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日本社会

パートタイム就労が正規・非正規という「身分差」と重なる日本

2024年10月10日(木)15時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

残念というか、日本ではこういう選択肢は一般的ではない。フルタイム(正社員)の職を辞してパートになり、後になってまた戻るのは容易でない。それは、フルタイム就業者の割合を年代ごとに出し、線でつないだグラフにするとよく分かる。<図2>は、日本・アメリカ・スウェーデンの3カ国の比較だ。

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6本の折れ線が描かれているが、日本の女性だけが明瞭な右下がりになっている。結婚・出産により正社員を辞し、パートや家事労働に移る人が多いためだが、後から戻ろうにも戻れない「片道切符」型だ。

他の2国の女性は違っていて、アメリカでは30代から40代にかけて増え、スウェーデンでは40代までは一貫して増え続ける。子育てが一段落してからフルタイム就業に就く(戻る)人が多い。日本の右下がりの線を見たら、さぞ驚くだろう。「日本の女性は、結婚して子を産もうとは思うまい」と。片道切符型のライフコースを変えることは、未婚化・少子化対策の上でも大きな位置を占める。

むろん、パートといった柔軟な働き方を否定するものではない。日本では、フルタイムとパートは「正規・非正規」というような身分差と重なってしまっているが、海外では、(自分で選んだ)労働時間の差でしかない。同一労働同一労働を徹底し、かつ「正規・非正規」というような呼称は改める時期にきている。

これから少ない労働力で社会を回していくことになるが、長寿化により、親の介護といった事情を抱える人も多くなる。柔軟な働き方に、市民権を与えるべきだ。人口減少社会を持続可能にするための条件でもある。

<資料:「ISSP 2012 - Family and Changing Gender Roles IV」
    「ISSP 2020 - Environment IV 」

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