、どうやら、そうではなくなってきているようです。しかし、どちらも縮小傾向にあるとはいえ、依然として、しっかり存在し続けていることには変わりなく、フランスの伝統的なクリスマスディナーといえば、フォアグラやスモークサーモンとともに生牡蠣が挙げられていることには、変わりありません。
年々、人気上昇のウィスキーやジンやウォッカ・・ワインは隅に追いやられているのが寂しい 筆者撮影
感覚として、生牡蠣を熱心に選んでいる客層とワインを熱心に選んでいる客層はどうもダブるような気がして、中高年の男性が目立つような気がします。
しかし、お祝い事に欠かせないのは、シャンパンであるところは代わりなく、シャンパンは、例年通りに箱が積み上げられ、まあまあ、お手頃価格のものを全面に押し出して並んでおり、大人数でのパーティーを見越して、マグナムボトルなども並び、その隅の方には、さらにお手頃価格なスパークリングワインなどもありますが、これは、お手頃価格にもかかわらず、それほど人気ではないように見えます。やはり、フランス人としては、クリスマスというここぞというお祝いに少なくともシャンパンという名前のついたものは譲れないというところなのでしょうか?
ワインに比べて、クリスマスのシャンパンは堂々たる存在感 筆者撮影
そして、クリスマスになると登場するのは、シャポンと呼ばれる大ぶりの去勢鶏で、こればかりは、一年のうち、この時期にしかお目にかかることはありません。このシャポンは、栗などの詰め物をしたりして、丸ごとローストされるのが一般的というか、フランスの伝統的なクリスマスのメニューの一つです。その他に鴨肉、七面鳥、ジゴーダニョー(子羊の脚)などが挙げられます。どちらかといえば、多少、人数に変動があっても切り分け方次第でなんとかなる大ぶりのものが選ばれるような気がします。日本ではクリスマスといえば、「チキン」というイメージがありますが、むしろ、フランスでは、この時期は、日常的に売られている鶏の丸焼きなどは、姿を消してしまいます。
あとは、いつもはサーモンの切り身とか、鱸(スズキ)、鯛など、あまり変わり映えのしない魚ばかりで、どちらかといえば殺風景な魚売り場も、この時ばかりは、ロブスターやオマール海老、大ぶりの蟹の脚などが並び、多少、華やかになり、それなりに人だかりもできています。
そして、デザートには、チーズの盛り合わせの他に、なんといっても、ブッシュ(丸太型のクリスマスケーキ)です。スーパーマーケットで売っているブッシュはブーランジェリーやパティスリーなどに売っているものよりも、断然、お手頃価格で、サイズも豊富です。
このクリスマスや年越しが終わり、年が明けると、フランスでは、ガレット・デ・ロワ(王様のお菓子)と呼ばれる、アーモンドベースのパイ(中にはフェーブと呼ばれる小さな陶器のマスコットのようなものが入っていて、必ず紙でできた王冠がついており、これを切り分けて食べた時にフェーブにあたった人は王冠を被り、その幸運が一年間続くと言われている)のようなものを食べる習慣があり、年明けになると、どこに行ってもこのガレット攻めにあうのですが、最近では、このガレットは前倒しになってきている傾向があり、以前は、クリスマスが終わると店先に並んでいたものが、堂々とクリスマスに同時販売されるようになってきました。
甘いものが苦手(という人は、あんまりいないように見えるフランス人ですが・・)という人にも、このガレットは、比較的食べやすいこともあるのか、ブッシュではなく、ガレットを手にしている人もたまに見かけます。とにかく、クリスマスイブから始まって、クリスマス当日、そして、年越し、元旦と食べ続ける行事が続くわけですから、メニューに事欠いて、ブッシュだけでは飽き足らなくなる人もいることを見越しているのかもしれません。
海外旅行をしたときには、地元のスーパーマーケットを覗いてみるのも、楽しいものですが、クリスマス前後のスーパーマーケットは、また、いつもとは違うものも並んでいたりして、楽しいものです。また、今年は、フランス人の食の好みの普遍のもの、また、変わりつつあるものが、かなり顕著に見えてきて興味深いものでした。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR