パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
フランスの2020年のノエルの行方 クリスマスはXデーになる?
10月末からの2度目のロックダウン・・ノエルはどうなる?
フランスのコロナウィルス感染は、10月頃から深刻な状況を迎え、10月末から11月にかけては、1日の新規感染者数が6万人を超え、検査に並ぶ人の4人に一人は陽性だと言われるほどになり、10月末から第2回目のロックダウンに入りました。すでに9月末頃からは、感染者数は、もはや数字の感覚が麻痺してくるほどに上昇し、病床の占拠率も地方によっては、満床にほぼほぼ近い地域まで出てきて、病人の移送が始まり、2度目のロックダウンが決まった頃には、もはや、誰もロックダウンになっても仕方がないと思うほどの状況でした。
今回のロックダウンは、前回のロックダウンに比べると、学校や工場、会社(但し、可能な限りリモートワーク推奨)などは継続され、営業許可が下りる商店も食料品、薬局以外の通信機器や電化製品、ガーデンセンター、DIYショップなどにも拡大されていました。前回のように街中がしんと静まりかえったロックダウンとは違って、皆、気軽に外出許可証をダウンロードしさえすれば、何かと理由をつけて出かけられるので、街中は、あまり普段と変わらないように見えるような、そんなゆるゆるに思えるロックダウンでした。
ロックダウンに突入した段階では、少なくとも11月いっぱいはロックダウン、感染状態が減少してきた場合、12月には、レストラン・バーなどの飲食店を除く店舗は、営業再開できるかもしれないとの発表でした。しかし、店舗の営業再開と同時に国民の関心事は、ノエルはどうなるのか?ということでした。フランス人にとって、ノエルを家族と過ごして祝うということは、バカンス同様、人生の重大事なのです。
まだ、ロックダウン解除の見通しがたつ前から、国会では、「年末の行事は特権的な瞬間」「今後のスケジュールは、すべてのフランス人がクリスマスを家族と過ごすことができるように調整しなければならない」というコロナウィルス感染よりもノエルが優先されるという野党の意見が堂々とまかりとおり、投票の結果、非常事態宣言(ロックダウンとは別の対応で政府は2月まで延長するつもりでいた)は、12月14日までということが一度、決まってしまったほどです。国会議員でさえも、コロナ感染対策措置よりも、フランス人にとってはノエルは特権的な瞬間だと、ノエルを祝う権利を憚ることなく大声で主張し、しかもそれが通ってしまうフランスという国、もしも、ノエルの段階でもロックダウン・・なんてことになったら、それこそデモでも暴動でも起こりかねない・・政府はどう対応するのだろう?と思っていました。
ロックダウンの段階的な解除の発表
2度目のロックダウン中には、イスラム過激派によるテロやロックダウン反対やグローバルセキュリティ法反対のデモなど、街に人が溢れかえる出来事が起こりましたが、それでもロックダウンの効果が現れ始め、6万人超えだった新規感染者数も、11月末には、1日1万人台まで低下し、マクロン大統領は、11月末から12月から1月にかけての段階的なロックダウンの解除を発表しました。
11月末から、一般の小売店の営業が許可され、これまで一応、制限されていた外出範囲も自宅から1㎞、1時間以内だったものが、20㎞、3時間以内までに拡大されることになりました。そして、さらに、12月15日には、ロックダウン解除、但し、ロックダウンになる直前に発令された夜間の外出禁止(夜9時〜朝6時)の制限が戻ってきます。もはや、これまでの政府の対応を見ていると、ノエルを家族で祝うことを禁止することはあり得ないとは思っていたのですが、なんと12月24日と12月31日の2日間だけは、夜間の外出禁止も撤廃されるという甘々な対応になりました。一般的なフランス人は、ノエルは家族と、年末年始のカウントダウンは友人と過ごすのが普通です。ノエルなどの会食でも1テーブルに6人まで・・と政府は推奨していますが、これが厳密に守られるわけはありません。
当初は、今年は、家族のノエルのパーティーもオンラインでやろう!などと決めていたはずのフランス人家庭も、結局のところ、この段階になってくると、やっぱりみんなで集まろう・・となっている家庭が多いのです。
マクロン大統領の発表の数分後には、SNCF(フランス国鉄)の予約サイトは、400%以上にも膨れ上がり、パンク寸前となりました。さっそく、フランス人はノエルのバカンスと同時に家族の元へと大移動を始める気満々なのです。フランスには、GO TO キャンペーンなどは必要ないのです。
フランス人がノエルを家族で祝う気が満々であることは、私も、ジワジワと感じていました。というのも、私は、家にある不用品処分とちょっとしたお小遣い稼ぎのために、買ったまま使っていなかったアクセサリーや洋服、香水などをフランス版のメルカリのようなサイトに出品しているのですが、このロックダウンの段階的な解除が発表される少し前から、それまでサイトに載せたままポツリポツリとたまに思い出したようにしか売れていなかった商品が急に売れ始め、毎日毎日、問い合わせや値切り交渉のメッセージが急に増え始めたのです。明らかにノエルのプレゼント用に使うと思われるのです。フランス人はロックダウンが解除される前から着々とノエルの準備にかかっていることを妙なところから私は、ひしひしと感じていたのです。普段は倹約家(ケチ)なフランス人も、バカンスとノエルだけは、散財するのです。
この段階的なロックダウン解除案に対しては、83%のフランス人が賛成しています。概ね好意的に受け取られているようです。言わせて貰えば、そりゃそうでしょ!感染状態が減少したとはいえ、まだ一日の感染者数は、1万人前後、日本の何倍でしょうか? そんな状態でもノエルOKとなったのですから、文句のあるはずがありません。
