日本の男性若年層の手取り年収は、過去30年で50万円近くも減っている
若者の「手取り年収」の都道府県地図を、昔と今で比べてみると、ぞっとするような模様になる。1992年の25~34歳男性有業者の年収中央値は376万円(総務省『就業構造基本調査』)。90年代では税金等で持っていかれる割合は14.8%だったので<表1>、この分を引いた手取り年収にすると320万円。同じやり方で、2022年の手取り年収の中央値を出すと277万円。現在では、結婚期の男性の手取り年収中央値は300万円に届かない。
手取り年収の中央値が300万円に満たない県に色をつけた地図にすると、<図1>のようになる。左は1992年、右は2022年のものだ。
色付きの県は1992年では19県だったが、現在では東京・神奈川・愛知を除く全県が染まってしまっている。若者のワーキングプア化の進行が一目瞭然だ。「失われた30年」の可視化と言っていい。未婚化・少子化が進むわけだ。
こういう変化が起きている原因として、増税の影響が大きい。高齢化が進む中、やむを得ない面もあるが、税金が適切な用途に使われているのか、疑問に思うこともしばしばだ。物価高が止まらないので、全世帯に食券を配ろうという案が出たが、それなら最初から(重税を)取らないほうがいい。「配らなくていいから取るな」は、今やSNS上の俗語となっている。
過去最高となっている税収の内訳を見ても、増えているのは消費税だけで、所得税や法人税は減っている。今では、逆累進の消費税の比重が最も高い。税金には「再分配」の機能が期待されることを思うと、こうした構造の是正も求められる。奢侈品を除く食品については、消費税を軽減(撤廃)すべきだ。
重くなり過ぎている負担を除く――これが国民の暮らしを楽にする政策の基本スタンスだ。人生のイベントアワーにいる、若年層の多くが望んでいることでもある。
<資料:厚労省『国民生活基礎調査』、
総務省『就業構造基本調査』>