イタリアの緑のこころ
イタリア 感染の激増、甘い規制と薄い危機感
毎日学校で、授業中に教える生徒とだけではなく、イタリア全国から来る多くの生徒たちと接触する機会があるため、また、高齢の義父母に感染を媒介してしまわないためにも、わたしは10月に講座が始まって以来、毎日Ffp2マスクを購入していました。そして、授業中はもちろん、屋内で過ごすときにも、飲食時を除いては、マスクを必ず着用していました。
より感染力の強いデルタ株、ついではオミクロン株のために感染が拡大する中で、感染を防ぐためには、互いの距離やマスクの着用が不可欠であるにも関わらず、家族間でも友人間でも、残念ながら、「自分たちはワクチン接種が完了しているから大丈夫」、あるいは、「ワクチン接種は受けていないけれども、感染して万一症状があっても風邪のようなもの」という間違った考えから、最近になっても、大人数で食事をして、しかも準備の際にも食後のおしゃべりの際にもマスクを着用しないという状況が、大家族でもあり、また、友人たちの間にもあることが分かりました。ワクチン接種を早くから受けて、感染はできるだけ避けようという意識が見られる友人たちの中にさえ、映画館での鑑賞中に、単に楽だからという理由で、照明が消えればマスクを外す人もいたので、驚きました。
北欧、そして北 #イタリア で拡大していた #新型コロナウイ の感染が #ウンブリア にも。1日に498人の新規感染者数が出て、現在の感染者数が4千人を超え、昨日はPCR検査のドライブスルーの検査所周辺一帯で大渋滞となったそう。そのため今日からは検査所が変更に。#covid19https://t.co/i92RHuhia7 pic.twitter.com/MdnN9UmE4D
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) December 22, 2021
職場である学校でも、教員も生徒も必ず屋内ではマスクを着用するよう言われているにも関わらず、休み時間や授業中にさえ、マスクを外しているのを見かけることがありました。
ワクチン接種を2回受けているから大丈夫、オミクロン株は症状がないか、あっても風邪のようなものだから大丈夫。
今、北欧に続いて、イタリアでも急速に感染が拡大し、深刻な状況になってしまった背景には、寒くなって皆が屋内で過ごすようになったこと、クリスマス、年末年始のために皆が移動して集まる機会が増えたこと、そして何より、感染力が数倍強いというオミクロン株の蔓延にもよるでしょうが、何よりも、この大勢がどこかに持つ「少しら大丈夫」という油断があるからではないかという気がします。
25日は義父母たちと6人で昼食。マスクなしで気になるけれど、和やかに祝いおしゃべり。27日まで全土レッドゾーン。左下のプレゼーペはアッシジ聖フランチェスコ大聖堂の模型に。@WorldVoiceJapan 連載記事書きました。↓
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) December 26, 2020
「イタリア いつものクリスマス、今年のクリスマス」https://t.co/0nGodJA7eW pic.twitter.com/h08Ngvsc5q
コンテ首相のもとでの感染抑止対策は、規制が多く厳しいものでしたが、そのおかげで、ヨーロッパの他国に先駆けて感染が拡大したイタリアが、後に他国に比べて感染者数を抑えることができたのではないかと思います。
それが今は、こんなにも感染が拡大し、イタリア全国で、感染の追跡調査が不可能となったり、ドライブスルーの検査所の前に車の長蛇の列ができて、数時間待つ必要があったり、医療機関の逼迫が始まったりしてしまっているというのに、年末年始が近づき、1月6日の主顕節の祝いも近づいているというのに、友人同士や家族が自宅で会うことについては、感染者や濃厚接触者となったために自己隔離をしなければいけない人を除いては、何の制限もないのです。
いくらワクチン接種完了または感染して治癒した場合にのみ得られるスーパーグリーンパスが必要となる場面が、来年1月10日からは市内電車やバス、地下鉄、会議や店の屋外席での食事、ホテルでの宿泊などにも必要となったと言っても、そして、サッカースタジアムなどで人数制限が行われることとなり、ディスコが1月末までは営業停止となったと言っても、私宅でこそ、対人間の距離を取らずに、年末の帰省もあってさまざまな場所から来た人が大人数で集い、長い間会食をする機会が、この時期は多いことが十分に予想されるというのにです。
スーパーグリーンパスが屋内での飲食などに必要となっても、接種完了5か月後に感染防御効果が30%に下がるなら、今のゆるい規制では急速に拡大する感染が防げないのでは。私宅での会食や移動もほぼ自由。伊政府が市民の自由と自己責任の名のもとに責任を放棄しているような。https://t.co/LJUIHUAJA3 pic.twitter.com/oHEdC4YNu0
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) December 28, 2021
イタリアではクリスマスは家族で敬虔に祝い、一方、年末は友人などと大人数で私宅や店で集まって、大いに食べて飲んで話して、新しい年をにぎやかに乾杯して迎える慣習があります。1月6日の主顕節は、東方の三博士が長い旅の末に幼子イエスに面会を果たして贈り物を捧げた日を祝う日で、イタリアでは国民の祝日なのですが、同時に、前の晩に子供たちがつるして置いた靴下に、ベファーナおばあさんが、よい子にはお菓子をたくさんつめてくれる日でもあり、例年は、イタリア全国で、家族の皆が、子供たちが靴下の中のお菓子に喜ぶ様子を見るのを楽しみにしている日です。だからこそコンテ政権のときには、この時期は規制をさらに強化して、移動したり会って集ったりできる人数も制限し、そのおかげで、以後は感染者が減少していったのです。
今回の甘い規制では、かつてないほど感染者が急増しつつある状況を改善することができないのではないかと心配です。
著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia