コラム

外国人もコロナ支援の対象にした日本は、もっとそれをアピールするべき

2020年06月26日(金)17時30分
李 娜兀(リ・ナオル)

留学生への給付金に「日本に将来貢献するような人材に限る」という要件を付けたことは批判されたが monzenmachi/iStock.

<どの国でも支援対象に外国人が入っているわけではないことは、もっと知られてもよいと思う>

日韓家族のわが家にも6月初め、「特別定額給付金」が振り込まれた。郵送で区役所に申し込んで約2週間。想像より早かった。外食を増やしたり子供たちの習い事を再開したりして、外出自粛で打撃を受けた地域経済を支えるために使おうと思っている。

特別定額給付金は4月27日時点で住民基本台帳に登録されていれば、全ての外国人も支給対象だ。わが家は外出自粛に家族全員で取り組んだし、それによって増えた出費や失った収入もある。そもそも日本で納税しているので、支給対象となるのは当然、という気持ちがある。

一方で、これがどの国でも実施していることではないということは、もっと広く知られてよいと思う。

例えば韓国政府も日本同様、緊急災難支援金を支給したが、外国人は対象に含まれなかった。アメリカの給付金は長期居住外国人も支給対象としたが、多くの留学生はその対象外だった。留学生も含めた外国人を支給対象とした日本は、国際的にカナダやニュージーランドなど外国人に対してより公平な政策を取った側の一員だと言える。

日本の新型コロナウイルス対応での給付金については、学生を対象とした「学生支援緊急給付金」も話題になった。留学生にのみ成績要件を付け、文部科学省が「いずれ母国に帰る留学生が多い中、日本に将来貢献するような人材に限る要件を決めた」と説明した(5月22日付毎日新聞朝刊)。

これには「留学生に対して差別的だ」との批判が出たそうだ。実際、私もツイッターなどで文科省を激しく批判するコメントを目にした。

かつての留学生は「お客さん」感覚だった

確かに、困窮しているのにぎりぎりで支給対象から外れる留学生の立場になれば、憤慨する気持ちは理解できる。ただ私のように20数年前に日本に留学に来た旧世代にとっては、留学生を対象にしたこと、さらには文科省のコメントそのものも、日本社会が「外国人と共に生きる」という方向に前進していることの表れだと、評価したい気持ちが強い。

私が留学生として日本に来た頃は、私を含む周囲の多くの留学生は日本に残るより、必要な勉強をして自国へ帰るつもりだった。また日本社会も、留学生たちはどちらかといえば一時的に預かるお客さんという感覚だったと思う。

来日して2年間住んでいた東京・駒場の留学生会館には各階ごとにテレビルームがあり、授業を終えた留学生たちが雑談する場になっていた。よく話題にされたのは「日本社会のここが理解できない、あそこがおかしい」という話だった。それも「公用語」は英語だ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story