コラム

日傘、辛いもの、かりゆし、風鈴も?...今こそ世界に広めたい、ニッポンの「熱中症対策」とは

2023年08月04日(金)14時20分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト、講師)
日傘

ISSEI KATOーREUTERS

<安上がり、かつ副作用も環境への悪影響もない、ニッポンの熱中症対策。温暖化が進む世界にぜひ紹介したい...>

お隣さんが暑さで倒れた。買い物から帰ってきたところだったらしい。

宅配員が80代の彼女の姿を玄関先で見つけ、庭の世話をしていた僕の元に駆け付けた。口元から血まで出ている! 幸い救急車をすぐに呼べて病院も近かったので、命に別条はなかった。

近しい人が熱中症で倒れたのは初めての経験だったが、日本全体では気がかりなほど増えている。真夏ではない5月でも、今年は全国で3600人余りが病院に搬送された。こういう事例は増える傾向にある。

 
 
 
 

もちろん、熱中症はなにも日本に限った話ではない。昨年の夏は、欧州35カ国で約6万人が暑さのため死亡したとされている。僕が育ったアメリカでも年間600人以上が熱中症で亡くなっている。

日本ではあまり聞かない種類の事例も起こっていて、それは熱中症に伴う大やけど。ラスベガスでは気温が記録的な47度にまでなったが、こうなるとコンクリートやアスファルトでできている歩道の温度が71~77度にまで上がる。

この状況では、気温に参った人はただ地面に倒れるだけでなく、熱い鉄板のような舗装に手足をつくので、皮下組織まで傷めるような深いやけどが発生する場合もあるのだ。

モハベ砂漠の中に位置するラスベガスと違って、日本では歩道の温度がそこまで上昇することはきっとないけれど、コンクリートとアスファルトは至る所にあるので、猛暑になると、やけども要注意かもしれない。

そんな熱中症だが、国が違えば対策も異なる。そして日本の対策には外国人から見て不思議なものもある。

例えば「辛いものを食べる」。僕の両親のそれぞれの文化(ハンガリーとイタリア)では唐辛子が大事な存在だが、日本のように「夏バテ防止策として」食べるというのは初耳だった。料理が辛いと余計に汗をかくので、多くの西洋人は夏はよりマイルドなものを好むように思う。

でも「汗をかく=体温が下がる」なので、確かに納得できる話だ。わが家では今、東京に昔からある内藤とうがらしを漬物にして、その夏バテ防止効果を試しているところ。

もう1つの和風・夏バテ対策は「傘」。日本のどこでも見かける日傘は、多くの国では「昔のもの」だ。

傘は元来、雨傘ではなく日傘として使われ始めたとされるが、日本以外の国で女性が日傘を使わなくなった理由としては「日焼け止め剤があるから」などが挙げられている。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、TikTok巡る合意承認したもよう=トランプ

ワールド

米政権がクックFRB理事解任巡り最高裁へ上告、下級

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBの慎重姿勢で広範に買

ビジネス

米国株式市場=主要3指数が最高値、利下げ再開を好感
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story