コラム

マクロンも羨む日本の定年引き上げ、フランスで「70歳定年」とは絶対に言えない

2020年02月14日(金)18時40分
西村カリン(AFP通信記者)

もちろん、EUの国々においても、退職できる年齢は平均寿命とともに上がっているが、70歳あるいは80歳まで働く人の割合は低い。例えば、フランスにおいて70歳以上で働く人は8000人にすぎない。フランスの約2倍の人口を持つ日本では、厚生労働省によると、70歳以上の労働者は昨年6月時点で57万5000人だった。文化の違いがよく分かる。

働くと脳が活性化するので、高齢者にとって良い面はたくさんあるだろうが、良くない面もあると私は思う。個人的な意見だが、日本では若者が管理職に昇格するまでに時間がかかり過ぎる。これは、年齢とともに序列が上がる企業がいまだに多いから。若者のモチベーションに悪影響を及ぼす労働環境ではないかと思う。

もちろんベテランの経験を無視することはできないが、若者にもっとチャンスをあげるべきだ。また、IT技術や人工知能(AI)があふれる今の世界では、若者のほうが知識のある分野が増えるから、年功序列は時代錯誤だ。その点では、能力主義で比較的昇進しやすいフランスの労働環境のほうがいい。

日本の大企業のイノベーション力が落ちていることは間違いない。30年前や15年前に比べたら明らかだ。決定権を持つ経営者の高齢化が1つの原因だと思う。

magTokyoEye_Nishimura.jpg西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。1999年からフリージャーナリスト、2004年からAFP通信東京特派員。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。

<本誌2020年2月11日号掲載>

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