日本人も中国人も対中ODAを誤解してきた
対中ODAはもともと、「中国は発展し、日本は儲かる」というウィン-ウィンのはずだった。これまでの対中ODA総額約3兆6000億円のうち、3兆3000億円は円借款だ。返ってこないお金ではない。しかも中国は返済を遅らせたことは一度もなかったという。
また、インフラ開発などのODA事業で受託先を日本企業に限定する「タイド援助(ひも付き援助)」でなかったとしても、日本企業の中国進出に際し中国はさまざまな便宜を図ってきた。
日本側も、こうした一面を積極的に取り上げてこなかった。つまり両国とも自国の国民感情をコントロールするため、ODAのポジティブな面を国民に知らせてこなかったのだ。
中国では一般的に、日本は贖罪のためにODAを提供していると認識されており、国民の間に感謝の気持ちが薄い。
一方、日本では中国が戦後賠償を放棄した事実を知る人が少なく、政治家もメディアも「中国は感謝するどころか、軍拡をして日本に対抗している」などと批判するため、日本人は援助なんかしなければよかったと憤っている。
お互いマイナスのイメージを持ったまま終了するのはなんとも残念だ。両国政府やメディアはこれを機に、いま一度ODAの歴史的経緯を振り返り、互いを認め合えるよう総括をしてもらいたい。
そうすれば両国は未来志向の新たな信頼関係を築くことができるのではないだろうか。
周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「地球ジャーナル ゆあチャン」)としても活動。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら