Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
新作を観る前に!『マトリックス』3部作をおさらいするとシドニーが見えてくる
1999年に公開され、空前の社会現象にまでなった超大作SFXムービー「マトリックス」。2003年には続編となる「リローデッド」と「レボリューションズ」の2作が公開、3つの作品を通して描かれる白昼夢のような独特な世界と迫力あるアクションで、世界中の人々を虜にした。
その最新作となる『マトリックス レザレクションズ』が、日本では世界に先駆けて12月17日に公開されるということで、心待ちにしているファンも、きっと多いことだろう。
マトリックスは、私にとっても忘れられない映画のひとつでもある。なぜならば、過去の3作はすべて、シドニーで撮影されたからだ。
続編が公開された2003年に、某ポータルサイトで第1作の詳細なロケ地案内の記事を公開したところ、大きな反響があり、記事を読んでシドニーを訪れ、『マトリックス聖地巡り』と称して旅した人も多かったと聞いた。当時は、ラジオなどに出演して映画とロケ地について話をしたり、何年か経った後でも、依頼を受けて「マトリックス・ロケ地案内」を執筆したりと、この映画との関わりは深く、思い出がたくさん詰まっている。
日本では、新作公開に先駆けて、昨日(12 月10日)から1作目の「マトリックス」が、1週間ほどIMAX®で限定上映されているそうだ。
◢|| IMAX®上映スタート ||◣
-- 映画『マトリックス レザレクションズ』公式 (@matrix_movieJP) December 10, 2021
本日12/10より1週間限定で、1作目『#マトリックス』の【"初"IMAX®】上映がスタート
新章『マトリックス レザレクションズ』をご鑑賞前に、迫力満点の大画面と音響で、映画史に残る革新的作品をぜひ劇場で体感ください!!
▼詳細は▼https://t.co/gNTrTbxHjv pic.twitter.com/8sz3SfIcy5
新作を観る前に、過去の3作をもう一度観ておこうという人も結構いるのではないかと思うので、当時のロケの裏話をちょっとだけ・・・
※過去の記事を知っている人は、「また~?!」と思うかもしれないけれど...ご容赦を(苦笑)
マトリックス3部作はすべてシドニーで撮影された
『マトリックス』シリーズは、物語上ではニューヨークが舞台となっているが、3作すべてが、ほとんどシドニー市内で撮影されたというのは、ちょっと意外かもしれない。特撮場面の精密で迫力あるCGは見応えがあるが、多くのシーンで実在の風景がほぼそのまま使われている。
シドニーは、オーストラリア国内最大のビジネス街だが、近代的な建物と歴史的な建物が混在する中心部は、そこかしこに19世紀の趣が残る街でもある。一部だけを切り取れば、たしかにどことなくニューヨークのようにも見え、映画に見入っていたら気がつかないのではないだろうか。
第1作の印象的なシーンは、ほぼすべてがシドニー中心部
なかでも、世界に衝撃を与えた第1作「マトリックス」に登場する印象的なシーンのほとんどが、シドニー中心部のまさにど真ん中ともいえる人通りの多い場所で撮影されたことは、特筆に値するだろう。
しかも、ほとんどのシーンのロケが、日中のシドニー中心部で行われたのも画期的だ。トリニティがバイクにまたがって颯爽と現れるシーン、ビル屋上での銃撃戦及びヘリの爆発炎上シーンなどなど、ほとんどのシーンの撮影がビジネス・アワーに行われたことから、周辺の企業や店舗への影響が懸念されたが、お祭り好きなオージーゆえか、予想以上に協力的で、トラブルもなく、無事ロケが遂行できたそうだ。
この作品の中で、とりわけインパクトの強いシーンといえば、ネオがモーフィアスに連れられて仮想現実の世界を体験するトレーニング・プログラム中に現れる『赤いドレスの女』のシーン(上動画)ではないだろうか。
『水が流れ落ちるモニュメント』を背景に、行き交う人々全員が黒っぽい服を着ている中で、ひときわ目立つ赤いドレスの女が現れ、まわりの全てがストップ・モーションとなり、ネオとモーフィアスだけが動いている...というシーンだ。この場所は、多くのビジネスマンや観光客が行き交うマーティン・プレイスにある「ファウンテン」だ。
また、ネオがトリニティやモーフィアスらと共に、仮想現実の世界で階段を上がる前に、黒猫が現れる同じ場面を二度目撃する『黒猫が横切るデジャヴュ』のシーン(上動画)の階段は、同じくマーティン・プレイスにある19世紀の建造物「GPO=旧中央郵便局」の中にある。
他にも、ネオが勤務するニューヨークの大手ソフトウェア会社 メタ・コーテックス社の特徴的なビルは、マーガレット・ストリートの「メットセンター」、ネオとエージェント・スミスが戦う地下鉄の駅は、「セント・ジェームス駅」・・などなど、挙げればキリがないほど、そのほとんどがシドニー中心部に実在する場所ばかりだ。
余談だが、ネオとエージェント・スミスが戦うシーンのロケは、日中ではあまりに利用客が多すぎると、夜間に行われたが、残業や夜勤で帰宅時間が遅くなってしまった人が、駅へ向かったところ封鎖されていて電車が使えず、タクシーで帰らざるをえなくなって大変だったと、後に苦情がでていたそうだ...
シドニーの住人として気さくな顔をのぞかせたキアヌ・リーブス
当時、主役のネオを演じたキアヌ・リーブスは、トータルで1年以上シドニーに滞在した。キアヌは、シドニー北部のビーチ・エリアに家を借りて住み、地元の人たちとの交流を楽しんでいたという。突然、地元のパブに現れ、一緒にスポーツ観戦しながら飲んでいたという話は、何度も耳にした。
・・・というのも、彼が住んでいたのは、我が家のあるエリアだったからだ。シドニー東部にあるフォックス・スタジオまで、愛車のバイクで通っていたらしい。当時、近所で大きなバイク音が聞こえると、「キアヌ、帰ってきたか?」などと笑いながら話をしたものだ。注)本当にキアヌかどうかは、誰も確認していない(笑)
スタジオでの撮影合間の休憩時間には、バイクにまたがり、わずか10分ほどで行ける東部のビーチへもよく訪れていたという。そんな、ネオが愛したシドニーの海は、今も変わらず、時間と共に刻々と変わる美しい風景を見せてくれる。
もうすぐ公開となるマトリックス・ファン待望の新作『マトリックス レザレクションズ』。鑑賞前に過去の3部作をおさらいするなら、ぜひ、シドニーの風景と重ね合わせながら観てほしい。〈了〉
【あわせてどうぞ】
他にもたくさんある!「ミッション: インポッシブル2」、「スーパーマン・リターンズ」、「ウルヴァリン」などなど、オーストラリアで撮影された映画の数々。
▼オーストラリアで撮影された映画ロケ地を旅する ―前編
▼オーストラリアで撮影された映画ロケ地を旅する ―後編
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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