コラム

今後、フランスパンは日本から発展?「バゲット」がつないだ異文化交流

2023年01月10日(火)14時01分
西村カリン(ジャーナリスト)
バゲット

TOM-KICHI/ISTOCK

<昨年11月にユネスコの無形文化遺産に登録された「バゲット」。湿度の高い日本では難しいパンにもかかわらず、その美味しさは在日フランス人のお墨付き。食の交流が示す、文化の発展について>

フランスと言えば、ワイン、チーズとバゲット。食卓には欠かせないそのバゲットが昨年11月末にユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。

申請は大変なプロセスだったようで、必要な文書を集めるのに6年かかったという。正確に言えば、バゲットそのものよりもバゲットの専門技術と文化が登録された。

フランス人からすると大変うれしいことだが、実際には、最近のフランスで販売されているバゲットがどれもおいしいかといえばそんなこともない。むしろ工場で作られたバゲットが多く、言うまでもなく、それらの味や食感は良くない。

もちろん伝統と技術を守るパン屋のバゲットもある。おいしいバゲットを買うと、家に着くのを待たずに帰り道で半分以上食べてしまうフランス人は多い。夕方にパリを歩いたら、そうした場面を目にすることも珍しくない。

私は20年以上前から日本に住んで、日本のパン屋はすごいと思ったことが何度もある。理由は2つあって、まずフランスでは見たことがない種類のパンがたくさんあること。代表的なのはメロンパンだ。

もう1つは、バゲットなどフランスパンのおいしさだ。東京でパティスリーを開く知り合いのフランス人パティシエであるフレデリック・マドレーヌさんから、日本にも工場で作られたバゲットはあるけれど、一生懸命に伝統や技術を守る個人のパン屋もあって、彼らのおかげで素晴らしいバゲットを日本でも楽しめると教えてもらった。

実は、日本でおいしいバゲットを作るのには、フランスよりも難しい点がある。夏の蒸し暑さや湿気だ。おかげでバゲットはすぐグニャグニャになってしまう。でも、日本のパン屋はその難しさを乗り越えるために、いくつか戦略を立てている。

一つは焼き時間を少し短くして、お客が家でバゲットを食べる直前に軽く焼いてもらうこと。なかには夏にバゲットを販売しないパン屋もあるそうだ。

日本におけるバゲットの歴史を見ると、明治時代に教会で作られ始めたという物語があるが、本当の普及は約30年前の1990年代のこと。最初の頃はあまり人気がなかったそうだ。

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