World Voice

powerd_by_nw

日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

「メダルは日本人に盗まれた!」怒りの裏に潜むコロンビアアスリートの事情

©️YouTube - Boxeo Tokyo 2020 Yuberjen Martínez, eliminado en cuartos de final | Tokyo 2020 | Highlights

開催式直前まで激しい議論が飛び交っていた東京オリンピックが閉幕しました。

オリンピックはそこまで話題になっていないという国も多々あったようですが、遠く離れたコロンビアではなかなかの盛り上がりを見せていました。

コロナウイルス感染拡大や無観客の開催決定などが心配される中で、コロンビア国内ではそのようなネガティブな議論は一切されなかったように思います。コロンビアに比べ物価がはるかに高く、距離的にも遠い日本までわざわざオリンピックを見に行く予定だった人もほとんどいないでしょうし、「日本は発展している国だから対策もしっかりしているんでしょ」と何となくのイメージで安心感を持っている人が多いように感じます。

さて、開会式直後からコロンビアのニュースでは連日オリンピックが報道されてきたわけですが、今回は8月3日コロンビア人が日本人と対戦したボクシング男子フライ級準々決勝での出来事を取り上げたいと思います。

 

田中亮明選手の判定勝ち

8月3日に行われたボクシング男子フライ級準々決勝で、日本の田中亮明選手がコロンビアのジュベルヘン・マルティネス選手相手に4−1の判定で勝利しました。マルティネス選手は2016年リオデジャネイロオリンピックでライトフライ級の銀メダリストであるため、今回のオリンピックでのメダル獲得が期待されていただけに、この敗退はコロンビア人にとってとても悔しいものとなりました。

 

「奪われた試合」

この試合で田中選手は判定での勝利を収めたわけですが、多くのコロンビア人がこの判定に不満を持っているようです。

SNSには「これは盗まれた試合だ」「ジャッジは何を見ていたんだ」と抗議の投稿が相次ぎ、しばらく国内のニュースを賑わるほどの騒ぎになりました。

コロンビアオリンピック委員会とコロンビアボクシング連盟はこの試合の翌日、スポーツ仲裁裁判所(TAS)へ再戦かマルティネス選手の勝利を認めるように訴えを提出しましたが、TASは試合を検証した結果判定は正当だったとこの訴えを却下しました。

 

たくさんの寄付が集まる

この試合が終わった後、マルティネス選手へ今までの努力を称え感謝を気持ちを表すために2つの有名企業からの寄付がマルティネス選手へ届けられました。

コロンビアを代表する飲料メーカー『ポストボン』は「我々は君が全力を尽くした素晴らしい勝者ということを知っている。君の夢はコロンビアの夢だ。」と9千万ペソ(約250万円)の寄付を表明。

マルティネス選手はツイッターで「ありがとうございます。言葉になりません。」と感謝の気持ちを表しました。

 

この感謝のツイートの数時間前、カリブ海のバランキージャにある企業『Techglass』の代表クリスティアン・ダエス氏も「メダルは奪われたけど、君は私たちコロンビア人の金メダルだよ。マルティネス、君はコロンビアの誇りだ。バランキージャで会おう。」と5千万ペソ(約125万円)の寄付をマルティネス選手に申し出ました。

これを受けてマルティネス選手はツイッターでダエス氏に向けて感謝の動画を投稿。しかしマルティネス選手への寄付はこれだけにとどまりません。

今回の東京オリンピックの女子自転車競技(BMX)にて銀メダルを獲得したマリアナ・パホン選手がマルティネス選手をサポートするために基金を設立したのです。

その名も「ジュベルヘン、コロンビアが君にメダルを授けよう」キャンペーン。

ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪で2回の金メダルを勝ち取ったパホン選手はコロンビア国内で知名度が高いため、このキャンペーンは瞬く間に広がり、既に8000人近くの人から2億ペソ(約600万円)以上もの寄付が集まっています。

もし銅メダルをとっていたら政府から9500万ペソ(約260万円)を受け取れていたマルティネス選手ですが、寄付で3億5千万ペソ(約1千万円)を集めることに成功しました。

 

生活は賞金頼りのアスリート達

コロンビアではスポーツ選手が得られる報酬はサッカーを除いてとても良いとは言えず、賞金でなんとか暮らしている選手が多いのが現実です。

7月27日に女子ボクシングのジェニ・アリアス選手がフィリピンの選手に負けてしまいましたが、試合後のインタビューにて「負けてしまいコーチに申し訳ないと思っている。私に期待してくれた人を失望させてしまった。チームメイトとか家族とか・・お父さんにも。父親に手術を受けさせてあげたかった。。。」と語ったことが一部で話題になり、それを受けてスポーツ省が彼女と彼女の家族をサポートすることを約束する場面もありました。ポストボンから送られた寄附金もマルティネス選手の母親に目の手術を受けさせるためのものだと言われています。

予想以上の寄附金を受け取ったマルティネス選手は、この寄附金を同じ境遇のボクシング仲間と分け合うことを発表し、9日ツイッターで投稿された動画では以下のように語っています。

「彼らも同じようにたくさんの時間を費やしてきています。今こそ彼らの努力も評価されるべき時です。基金のプラットフォームはまだ継続しています。彼らの夢や目標を叶える手助けをしてくださりありがとうございます。」

 

今回の試合結果に対する不満が生んだ騒ぎについて、一部日本の報道で「この騒ぎは中国人によって仕組まれたものだ」という見方をする記事も見かけましたが、私の周りの反応を見ている限り彼らは純粋にこの試合結果に納得をしておらず、中国の影響は全く受けていないものだと言って間違いないと私は思います。

スクリーンショット 2021-08-10 午後6.46.54.png

©️YouTube - Boxeo Tokyo 2020 Yuberjen Martínez, eliminado en cuartos de final | Tokyo 2020 | Highlights

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