ロックダウンが緩和され始めて・・
ともあれ、現在は、小売店の営業が許可され、これまで営業できなかったお店が一斉に再開しました。これまで買い物できなかった人々が一気に押し寄せ、大変な賑わいを見せるかと思いきや、それほどでもありません。すでに、2回に渡るロックダウンから、これまでよりもさらに人々はネットショッピングなどの別の手段を身につけてしまったとも言えます。お店が再開された日には、どんな様子だろうとちょっとコマーシャルセンターを覗いてみましたが、お店は大した人手でもないのに、ノエル前から全品半額などのセールをやっていて、それこそ、今年に入ってから、ろくに営業できていないお店は、在庫処分と巻き返しに必死です。
例年は、ソルド(バーゲン)期間は、フランスは国で決められていて、ノエル・年末年始が終わった年明けからで、ノエル前に値引きなどあり得ないことなのですが、店舗はソルドという言葉を使わずに、すでに値下げを敢行しています。
ガランとしたヴァンドーム広場の一画 筆者撮影
先日、用事があって、パリの中心部に出かけたのですが、ノエルのデコレーションやイルミネーションは、例年に比べるとずっと控え目、それもそのはず、お客さんがいないのです。高級品を扱うお店になればなるほど、通常のお客さんは観光客。今、パリには観光客などいないのです。毎年、他の場所に比べて一段と洗練されて綺麗なヴァンドーム広場でさえも、いつもは広場全体をキラキラと飾るイルミネーションも今年は、今のところはまだありません。今の段階でまだないということは、今年は、ないのかもしれません。ヴァンドーム広場といえば、ショパール、カルティエ、シャネル、ディオールなどなど世界に名だたる宝飾品の超高級ブランド店が立ち並ぶ一角。お店の中は、ガランとして、いるのは暇そうな店員のみです。今さらながら、パリは観光地であり、パリの名だたる名店も、その多くは外国人観光客に支えられていることを実感するのです。先日、プランタンが国内7店舗閉鎖を発表したばかりですが、このヴァンドーム広場の様子を見ると、いかにも頷ける気がします。
それでも燦然と輝くシャンゼリゼ
ヴァンドーム広場のイルミネーションにも肩透かしを食って、それではあまりに残念とシャンゼリゼまで足を伸ばしました。シャンゼリゼのイルミネーションがすでに点灯していることはテレビのニュースやネットで知っていたからです。それでも、友人からは、「今年はシャンゼリゼも誰もいないってよ!」と話を聞いていました。
ヴァンドーム広場からコンコルド広場に抜けて、シャンゼリゼを下からずっと歩きました。いつもは、シャンゼリゼの下の方に沢山立ち並んでいるマルシェ・ド・ノエル(クリスマス市)は、影も形もありません。毎年同じで目ぼしいものはないマルシェ・ド・ノエルもないとなると寂しいものです。
それでも、散歩がてら?ショッピングにやってきたついで?にシャンゼリゼのイルミネーションを楽しんでいる人は、そこそこ居ました。景気が悪くて、デコレーションもイルミネーションも控え目な今年でも、さすがのシャンゼリゼはやっぱり美しく彩られているのです。
12月というのに、こんなに人の少ないシャンゼリゼも貴重と言えば、貴重な体験 筆者撮影
凱旋門と街路樹を綺麗に入れて写真を撮ろうとポイントを見計らい、シャンゼリゼの真ん中の歩道をちょっと上がったところで、写真を撮っていたら、いつの間にか、私の後ろには行列ができていました。やはり、この時期のシャンゼリゼの美しさは圧巻で、パリにいて、腹の立つことや暮らしにくいことも沢山あるのですが、この美しい街がすぐに手に届くところにあることに、やっぱりパリにいてよかったと思うのです。
それでもシャンゼリゼのイルミネーションを楽しんでいる人もちらほら・・ 筆者撮影
12月24日と31日は第3波のXデーになる
シャンゼリゼでさえも、飲食店はテイクアウトを除いて、一切、閉店しており、12月というのに人影もまばらです。やはりシャンゼリゼは観光地中の観光地です。パリに住んでいても、買い物とて、わざわざシャンゼリゼに買い物に行くということも滅多にありません。そんな不景気極まりないノエルを迎えているフランスですが、やはり、国民にとって、ノエルは家族と祝い集う一年のメインイベントです。しかも、12月15日には、ロックダウンが解除になり、国内大移動が始まり、しかも、24日と31日は、外出制限からも一切、解き放される無法状態です。これまで長い間、2回に渡るロックダウンで抑圧されてきた国民が爆発するのは、必須です。マクロン大統領は、「24日と31日は、ノエルと年越しが家族や友人と過ごせるように特別な措置を取りますが、あくまでも衛生環境を尊重する国民の良識に任せます」と話していますが、フランス国民に良識などという生やさしい言葉が通用するわけはないことは、これまでのコロナウィルス感染の経過を見れば明らかなことです。しかも、今は、ウィルスが最も活発になる気温の下がっている冬なのです。何もなしで済むわけはありません。
それでもフランスは、ノエルを家族と祝う権利を主張し続け、まさにノエルと年末年始は、コロナウィルス第3波のXデーとなろうとしています。クリスマスイブと大晦日の外出制限なしも、公道での集まりは禁止されていますが、それが守られるようなフランスではありません。この美しいシャンゼリゼがノエルに人で埋まるようなことがないように、私は今から祈るような気持ちです。
段階的なロックダウン解除案によれば、感染状況が悪化せず、一日の新規感染者数が5000人以下になっていた場合は、来年1月20日前後には、レストランの営業が許可されるということになっていましたが、私は、逆に、1月末には、3度目のロックダウンがやってくる・・そんな心づもりでいるのです。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR