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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

東京オリンピック開催の可否について積極的に報じないフランスの本当の事情

フランステレビジョンが流している東京オリンピックPR

先日、歯医者さんに行った時に、アシスタントの女の子に「夏のバカンスには、行くの?」と聞かれて、「本当は、日本に行きたいんだけど、入国後に強制隔離期間があったりして、凄く面倒だから、行けない・・オリンピックもやるみたいだから、余計に色々とうるさいと思うんだよね・・」と言ったら、「えっ??オリンピックやるの? 今年なの??」とびっくりしていたのに、私の方がびっくりしました。こんなにフランスの一般市民は、もう東京オリンピックが目前に迫っていることを知らないのだということに・・。

フランスでは、東京オリンピックについては、大々的にテレビのニュースなどで報じられずに、たまにオリンピックについての話題が上がったとしてもニュースの最後の1〜2分程度、これでは、知らない人がいるのも無理はありません。

しかも、そのニュースの内容は、東京オリンピック開催をめぐって、大多数の国民が反対しているという内容で、それもそこまで掘り下げた内容ではありません。フランスの大手の新聞社「ル・モンド紙」などが、大多数の国民が反対する中、開催に向けて動いている日本政府やIOCがギリギリの段階まで、詳細を決定できないことにこのオリンピックの開催が揺らいでいるなどと報じていたこともあったのですが、一般の国民は、他国で開催されるオリンピックにそれほどの興味がない上に、今はロックダウンがどんどん解除され、グングン日常を取り戻しつつあるフランス国内のことで頭がいっぱいなのです。フランスは、もう取り戻し始めた日常にまさにウキウキモードなのです。

ワクチン接種拡大の成果で、感染状況は、驚くほど改善されてきたものの、デルタ株などの出現で、イギリスでは、ロックダウンの全面解除が延期になったり、ワクチン接種が驚異的に進んだと言われていたイスラエルでも公共の施設、オフィス内ではマスクが再び義務化されたりしている中、フランスは、本当にこれで大丈夫なのか?と思うほどに、どんどん日常が戻ってきています。サッカーやラグビーの試合などに大興奮するフランス国民を見ていると、「もしも、今年のオリンピックがフランスだとしても、きっとフランス国民は、あまり反対しないんじゃないかな?」とも思います。

実際の感染状態は、現在、フランスも日本も大して変わらないような状態ではありますが、グングン改善されてきている上向きのフランスと改善どころか少々悪化の兆しが見える日本の不安定な状況とでは、受け取り方も違うのかもしれませんが、その違いのひとつには、根本的な国民の気質にあるのではないかと思うのです。表面的には、ツンとして見えるところのあるフランス人も基本的には、ラテン系の気質です。お祭り騒ぎが大好きで、楽しむことに対して貪欲で、そのためには、あれほど恐ろしい被害をもたらした(現在も続いているが・・)コロナウィルスへの衛生管理でさえも、優先順位が入れ替わってしまいます。

フランスの政治家と日本の政治家

これまでのパンデミックやオリンピックへのフランス・日本の政府のそれぞれの国民への対応を見ていると、その違いは明確で、フランスでは、このパンデミックという異常事態に、国民の不安も多い中、大臣クラスの政治家が実によくテレビのニュースの生番組に登場し、次から次へと起こる問題に対して、自分の言葉で、時には笑いを誘うようなことも取り混ぜながら、国民に上手に説明しています。そして、大統領、首相を始めとする大臣クラスの中で、よく連携が取れていて、どの大臣が出てきても、国の姿勢、方針というものが一貫していて、少なくとも、現在のフランス政府の軸となっている首脳の間では、よく話が練られていて、誰が出てきて話をしても、明瞭で矛盾は感じられません。お国柄、教育の基盤というものもあるのでしょうが、彼らは実に話が上手です。それには、国民をある程度、納得させなければ、国民の側とて黙ってはいないという背景があってのことですが、これは、国を率いていく政治家にとって、どこの国においてもとても大切なことです。

