パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
フランス政府の援助に見るフランスでの子育ての恩恵
2022年も残りわずかとなり、「2023年から変わること」というテーマで様々なことが取り上げられていますが、残念ながら、その多くは値上げの話で、公共交通機関の値上げなど(パリ市内移動のためのNavigo(定期券のようなもの)、すったもんだの挙句に、75.2ユーロ(約10,500円)から 84.10ユーロ(約11,700円)へと値上がりするそうで、毎年、少しずつ値上がりしていってはいるものの、一気に10ユーロ近くも値上げするのは、初めてのことで、物価の象徴的な値上がりとして、ショッキングなことでもあり、インフレは今後、しばらくは続いていくと思われる厳しいニュースでした。同時にSMIC(国で定められている最低賃金)も現行の1,329ユーロ(約186,000円)から1,353ユーロ(約189,000円)へと 1.8%上昇すると伝えられていますが、悲しいほど微々たるもので、とても物価の上昇に追いつくものではありません。
その他、これまでガソリン価格の高騰とともに政府が1リットルあたり10セント補助していた補助金が撤廃され、より限定された範囲内で低所得家庭(通勤等に車が必要な場合)に対して年間で100ユーロが支給されることになりました。この補助金支給の基準は、前年の基準税額所得(RFR)に基づくもので、単身者の場合は、月額の収入が1,314ユーロ未満であることが条件になっています。
フランス政府はこれまでパンデミックによるロックダウンなどに始まり、その後のエネルギー危機などに瀕して、その都度、かなり援助金、補助金などを支給し続けてきましたが、これが長期化するにあたり、無尽蔵に援助を続けていくことは不可能、また援助を打ち切ることも不可能で、できるだけピンポイントに支出を抑える方法を模索しているような感じでもあります。
子供によって得られる恩恵
ところが、結果的にこれは、全世帯の約半数に対して支給されるもので、これは、子供の人数によって、その基準額が上がる設定になっているためで、子供1人がいる家庭の場合は、3,285ユーロ(約47万円)以下、子供が2人いる家庭の場合は5,255ユーロ(約76万円)以下などとなっており、子供の有無、人数によっても基準額が考慮される仕組みになっています。
フランスの場合、政府からの援助金などには、子供の有無、人数が考慮される場合が非常に多く、税金の計算においても、また年金の換算においても全て子供がいることでプライオリティを得られる仕組みになっていることは、フランスが日本のような少子化の道を辿らなかった大きな要因であるとも言えます。フランスとて、一時は、少子化の影が忍び寄った時期もあり、それなりに高齢者も増えてはいるものの、子育てのための支援や子供のいる家庭に対しての税制優遇措置などで、結果的には日本のような少子化には至っていません。
フランスの子育て支援
フランス人は、恋愛体質?ということもあるかもしれませんが、結婚(あるいは事実婚)も多ければ、離婚も多く、そしてまた、懲りずに再婚も多く、再婚した相手とでも子供を持つということも珍しくはありません。これは彼らの鷹揚さにも起因するものではあるとも思いますが、何よりも、子育てが負担になりすぎないということが大きく背景にはあると思われます。
フランスの場合、所得条件などもあるとはいえ、妊娠7ヶ月目に965.34ユーロ(約135,000円)が支給され、また3歳までは月額87.51(約12,000円)から175ユーロ(約24,500円)が支給され、2人目以降は自動的に育児給付金(額は収入、子供の数、年齢によって調整されている)が支給され、収入に応じて住宅補助手当なども受けることができます。特に子供の数が3人以上になると格段に有利であるらしく、娘の友人などでも3人兄弟の人は少なくありません。
