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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

セーヌ川に捨てられた14歳の少女が受けていた三角関係によるイジメ・暴力 

美しい景色のセーヌ川で起こった陰惨な事件       pixabay画像

最近、日本で騒がれている北海道・旭川市でイジメによって凍死した事件と似通った事件が奇しくも、フランスでも、同時期に起こっていたことを複雑な想いで見ています。この二つの事件で違う点は、旭川での凍死事件は、自殺と見られていますが、フランスでの事件は、暴力行為の末にセーヌ川に捨てられて死亡、つまり殺人事件であることですが、陰惨なイジメの末の自殺は、殺人事件とも言える事件だとも思うのです。

三角関係の嫉妬による嫌がらせが発端のイジメ

この事件の加害者の少年少女と被害者の少女は、アルジャントゥイユにある同じ学校に通う生徒でした。殺された14歳の少女は、加害者の少年と短い間でしたが、交際歴があり、いわば彼女は、元カレに殺されたわけです。彼は、どちらかというとオタクタイプの家に引きこもりがちな少年であったようですが、この新しい彼女と付き合い始めてから、交友関係が変化していったと母親は語っています。この少女は、殺されるまでの数ヶ月間にわたり、嫌がらせを受け続けており、下着姿の写真をスナップチャット(SNS)にあげられたり、事件の一週間前には、この少年の交際相手と激しい口論をしている様子が目撃されており、SNSによるイジメに関して、事件の翌日には、学校でも諮問委員会が開かれる予定になっていた矢先のことでした。恋愛大国と言われるフランスでの14歳の三角関係、恋愛感情(嫉妬)のもつれからのイジメ・嫌がらせから、SNSを使って、周囲を巻き込んで拡散し、凶悪な暴力、しかも殺人事件にまで発展してしまうことに震撼とさせられました。通常、フランスの学校は、学校の外で起こったことに関しては、学校側は一切、感知しないという立場をとるのが普通なのです。以前、私の勤務先の窓ガラスが近所の高校生がふざけているうちに破壊され、学校に「お宅の生徒が暴れて窓ガラスを壊した」と苦情を言いに行ったら、「学校の外で起こったことに関しては、学校側は、一切感知しません」と言われて、呆れたことがありました。これが校内でも問題になりかけていたという点からも、いかにその嫌がらせが過激なものであったのかが伺われます。

また、死体の解剖結果から、彼女は殴る蹴るの暴力を受けた後、生きたままセーヌ川に放り投げられて捨てられ、セーヌ川で力尽きて死亡したことがわかっており、その痛ましさは、計り知れません。

事件直後から逮捕までの経過

この事件は、事件当日に血塗れになって、交際中の少女と帰宅した息子の様子を不審に思った母親が、息子を問い詰めたところ、少年が犯行を告白したため、慌てた母親が現場に行くと、髪の毛と血痕のついた少年の手袋を発見し、家に戻ったところ、彼らはすでに姿を消しており、取り乱した母親が隣人に相談して、すぐに警察に通報、警察はすぐに彼らを捜索を開始しました。結局、数時間後に、警察は、友人宅に隠れていた彼らを逮捕しましたが、犯行から一旦、家に戻って、その後、逃亡していた短い時間に彼らはパリの街をうろついて、食事をしたりして時間を過ごしていたというのですから、彼らにどれほどの罪悪感があったのかが疑問です。多くのケースで嫌がらせ・いじめをする側は、それほどの罪悪感がないように感じられることが多く、旭川の事件も虐めたとされる少年少女たちは、ちょっと悪ふざけをしただけのように、インタビューに保護者同伴で答えていますが、(内心は、違うかもしれないですが・・)人を傷つける(特にSNSを使って)ことに鈍感になっていることは、フランスの事件にも日本の事件にも共通していることかもしれません。

