ウクライナからの「避難民」が「難民」ではない理由
日本に到着したウクライナ難民(4月5日) KIM KYUNG HOONーREUTERS
<ロシアへの経済制裁をすぐ決断し、政府専用機を飛ばしてウクライナから「避難民」を受け入れた日本。しかし、本当に必要なのは、安心して滞在できる「法的な身分」だ>
ロシアがウクライナに侵攻してから2カ月以上がたった。目を背けたくなるような現地の悲惨な状況が、日々テレビやネットにあふれていてつらい。この戦争が、私の出身国イランでどのように報道され、人々にどう受け取られているか、友人などに聞いてみた。
イランでは地上波のテレビはあまり見られなくなっていて、人々はネット上のニュースサイトでニュースを得ることが多い。そこでは逐一ウクライナの状況が伝えられているそうだ。ミサイル攻撃、民間人の虐殺、人道回廊が機能していないことなど、日本での報道と同じか、それ以上に詳細に報道されている。
私は意外に思った。中東では冷めた目でこの戦争を見ていると思っていた。なぜなら、これまで中東で内戦や戦争が起こっても、これほどまでに世界の同情を引くことはなかったので、その扱いの格差に中東の人々は疑問を持っている、と日本のニュースでチラホラと見掛けたからだ。
しかし少なくともイランでは、そのような冷めた見方は皆無らしい。どの国が戦地になってもそれは悲惨で恐ろしいことで、起こってはいけないことであり、また被害を受けた人々は最大限に保護されなければいけない、と大いに同情した報道が毎日なされている。一つには、イランは世界でも有数の難民受け入れ国であることが背景にあるのかもしれない。
一方で、私は今回の戦争への日本の対応に大いに驚いた。日本政府は、アメリカやイギリスに歩調を合わせてすぐに経済制裁を始め、政府専用機まで飛ばして避難民を受け入れた。大手製造業の企業も、すぐにロシアでの業務停止を決めた。
このように迅速で的確な処置は、イラク戦争、チェチェン侵攻、アフガニスタン内戦、シリア内戦では全くなかった。時の政権の姿勢の差なのかもしれないが、やればできるじゃない日本! 難民を受け入れるなんて! とビックリしたのである。
しかし、鋭い読者なら気付いているでしょう。「避難民」と「難民」は、日本では扱いが違うのである。日本では、難民と認定されると定住資格を与えられ、国民健康保険に加入したり、年金や児童手当の支給を受けられたり、日本人と同じような待遇を受けることができる。