コラム

フランスから見ると驚愕の域、日本の鉄道のあり得ない素晴らしさ

2020年03月13日(金)18時30分
西村カリン(ジャーナリスト)

京都駅に「まるで高速の地下鉄のように」到着する新幹線 ISSEI KATO - REUTERS

<フランス出身の筆者は言う。「他国の鉄道会社の経営者にとって、東京の電車の世界は次元が違う。なぜ日本の鉄道会社はもっと積極的に海外の企業と提携し、自社の技術を売り込まないのか」>

22年前に初めて来日したときに驚いたことは多いけれど、最も印象的だったのは鉄道の完璧さだ。私は電車や乗り物には全く興味がないし、フランスでは電車やメトロのイメージはあまり良くない。

にもかかわらず、日本に来たらびっくり。ここまで時間を守る電車はフランスだけでなくEUでも見たことがない。名古屋の新幹線のホームで待っていると、大体3分ごとに「のぞみ」「ひかり」などが次々と来る。まるで高速の地下鉄のようで、フランスなら考えられない。

日本ではなぜ可能なのか、いろいろと取材をした。東京メトロの社員にインタビューしたとき、ダイヤは「5秒単位」で作成していると言われて、またびっくりした。運転士は特別なトレーニングを受け、スピードメーターを見なくても速度が分かり、なるべく時間を守るように走るという。

日本人にとっては、プロの運転士だから当たり前なのかもしれないが、フランス国有鉄道(SNCF)の社員に「5秒単位」を求めたら、たぶんストライキをする。「無理なことをさせるな」と彼らは抗議するだろう。

フランスでは、ストで最も国民に迷惑をかけるのは鉄道会社の社員だと言っても過言ではない。彼らに理由がないわけではないが、なんでもかんでもストだから、フランスは世界でストのトップランナーだ。

私は日本に20年間住み、毎日電車に乗っても、一回もストを経験したことがない。地震や台風、人身事故などがない限り、ほとんどの電車は時間どおりに来る。これがEUだと、「時間どおり」の定義は5分以下。つまり、5分遅れても「定刻」だ。5秒単位という目標がいかに遠いかが分かる。1分単位で達成できれば、みんな大満足だろう。

日本の駅の自動改札機も技術的に素晴らしく、1分間に60~80人が通ることができる。パリの地下鉄は速ければ、または故障中でなければ1分間に10人。技術レベルの違いがこんなに大きい。

ただ、パリの地下鉄で日本と同じ改札機にしたら、切符を買わずに通る乗客が多くなり過ぎる。それを防ぐために、わざと通りづらい改札機にしている。しかも最近は無人のメトロの出入り口が多いから、切符や交通カードで問題があった場合、相談できる駅員がいない。

切符の自動販売機にしても、圧倒的に日本の技術のほうが優れている。電車のデザインも面白い。子供はさまざまな車両の形や色が好きだ。ほとんどの日本人の男の子は一時期、「電車の運転士になりたい」と言うのではないか。電車がうるさくて汚いパリでは、絶対に子供たちはそんなことは言わない。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story