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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

イタリア今年の復活祭は1150万人が旅行、2年ぶりの自由な春

2年ぶりに4月に大勢の観光客が戻ったオルヴィエート大聖堂 2022/4/23 photo: Naoko Ishii

 通例イタリアでは、春、日本のゴールデンウィークに先駆ける形で、旅行シーズンが始まります。4月25日は、第二次世界大戦中イタリアを支配していたナチス・ドイツとムッソリーニのファシスト政権からの解放を記念する日、5月1日は労働の日で、イタリアでは共に、国民の祝日です。そのため、この2日前後の土日を利用し、旅行したり出かけたりする人が多く、中には、有給休暇を取ってさらに長い旅行をする人もいます。さらに、春には、カトリック教の祝祭日である復活祭もあり、イタリアでは、復活祭当日および翌月曜日が、いずれも国民の祝日となっている上に、学校や大学ではこの前後の数日が休みとなります。そのため、復活祭の前後も旅行に出かける人が多いために、観光地が混雑し、宿泊費・交通運賃などの旅行費用が他の時期に比べて、かなり高くなりがちです。これは極端な例ですが、かつて春に宿泊したエルバ島のホテルで、復活祭前後だけは宿泊料金が前後の週の倍になっていたので、驚いたことがあります。また、この復活祭の日は、カトリック教会では、春分後の最初の満月の次に来る日曜日と定められているために年によって日が変わり、2021年は4月4日、今年、2022年は4月17日でした。そして、今年のように復活祭が4月17日、翌18日が休みで、その数日後に解放記念日である25日が来るとなると、復活祭前から長い旅に出る人も出てきます。ちなみにイタリアでは、祝日が日曜日であっても、翌月曜日は振替休日になりません。

 記事の冒頭に「例年」ではなく「通例」と記したのは、2020年から昨年までの2年間は、春に新型コロナウイルス感染拡大を抑止するための厳しい規制があったからです。2020年は3月10日から5月3日まではイタリア全土がロックダウンで、必要がなければ家も出られない状況でしたし、2021年は復活祭前後、4月3日から5日まではイタリア全土がレッドゾーンとなり、4月6日から25日まではイエローゾーンがなくなってしまったため、原則として居住する市内から外に出ることができず、ウンブリア州は4月26日にはイエローゾーンとなったのですが、それでも、5月末までは、レストランでの食事は屋外でのみ可能で、しかも4人以内という制限があり、4月下旬になってもまだレッドゾーン、オレンジゾーンで、居住する市外への移動が自由にできない州がありました。

 今年になってようやく、いまだに感染下にはありながらも、ワクチン接種やマスク着用義務などの規制で感染を防ぐことができたおかげで、春に旅行を楽しむことができるようになりました。先週訪ねたオルヴィエートには、去年の4月26日には閑散としていた中心街に、あふれ返るほどの観光客がいて、外国からの旅行者も大勢いました。にも関わらず、混雑する場所でも屋外だからとマスクをしない人が多いのが気になりましたが、ようやく春を自由に外で過ごすことができ、旅行できるようになったことをうれしく思いました。

 規制の厳しい2度の春のあと、この春は復活祭の旅行を楽しんだイタリア人が多く、芸術の町、海、山など、訪れる場所は様々で、1150万人が旅行をしたとのことです。

 イタリアで今後さらに進む規制の解除や、現在の感染の状況については、また別の記事でご紹介しますが、感染力の強い変異株のため、まだ油断ができる状況ではないので、一人ひとりが十分に注意して、心穏やかに夏を迎えられるよう願っています。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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