イタリアの緑のこころ
日々の暮らしに浸透 イタリアとカトリック教会 聖人
1月29日は、ペルージャの守護聖人の一人、聖コスタンツォを記念する祝祭日で、例年この日は、ペルージャでは学校が休みとなるほか、休日となる職場もあります。昔むかしペルージャ外国人大学に通っていた頃、1月29日には授業がないと初めて知って驚いたのも、今は懐かしい思い出です。ちなみに、義弟家族が住むトーディの守護聖人は聖フォルトゥナートで、その記念日である10月14日は、トーディの学校も休みになるそうです。
閑話休題。ペルージャには、聖コスタンツォの日に食べて祝うケーキ、聖コスタンツォのトルコロがあり、昨日の大家族がそろっての日曜の昼食では、食後のデザートにこのケーキを食べました。干しぶどうや砂糖漬けの果物がたくさん入っていて、おいしかったです。
#Perugia #Umbria Itqly #ペルージャ 3人の #守護聖人。聖ロレンツォはドゥオーモ、聖エルコラーノは中心街の教会と階段が名を冠するけれど、記念日1月29日に町の学校などが休みとなる聖コスタンツォは、専ら休みとお菓子で知られているようで不思議。#イタリア #ウンブリア https://t.co/r48sxtD2C6 pic.twitter.com/RPtMXoxr0R
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) February 4, 2019
聖コスタンツォ(San Costanzo)は、ペルージャ最初の司教で、2世紀後半に古代ローマ帝国の迫害により、フォリンニョで殉教の死を遂げました。
おそらく日本では知る方が少ないであろうこの聖コスタンツォの名も、けれども、我が家で長年愛用している占い修道士のカレンダー(Frate Indovino)の今年の1月を見てみると、
1月29日が記念日である聖人の中でも、名前が一番に、しかも大きく太字で記されています。
そうして、ご覧のように、どの日にも、その日に記念する聖人が複数いて、カトリック教の聖人は、守護聖人を記念する日は学校が休みになることからも分かるように、宗教を離れたイタリアの日々の暮らしや慣習にも、浸透しています。
敬虔なカトリック教の信者である義父母は、新型コロナウイルス感染症拡大のために、遠方への集団旅行が難しくなるまでは、毎年10月にプーリア州にある聖ピオ神父巡礼教会へのバス巡礼ツアーに参加していました。
やはりプーリア州にある大天使ミカエルに捧げられた聖堂、サン・ミケーレ聖所記念堂へと、数年前に夫が友人たちと歩いた巡礼路でも、聖ピオ神父巡礼教会は、途中で訪ねるべき大切な巡礼地とされていました。そして、教会にはもう何年も足を運んでいないというわたしの生徒さえ、心にかける願いごとがあって、「毎晩、聖ピオ神父に祈っているんですよ。」と言っていました。
イタリアでも世俗化、教会離れが進んでいる昨今では、もう少ないと思うのですが、夫の弟の一人は、4月25日、福音記者である聖マルコを記念する日に生まれたのでマルコと名づけられ、夫の友人にも、6月13日、パドヴァの聖アントニオを記念する日に生まれたので、アントニオという名となった人がいます。
また、わたしの夫は、亡くなった祖父の名からルイージと名づけられたのですが、聖ルイージ・ゴンザーガを記念する日である6月21日には、義母が聖名の祝日(onomastico)を祝って、おめでとうと言っています。聖名の祝日を意識したり祝ったりする慣習は、特に南イタリアでは重んじられていて、誕生日と同じように祝うことさえ多く、これは、南伊では信仰心の篤い人が多く、かつて、家庭や農作業における生活を支えてくれていた聖人たちに対する信心が深かったためと考えられているようです。
「パドヴァの聖アントニオ 映画とスカンノ村祭り、アブルッツォ」
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) June 15, 2021
祭りは、朝始まり、朝には、馬や牛、ラバなどが、パドヴァの聖アントニオに献納する丸太を後ろに引いて、門から中心街に入り、中心街を通り抜けて、聖人の像が運び込まれる教会まで、丸太を運んでいました。https://t.co/nG0Uz9cgXj pic.twitter.com/rwJ1OMNl99
ウンブリア州では、聖大アントニオスを記念する日、1月17日から、謝肉祭(carnevale)が始まります。聖大アントニオスは動物の守護神なので、アッシジのサンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ教会では、たくさんの動物たちが聖アントニオスの像や修道士たちに続いて行進し、行進のあと、祝福を受けます。パドヴァの聖アントニオが守護聖人のアブルッツォの村、スカンノでは、パドヴァの聖アントニオの日、6月13日に、牛や馬やトラクターが丸太を引いて村中を行進して献納し、ベビーカーの行進さえあり、村を挙げて祝っていました。こんなふうに、イタリア各地で、守護聖人の日やその前後などに、地域の祭りが行われる場所が多くあります。また、トゥールの聖マルティーノは、フランスの聖人ですが、その記念日である11月10日は、新ワインと焼き栗を味わう日とされ、旬のものを祝う村祭りなども、この頃にイタリア各地で催されます。
信仰の深いカトリック教徒が、それぞれにとりわけ敬愛する聖人を持つばかりでなく、イタリアではこんなふうに、今も人々の暮らしや地域に、聖人ゆかりの慣習や祭りがあります。そう言えば、そろそろバレンタインデーが近づいていますが、バレンタインは、イタリアでは、恋人たちや夫婦が共に過ごせる幸せを祝う日で、Festa di San Valentino、直訳すると「聖ヴァレンティーノ祭」と呼ばれ、この日はそもそも、ウンブリア州テルニの司教だった聖ヴァレンティーノを記念する日です。
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著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia