コラム

ウクライナからの「避難民」が「難民」ではない理由

2022年05月12日(木)17時45分
石野シャハラン

しかし、避難民は政府の特例措置としての受け入れであり、原則的に在留可能期間の90日プラス1年間(就労が可能な場合)しか日本に滞在できない。そしてウクライナから今回の戦争を逃れて日本に来た人々は全員避難民で、難民ではない。皆さんは、ええっ? と思わないだろうか。

悲惨な状況からやっと日本にたどり着いたウクライナ人に、たった1年ちょっとしか滞在させません、と言えるだろうか。

日本のテレビの取材を受け「日本で一から生活を建て直したい」「日本で人生をやり直したい」と言っている人たちにそれを言うのは、あまりに酷ではないだろうか? 1年と90日後、日本政府が避難民に退去するよう迫ったら、世界はその日本の姿勢を受け入れるのだろうか?

元から日本は難民認定の比率が低く(ドイツ41.7%、イギリス47.6%、日本0.5%)、受け入れ人数も少ない(ドイツ6万3456人、イギリス9108人、日本47人、いずれもUNHCRの2020年データより)。国連難民条約に1981年に加盟した国なのに難民を受け入れなさすぎるとして、常に国際社会の批判を浴びてきた。だが、日本国内での問題意識は低いと言わざるを得ない。

ウクライナ避難民を難民として認定することで、日本が世界の紛争地から逃れてきた人たちをより多く受け入れる素地ができればいいと思う。

toykyoeye_ishino_profile_w100.jpg石野シャハラン
SHAHRAN ISHINO
1980年イラン・テヘラン生まれ。2002年に留学のため来日。2015年日本国籍取得。異文化コミュニケーションアドバイザー。YouTube:「イラン出身シャハランの『言いたい放題』」
Twitter:@IshinoShahran

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

外貨準備の運用担当者、FRBの独立性に懸念=UBS

ワールド

サウジ非石油部門PMI、6月は57.2 3カ月ぶり

ワールド

ロシア失業率、5月は過去最低の2.2% 予想下回る

ビジネス

日鉄、劣後ローンで8000億円調達 買収のつなぎ融
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story