事件に関して、報道に関してフランスと日本の違うところ

この二つの事件に関して、一番、フランスと日本は違うなぁと感じたことは、フランスでは、事件直後に、被害者側はもちろん、加害者側の親が顔出しで、全国放送のテレビのインタビューに答えていることで、特に加害者側の母親は、動揺しながらも、ありのままに、「昨年9月に現在の彼女と付き合い始めてから、息子はすっかり変わってしまった。それまでは、どちらかというと内気で、ずっと家でパソコンに向かっているような子だったのに、彼に何が起こったのか、さっぱりわからない・・」と語っています。暗にこの事件が彼女にそそのかされたものであることを言いたかったのかもしれませんが、彼が起こしてしまった事実は変わりません。14歳という年齢の少女の命を奪ってしまったのですから、彼らの罪は拭いようはありませんが、同時に加害者の家族という立場についても深く考えさせられます。犯行をあっさりと母親に告白してしまうところも、この年齢ならではのことかもしれませんが、親の立場としては、この子供から大人になりかけの微妙な年齢の子供をどのような環境に置くのかは、親が真剣に考えなければならないことであると深く考えさせられます。

被害者側は、両親揃って、インタビューに答え、母親が「娘は、最近、彼らの嫌がらせにとても悩んでいました。すごくヤバい状況だということを聞いていました。彼女は、私の娘であり、友であり、かけがえのない存在でした。」とまだ14歳の娘を失った心のうちを語っています。

それにしても、嫉妬の感情から、このような悲惨な結末を迎えてしまうとは、嫉妬による感情とは恐ろしいばかりです。以前、娘がまだ小学校低学年の頃に、学校に日本でもらってきたハローキティーのついた毛糸の帽子を被っていったところ、その帽子が周囲の女の子の間の羨望の的になり、挙句の果てにそれが嫉妬にかわり、帽子がボロボロに引き裂かれて帰ってきたことがありました。その時に、フランス人の嫉妬の感情は、子供でも強烈なんだな・・と思った記憶があります。それ以来、キティーちゃんグッズは、日本に行くたびに色々と頂くことが多かったのですが、決してフランスでは、学校はもちろんのこと、外には持ち歩かないようになりました。我が家では、キティーちゃんの帽子事件だけで済みましたが、そんな子供たちが14〜15歳というお年頃、恋愛感情、性的な問題までもが絡んでくると、余計に過激になるのかもしれないなどと思っています。

14歳という年齢とロックダウンの影響

ここのところフランスでは、14歳、15歳という年頃の犯罪が多発するようになっています。パリ15区という在仏日本人も多い安全と見られていた地域での14歳の少年が集団暴行を受けて、瀕死の重症を負った事件や、エソンヌ県(イル・ド・フランス地域圏)では、24時間以内に2カ所でグループ抗争による乱闘が凶暴化し、14歳の少女、13歳の少年が命を落とすという痛ましい事件が起こっています。イジメとグループ抗争はまた、少し違うかもしれませんが、その道具としてSNSが使われていることは見逃すことができません。グループ抗争はその招集にSNSが使われ、凶器はどれもナイフを使ったものですが、フランスでは、この年頃の子どもは、こんなにナイフを持ち歩いているものなのか?と恐ろしくなります。SNSによる嫌がらせやイジメは、加害者側が自覚している自覚と受けている側の自覚の乖離を感じずにはいられません。また、フランスの場合は、この低年齢のイジメや嫌がらせ、終いには、暴力・殺人にまで至る犯罪の増加は、もう一年以上にもわたるロックダウンなどの制限された生活が影響しているような気がしてなりません。フランス人は、とにかく制限された生活が嫌いで(誰でも嫌いですが・・)、感情のコントロールが苦手です。しかも、普段は、人と会ったり、みんなで騒いだりして発散できていることが、できない生活がもう1年以上。社会の歪みは、弱いところに表れると言いますが、まさに、この14歳、15歳という若い世代の度重なる事件に表れているような気がしてならないのです。

フランスでは、年間70万件の学校でのイジメ(嫌がらせ)の犠牲が報告されており、イジメに対する目撃証言や被害申告などを受け付ける無料電話サービス☎︎3020が設けられています。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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