ですから、パンデミックに関してはもちろんのこと、ことにオリンピックに関して多くの国民が反対している状況で、政府から明瞭な説明がないままにオリンピックが強行されるなどということは、フランスではあり得ないことなのです。もしも、今年のオリンピックがフランスでのことだったとしたら、日本ほどの反対は起こらないまでも、フランス政府は、具体的な対策や衛生管理の方法を国民に対して、これでもかというほど説明すると思うのです。

なので、「国民の大多数が反対している」のに、オリンピックを強行するということに、フランスは、他国のことゆえ、「ふ〜ん、そうなんだ・・」ぐらいにしか思いませんが、いざ自国のこととなれば、説明もなしに強行などしようもんなら、それこそ暴動でも起こりかねません。

しかしながら、先日、行われたG7の国際会議で菅首相が「世界が団結し、人類の努力と叡智によって難局を乗り越えていけることを日本から世界に発信したい」「万全な感染対策を講じ、準備を進めている」「強力な選手団を派遣してほしい」と発表したことで、G7各国の首脳は、それに賛同の意を表明しました。日本の国内の内情や、日本国民の感情は、他の国の首脳が関与することではありませんから、日本の首相がそう宣言すれば、賛同しない理由はありません。

フランスが東京オリンピックをやんわりと賛同する本当の事情

これほどまでに開放モードのフランスは、開催国がGOサインを出しているのに、それに反対する理由も根拠もありませんが、実際には、フランス政府としては、東京オリンピックをなんとか開催してほしい理由があるのです。それは、次の2024年のオリンピックの開催地がパリであり、これは、前回のパリ・オリンピックから、ちょうど100年目にあたるフランスにとって記念すべき年にあたり、この2024年という年をフランスは、動かしたくないのです。ですから、東京オリンピックを終わらせて、しっかりと次の開催国であるフランスに聖火を引き継いでほしいのです。

フランステレビジョン(フランスの国営放送)が流している東京オリンピックのPRもフランス人の日本の文化への尊重を感じさせるフランス人のエスプリを感じさせる1分ほどの動画がなかなか洒落ていると評判になりました。つまり、直接的に東京オリンピック開催の可否については語らずに、やんわりとフランスは、東京オリンピック開催に賛同、後押ししているのです。

オリンピックが開かれる2024年に向けて、全世界に向けて中継されるであろうエッフェル塔が背景に入る美しいロケーションでガラス張りのグランパレを改装したり、昨年、衝撃的な火災で焼け落ちたノートルダム寺院の復興工事も一時、ロックダウンで遅れたものの、2024年のオリンピックを目安に急ピッチで進められています。パリのリヴォリ通りにある創業150周年を迎える有名な老舗百貨店サマリテーヌは老朽化のために7億5000万ユーロもかけて改修され、16年ぶりに再開しています。パリの一等地にあるあれだけ大きな店舗を16年間も閉鎖していたというのも驚きですが、この百貨店の再開もオリンピックの前までには、間に合わせたいという目標があったと思います。

パリでは、メトロの駅、車両などが、どんどん新しくなり、オリンピックに向けての、この急激なパリ全体のお色直しは、すでに始まっているのです。

ですから、おそらく、フランス政府としては、他の国々とは、またちょっと違う意向を持って、東京オリンピックを無事に開催して、2024年のパリ・オリンピックに繋いでほしいという気持ちがあるのです。東京オリンピックの開会式には、マクロン大統領も国賓として参加することが発表されています。来年で任期が終了するマクロン大統領が再選されるかどうかはわかりませんが、紆余曲折がありながらもワクチン接種の拡大に成功して、日常生活を取り戻しつつあるフランスでマクロン大統領の支持率は上昇しています。

3年後のパリ・オリンピックを見据えつつ、東京オリンピックの開会式に臨み、マクロン大統領は、「世界が団結し、人類の努力と叡智によってパンデミックを乗り越えていけたことをフランスから発信する!」と決意を新たにするのではないかと思っています。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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