コラム

日本企業の悪しき慣習はコロナで駆逐される

2020年07月15日(水)19時15分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)

リモートで仕事ができる人にとっては、コロナ危機はリモートで働く権利を確立するチャンス METAMORWORKS/ISTOCK

<社内の力関係だとか、飲みにケーションだとか......理不尽な企業文化を葬る大きな契機にするべき>

いつの間にか7月に入る。ニューズウィークのこの号が発売になる頃には、コロナ禍は既に遠くなっているのか、感染者増に戻ってしまっているのか。前者であってほしいものだが、1つだけ確かなことがある。それはこの号が発売される頃になっても、私の周りの外国人の友人たちの多くはオフィスに戻っていないだろうし、自分の子供をまだ学校に戻していないだろう、ということである。

緊急事態宣言の最中から、私もはやりの「ズーム(Zoom)飲み会」を何度もしている。ずいぶん長く集まっていなかったグループが一堂に会したり、日本を離れている友達とつながったり、というのはコロナの数少ない恩恵だ。

面白いもので、欧米に暮らす友人たちはどんどん通常の生活に戻っていて、まるでコロナ前みたいと声をそろえる。逆に日本に住む外国人の友人たちの間では、緊急事態宣言の解除が早過ぎる、絶対にオフィスにも学校にも戻らないし戻らせない......という意見が圧倒的だ。

一番感心したのは中国人の友人の話だ。彼女は日本の大手企業で働いているが、2月半ばから自主的に出勤を取りやめて家で仕事をしている。リモートワークを始めた頃は、出勤するよう毎日のように上司に電話で促されていたが、そのうち上司の上司から直々に「出社するように」というお達しがあったそうだ。それでも彼女は、いかにこのウイルスが危険かを訴え、頑として出社せず、緊急事態宣言が出るまで頑張った。私も言うべきことは言うタイプだが、彼女ほど強くいられるだろうか。だが彼女は「会社は私の命を守ってくれない。自分の命は自分で守らなきゃ」とケロッとしていた。もちろん今でも家族で外出自粛中だ。

ビデオ「監視」システムも

同様のことを言う人には、なぜか外国人が多い。彼らは異口同音に「自分の命は自分で守るもの」と言う。上司の不興を買おうとも、子供の勉強が遅れようとも平気である。もちろん、リモートで仕事ができる恵まれた職種である人が多い。子供も幸い、まだ低学年である。だがそこには同調圧力とか、空気を読むとか、みんなで渡れば怖くない、といった言葉はない。「私のことは私が決める」のである。

対照的に、ある日本人の友人からは残念な話を聞いた。ビデオ会議のあと「会議中に飲み物を飲むのはどうかと思う」とやんわり注意されたそうだ。それでもリモートワーク管理システムがないだけマシだ、とこの友人は言う。家から働く社員がどのくらいパソコンから離れているか、どんなウェブサイトを見ているか、はたまた誰にどんなメールを書いているか、といったことまで上司に丸見えになるシステムが販売されているそうではないか。それは管理ではなく、監視である。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:9月株安の経験則に変調、短期筋に買い余力

ビジネス

ロシュ、米バイオ企業を最大35億ドルで買収へ 肝臓

ワールド

ドイツ銀行、第3四半期の債券・為替事業はコンセンサ

ワールド

ベトナム、重要インフラ投資に警察の承認義務化へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story