イタリアの緑のこころ
ウンブリア希望と喜びの春だより、カステッルッチョ高原の種まきとサッカーチームの健闘
カステッルッチョ高原でレンズマメの種まき開始、一面を野の花が彩るのは夏至以降か
2016年のイタリア中部地震から5年目となる今年の春、シビッリーニ山脈の高みにあるカステッルッチョの高原では、名産のレンズマメの種まきが、復活祭の前日、4月3日から始まりました。イタリアのANSA通信の次の記事によると、震災からの再建がまだ遠い上に、新型コロナウイルス感染症の感染下という二重の困難の中迎える2度目の種まきではありますが、雪が殊更に多い冬は豊作が見込めるので、今年は収穫に期待できるとのことです。
Gianni Coccia, portavoce degli agricoltori, ha comunicato ad @Agenzia_Ansa che è iniziata la semina della #lenticchia di Castelluccio di Norcia. I trattori sono in azione nella grande piana e garantiranno un raccolto di 3-4 mila quintali.#ANSATerraGustohttps://t.co/XGZ39twCbz
-- Ansa Terra e Gusto (@Ansa_TerraGusto) April 6, 2021
感染下で、カステッルッチョ産のレンズマメのように、上質で値が高めである商品は、売り上げが伸びにくいという状況にはあるものの、ワクチン接種が進んで、緊急事態を乗り越え、経済が復興することを願っているというカステッルッチョ・ディ・ノルチャのレンズマメの生産者の代表の声が、記事には引用されています。
ANSA記事によるとさらに、種まきは4月いっぱい、そして翌月も続き、6月末から7月にかけて、カステッルッチョの高原一面を野の花が彩り、8月がレンズマメ収穫の時期となると予想されているとのことです。
バレンタイン、鉄鋼業の町、テルニのサッカーチーム躍進、ペルージャは?
ウンブリアの南、テルニ県の県都である同名の町、テルニは、バレンタインデーの由来となる聖人、聖ヴァレンティーノ(176-273)の生地、鉄鋼業、そして、古代ローマ人が築いた壮大な滝、マルモリの滝で知られています。
イタリアやウンブリア州の他の市町村同様に、テルニもまた、感染と経済危機に苦しんでいるのですが、その町の人々の心をずっと躍らせているニュースがあります。テルニのサッカーチーム、テルナーナは、2018年にセリエBからセリエCに降格したのですが、今季は、「またも勝利」と地方ニュースでたびたび伝えられるほどに強く、驚いていました。4月3日の昼のニュースでは、次の試合で勝たなくても同点であれば、属するCリーグでの優勝とセリエBへの昇格が決まるという報道があり、その数日前から、地方ニュースでは連日、喜びに顔を輝かせるテルナーナのファンたちや、チームの旗と応援の言葉が町の随所に見られる様子が、報道されていました。
今ウンブリアでは、サッカーでテルナーナがセリエBへの昇格を決め、なおも躍進中。昇格を決めた4月3日の前からファンは大興奮。こういう状況なので、無観客試合とは言え、明るいニュースで皆が笑顔になるのはいい。ペルージャもまだ昇格の可能性があるとのこと。昇格なるか。https://t.co/lQMwyplbLn pic.twitter.com/HtEajnExZi
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) April 15, 2021
その4月3日の試合で、4対1で圧勝し、セリエB昇格を決めたテルナーナと勝利・昇格を喜ぶチームとファンの姿は、その後しばらく連日テレビで放映されていました。以後も、テルナーナは負け知らずで、躍進を続けています。
かつてはセリエAで、中田の活躍で日本でも知られていたペルージャのチームもまた、2020年にセリエCに降格し、Bリーグで戦っています。
Perugia-Triestina 2-1, rimonta del Grifo con i gol di Murano e Minesso #calcio #SerieC #PerugiaTriestina https://t.co/zmJV25VjuI pic.twitter.com/NQ644nbGo0
-- Corriere dell'Umbria (@CorriereUmbria) April 11, 2021
そして、わたしが先に引用した記事を書いて以降、4月11日にペルージャチームも勝利を収め、首位のパドヴァも対グッビオ戦で勝ったため、首位と3点の差はあるものの、まだセリエB昇格の可能性が残っています。
いつか再興するときが来る、そのための被災地での特産品の種まき、そして、勝利を目指して日々練習に励むチーム、ひいきのチームを応援し、試合の成り行きや結果に一喜一憂するファンたち。この春のウンブリアは、そんな表情も見せています。
著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia