Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
国旗のデザインを変更するべきか? 議論が過熱するオーストラリア
1月26日は「オーストラリア・デー」という、日本で言うところの「建国記念日」に当たる祝日だった。近年、このオーストラリア・デーの「お祝いムード」には、陰りが見えている。その理由は、昨年、書いたコラム「建国記念日は、侵略の日か?オーストラリア・デーの苦悩」をお読みいただければと思うが、手短にまとめると以下のような感じだ。
英国の植民地としたこの日は、先住民の人々にとっては、「侵略された日」といえるのではないか―
今年は、前出のコラムにも書いた「先住民の男性4人が、連邦議会前にThe Aboriginal Tent Embassy(先住民大使館)を建てて抗議した日」から、ちょうど50周年に当たることから、豪国内主要都市で大規模なデモ行進が行われた。(参照)
また、オーストラリア・デーに先駆けた25日には、先住民の旗(アボリジナル国旗)の著作権を連邦政府が2千万豪ドル(約16.2憶円)で買い取り、オーストラリア人なら誰でも自由に使えるように、公に解放すると発表された。(参照)
「建国記念日」には付きものの「国旗」だが、これに合わせるように、著名コラムニストのピーター・フィッツシモンズ氏が、自身のツイッター上で、「オーストラリア国旗のデザイン変更に関する議論」を展開。これをメディアが取り上げるなどして、大いに白熱したやり取りが行われた。(参照)
Is this the answer? Discuss. https://t.co/9y535lCTeu
-- Peter FitzSimons (@Peter_Fitz) January 26, 2022
Here's a thought, maybe we need a new national flag that is also representative of our rich Indigenous history instead of one that portrays us as a colonial outpost of Britain? A flag that every Australian would be proud to embrace as OUR flag @Peter_Fitz https://t.co/7QlFy6hk43
-- Ivan Hecimovic (@hecivan70) January 25, 2022
オーストラリアにおける国旗のデザイン変更に関する話題は、1988年の建国200周年を迎える直前からあったようだが、とくに活発に議論されるようになったのは、1900年代に入ってから。なかでも、1991年に第24代首相となった労働党のポール・キーティング氏が、彼の政権下で公に提起するなどして、度々、議論されてきたこの国の根幹に関わる課題だ。
新しい国旗が必要だという意見と、今のままで良いという意見が対立
新しい国旗が必要だとする意見で、最も多いのが、ニュージーランド国旗とビクトリア州旗に似通い過ぎている、というものだ。
英連邦の国々には、ユニオンジャックと呼ばれる英国旗をあしらった国旗を持つ国が数多くあるが、大半の人がとくに困惑するのは、ニュージーランドの国旗とそっくり!ということではないだろうか。
もうひとつ、近年、国旗のデザイン変更を支持する意見の中心となっているのが、オーストラリア・デーへの反発と同じく、先住民の人々の感情に配慮したものだ。
現在のユニオンジャックが配されたデザインは、オーストラリアの歴史の中で、「先住民の権利が見過ごされていた時代の、没収と抑圧を象徴するものである」と言う見解への賛同が、年々大きくなっている。
今年は、コラムニストのフィッツシモンズ氏の試みに呼応するように、オーストラリア国立大学の国際安全保障とインテリジェンス研究を専門とするジョン・ブラックスランド教授も自身のツイッターで新しい国旗のデザイン案を披露した。
Happy Australia Day. This Reconciliation Flag for Aust is simple & inclusive, evoking the original inhabitants, the federation, a sliver of the Union Jack modified akin to a boomerang, & the ubiquitous symbol of Aust, the Southern Cross, with the 7 pointed stars. Please consider pic.twitter.com/9dVKPScMMl
-- John Blaxland (@JohnBlaxland1) January 26, 2022
ユニオンジャックに代わって、そこに描かれているのは、豪先住民族の伝統民具であるブーメラン。現在の国旗にあしらわれている南十字星と青色のデザインを生かしつつ、豪先住民のアボリジナル国旗のカラーを配したものになっている。
こうした声の高まりにつれて、度々、国旗のデザイン変更に関する話題が取り上げられてきたが、なかには、馴染みのあるデザインに対する愛着や使用されてきた歴史を鑑み、「変えたくない、今のままで良い」という人が大勢いるのも事実。オーストラリア国旗協会は、そうした「現在の旗を維持しよう」という声を代表している団体のひとつだ。
果たして、この「国旗のデザイン変更」問題は、どういう解決を見るのだろうか。個人的には、ニュージーランドの国旗と似ていて紛らわしいので、変更したらいいのではないかと思っているけれど...
オーストラリアが抱える内在的な問題を平和的に解決できる日は、もうすぐそこまで来ているのだろうか...それとも、まだまだ遠くで足踏みをしているのだろうか...?〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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