また、毎年度初めには、6歳から10歳の子供に対しては、一年の学業のための準備金として392.05ユーロ(約55,000円)、ノエル前には、228ユーロ(約32,000円)が支給されます。また、これに加えて学費が破格に安く、義務教育の間はキャンティーン(給食費)のみ(ただし、両親の収入に応じて異なる)、大学の学費とて、学士で170ユーロ(約24,000円)、修士で243ユーロ(約34,000円)で、できるだけ多くの人が質の高い教育にアクセスできるために、国が大部分を負担する形になっています。
私自身は、これらのことを全く知らないままに、いつのまにか、あたりまえのように、これらの恩恵を受けつつ、フランスで子育てをしてきたわけですが、子供もすっかり独立した今になって振り返ってみれば、どれだけフランスに助けてもらってきたかをあらためて思い知らされています。これが日本で子育てをしていたら、一体、どれだけ個人の負担が大きかったかと思うと今となっては、恐ろしいほどです。
一般的にヘビーにこの子育て支援を受けているフランスの親たちの中には、実際には、子供にはそれほどお金をかけずに、子供をひたすら増やして、それで生活しているような人もいることも事実ですが、実際には、子供の教育へのお金の掛け方には個人差もあり、私などは、いくら子供が多ければ、援助金が増えようと、税制で優遇されようと、それで賄い切れるものではないとたかを括っていましたが、これまでにフランス政府に援助していただいた金額をトータルすれば、相当な金額であることには違いなく、フランスには、大変、感謝しており、娘はフランスに育てていただいたようなものだと思っています。
実際にフランスでは、その分、税金も高く、フランスのごくごくエリート層は自分たちがフランスを動かしているようなことを言うので、鼻につくこともありますが、超格差社会のフランスでは、それはきっと現実なのではないかと思います。極端にいえば、多額の税金を払う人と税金をもらう人にわかれており、そして、その中間、あるいは、ギリギリ税金を払っているくらいの人が一番厳しいのではないかと思いますが、かろうじて、少しでもこの中間層でもギリギリ援助が受けられるのが子供を持つことで、これが今回の燃料費補助の基準にもあらわれているような気がします。つまり、エリートたちが自分たちがフランスを動かしている、養っていると言っても仕方ないほどに、その底辺の層に分配されているということです。だからこそ、貧しいからこそ、子供を増やして、それで食べていこうなどということもおこるわけですが、それでさえ、子供の数が減らないことにつながっているのです。
日本の少子高齢化は放置してはいけない
妥当な時期に日本がこの少子化対策を怠ってきたことは、非常に深刻な問題で、今やどちらかといえば、高齢者に近づきつつある私にとって、また、現在は日本で生活している娘の将来を考えても複雑な思いです。現在の日本はすでに30%近くが65歳以上で、2060年には、約40%が65歳以上になると言われており、どう考えても社会全体を支え続けられるバランスではありません。なぜ、日本がこんなに深刻なことを放置し続けているのか?また、なぜ国民がこんなことを放置し続ける政治家を選び続けるのか?は、本当に疑問でしかありません。それは、きっとある程度、日本が安全で治安もよく、なんとなく過ごす毎日が平和であるという幸いなことが皮肉な結果を生んでいるのかもしれませんが、その実、暗澹たる将来しか思い描くことができません。
しかし、海外から見ると、日本は高齢化の道を辿っていることでも有名ではありますが、SUSHI、RAMEN、GYOZAなどの日本食に加えて、日本のMANGA、アニメなどでは、海外では絶大な人気を誇る国でもあり、また、観光先としても人気のある国でもあります。車などにしても、フランスでもTOYOTAやNISSANの車は今でもたくさん走っていますし、以前ほどの勢いはなくなったものの電化製品などでも日本製品は信頼のおける製品として知られています。これらの日本の産業が海外においても全く衰退しきらないうちに、日本はなんとかこの高齢化に対する対策を講じて盛り返してほしいと願っています。日本人は非常に勤勉で、一人一人はポテンシャルが高い国民だと思うので、何よりもそんな国民を力強く引っ張っていって、しっかり舵取りしてくれるようなリーダーが現れてくれたらいいのに・・と思っています。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR