コラム

コミュニティーに閉じこもる外国人と、日本社会に溶け込む外国人

2021年11月03日(水)10時10分
周 来友(しゅう・らいゆう)
喫茶店の「モーニング」

ZHOU LAIYOU

<新大久保にイスラム教徒やベトナム人、ネパール人らのコミュニティーが形成され、町は変貌を遂げている。だがそれはよいことなのか。私は地元の喫茶店で、常連仲間のおばあちゃんが言ったことが忘れられない>

世界中およそどの国でも、主要な都市にチャイナタウンが存在する。

華僑・華人がつくったこのコミュニティーは、日本でも古くから横浜、神戸、長崎などに根付いており、近年では新華僑(1978年の改革開放以後に国を出た華僑とその子孫)によって形成された、東京の池袋や高田馬場、埼玉の西川口などの中華街が存在感を増している。

こうした外国人集住地区には専門のレストランや食材店が軒を連ねるが、そこで享受できるのは故郷の味だけではない。異国で生活する上で必要となる有形無形のサポートが得られるのだ。

ただ、それは移民にとって本当によいことなのか。

私は34年前に来日して以来ずっと、日本社会に溶け込もうと努力してきた。中国人の友人や知人は大勢いるが、同胞相手の商売をしてこなかったこともあり、中華街に事務所を構えたりすることはなかった。

日本人が住む街に住み、地元の商店街で買い物をし、近所の人と挨拶を交わす。子供の誕生日ケーキを買うのも地元のケーキ屋だ。

長年住んできた新宿区は都内で最も外国人比率が高い地域だが、ここに居を構えたのはそれが理由というより、以前やっていた仕事の都合上、便利だったから。

新宿区に住んで四半世紀以上になるが、大いに気に入っている。なにごとも郷に入れば郷に従え。どんな場所も住めば都なのだ。

しかし、ここ新宿区でも地元に溶け込めていない外国人が少なくない。

新宿区の一角を成す「韓流の町」新大久保が最近、大きく変貌しているのをご存じだろうか。

新大久保駅を出て、北側にはイスラム教徒(ハラルフード店が多い)、西側にはベトナムなど東南アジアの人々、さらにはネパール人、中国人のコミュニティーも形成されており、東側に広がる韓国系との住み分けが始まっている。

ちなみに、ベトナムのサンドイッチ「バインミー」の専門店も増えており、おいしいので機会があればぜひ足を運んでもらいたい。

話がそれてしまったが、多国籍化によってにぎやかさが増す一方、ゴミ出しや騒音など、独自の生活習慣やマナーの悪さを理由とした地元住民との軋轢が目立ってきている。

個人的な見解を言わせてもらえば、単純労働者だけでなく、専門職に就いているホワイトカラーも含め、日本に溶け込もうと努力する外国人があまりに少ない。

私は毎朝、近所にある昔ながらの喫茶店で「モーニング」を食べる。店の主人や常連の日本人たちとの会話は楽しいし、地元の情報をそこで得ることもできて重宝している。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story