「方針に異論があるなら転校を」...教育を軽んじ、教師を馬鹿にする日本社会が学ぶべきこと
XAVIERARNAU/ISTOCK
<現代の日本が停滞する大きな原因は教育。「教育大国イラン」と比較しても、教師が「教育以外」で疲弊する学校の現状は改革が必要だ>
近年、公立小中高校の教師の待遇が良くない、というニュースを頻繁に目にするようになった。最近でも、休職する教員の穴埋めをする代替教員が大幅に不足している話や、精神疾患で離職する教員の数が過去最多になったことなど、暗いニュースが多い。
私は以前から日本の公立学校の教員の働き方を耳にするたび、信じられない思いでいた。小学1年生の子がいる知り合いは担任の先生から「質問があればいつでもご連絡ください、夜9時くらいまでは毎日学校にいますので」と言われたという。
夜9時まで学校にいて私生活は成り立つのだろうか? 教員は残業代は出ず給与月額の4%しか支給されない。その先生にはありとあらゆることについて保護者から毎日のようにクレームが来たそうだ。案の定、その人は病欠となった後1年たっても復帰していないという。
イランは中東では断トツに教育熱心な国
ところで、皆さんにそういうイメージはないと思うが、イランは中東では断トツに教育熱心な国である。小学生のうちからテストは筆記だけでなく口頭試験もあり、一人ずつ教師の前で歴史や地理、詩の暗唱、言葉の意味を説明させられる。
親も熱心に勉強させるし、授業を完璧に理解していい点を取ることが、高学歴キャリアへの道とされる。授業は非常に厳しく、私も学生時代サボったりふざけていたりすると長い物差しで頭や手をたたかれたものである。
昨今はさすがに都市部の学校ではたたかれないようだが、それでも教師には威厳があり、生徒から恐れられ尊敬される存在だ。親は教師の指導に口を出しすぎると「教育方針に異論があるならば転校しなさい」と校長先生に言われてしまう。
教師にも教育者として高いプライドがあって、部活動の指導や雑務のため夜9時まで学校にいることはあり得ない。遅くとも夕方5時には学校を出て家族と一緒に夕食を取り時間を過ごす。そうでないと明日朝からいい授業はできない。夏休みには2カ月近くバケーションする。休暇もしっかりリラックスして楽しまないと、長い学期を乗り切れない。
教師は熱心に教え、親は子に熱心に勉強させる。この伝統はたとえ親世代が海外に移住しても変わることはないため、国外に住むイラン人も高学歴の人が多い。あるいは、海外で生活する可能性が日本人よりずっと高いためか、どの国に住んでも困らないよう教育に力を入れているとも考えられる。