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シドニー・オペラハウス50周年!紆余曲折の建設舞台裏と誕生祭
シドニーといえば、真っ先に思い浮かべるのが、「オペラハウス」ではないだろうか?
貝殻やヨットの帆を連想させるユニークな外観は、唯一無二のものだ。湾に突き出たベネロング岬の先端で白く輝き、この街のもうひとつのランドマーク「ハーバーブリッジ」と共に、港町シドニーの美しい風景を作り上げている。この2つのランドマークが揃った港の風景こそ、シドニーらしさといえるだろう。
昨年3月に、シドニー・ハーバーブリッジが90周年を迎えたところだが、今月20日、「シドニー・オペラハウス」が、オープンからちょうど50年の節目を迎える。
完成まで紆余曲折あったオペラハウスの建設
シドニー・オペラハウスは、1956年に行われた公募によって、当時無名だったデンマーク人建築家ヨーン・ウッツォン氏のデザインが採用され、1959年に着工。14年後の1973年10月20日にオープンした。
当時、世界中から233件もの応募があったというオペラハウスのデザイン・コンペにおいて、ウッツォン氏のデザイン案は「選考基準に合わない」という理由から、一次選考で落選...。
ところが、彼の独創的でユニークなデザインを高く評価した一人の選考委員の強い推奨によって、最終選考に復活、大逆転ともいえる優勝をもぎ取った。しかし、複雑きわまりない構造に「こんなものを造れるわけがない。不可能だ」と、世界から嘲笑を買ったという。
当初の計画では4年ほどで建設できる予定だったが、着工前から指摘されていたデザインの複雑さから実際の建設は困難を極め、費用も想定外に膨れ上がり、途中で何度も中断。また、ウッツォン氏と州政府の間に軋轢が生じ、氏は途中で辞任に追い込まれる事態に...。
その後、プロジェクトは国内の建築家に引き継がれ、当初のデザインに4ヶ所の変更を加えながら、構想から19年後の1973年にようやく完成した。コンペの選考時から実際の建設、そして完成までの紆余曲折...関係者にとっては波乱万丈の歴史があったのだ。
50周年を迎え、オープン以来となる大規模改修
2007年には、世界文化遺産に登録されたシドニー・オペラハウス。
世界遺産に登録されるための10の基準のうち、『(1)人類の創造的才能を表現する傑作』という一つの基準のみで登録され、1973 年オープンであることから『最も建造年が新しい文化遺産』としても知られる。今や年間 1,090 万人以上の観光客が訪れるという、まさに、20世紀を代表する近代建築の傑作のひとつだ。
50周年を迎えるにあたり、オープン以来となる大規模改修が行われた。この改修工事におけるデザイン監修を原設計者の故ヨーン・ウッツォン氏の息子、ヤン・ウッツォン氏に依頼。当初のデザイン・コンセプトを損なわないように改修することを心掛けたそうだ。
また、この改修によって世界遺産の登録基準から外れないようにすることに重点を置き、目立たない部分のデザインやマテリアルにも細心の注意が払われているという。実際に館内を歩いてみると、改修によって生まれ変わった部分とオリジナル部分が、違和感なく調和していることが実感でき、繊細な美しさが伝わってくる。
オペラハウスの魅力を堪能するなら、日本語ガイドツアーに参加するのがおすすめだ。外からでは伺い知ることのできない内部やガイドツアーでしか入れない場所を熟練の日本人ガイドが案内してくれる。建築に興味のある人ならなおさら、堪能できることだろう。
50周年記念の誕生祭「バースデー・フェスティバル」
シドニー・オペラハウスでは、50周年を記念した「バースデー・フェスティバル」を開催中だ。50周年記念の特別コンサートやオペラ、無料のトークショーなど、さまざまなイベントが行われている。
今月末までは、世界中どこからでも無料で視聴できるオンライン・ストリーミング・イベントも開催中なので、ぜひ、チェックしてみて欲しい。〈了〉
▼シドニー・オペラハウス50周年バースデー・フェスティバル 公式サイト
▼無料オンライン・ライブ・ストリーム:Music of the Sails - A 50th Anniversary Digital Artwork ※10月31日まで
▼無料オンライン・ストリーム:50/50 ※10月22日まで
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
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