中国海軍が台湾と与那国島の間を頻繁に航行する新たな作戦意図
Worrisome New Trends
第3に、海洋調査船は台湾の海岸線に徐々に接近している。台湾の接続水域に入った事例は23年は5件で全体の27.8%だったが、2024年は既に11件で全体の68.8%。この11件のうち6件が与那国島の西側の海峡で発生している。
第4に、2024年に海洋調査船は台湾と与那国島の間の海域で「芝刈りパターン」を3回、見せている。細かく往復を繰り返すこの動きは、入念な調査をしていると考えられる。
3つ目の傾向は与那国島の南の海域に関係する。
台湾国防部によれば、2024年に入って台湾の東側では中国の艦載対潜水艦ヘリの活動が増えた。台湾周辺で対潜ヘリの活動が確認された日数は2023年は90日だったが、今年は8月末の時点で68日だ。
最南端の鵝鑾鼻(ガランピ)からフィリピン最北端ヤミ島に至る南西空域では2023年は33日で、今年は19日。ところが台湾北東部の蘇澳および与那国島より南の海域では、2023年は59日だったのが今年は既に62日を記録している。
海洋調査船の傾向と合わせて考えるなら、中国は明らかに与那国島周辺で対潜能力を高めている。裏には浙江省に配備した通常動力型潜水艦の活動をこの海域で強化する狙いがあると考えられる。
今こそ日台連携強化を
3つの傾向からはまた、与那国島の東西の海域で将来的に空母の航行を増やしたい中国の思惑が浮かび上がる。
日本近海で活動する中国の空母とこれに随行する原子力潜水艦は、主に山東省青島が拠点。そのため与那国島周辺の海洋調査と対潜水艦作戦の強化は欠かせない。海域に関する知識不足のせいで他国の潜水艦に追跡されるような事態は、避けたいからだ。
これらの傾向は日本のみならずアメリカや台湾の政策にも影響を及ぼす。まず中国は対米防衛線「第1列島線」に沿って日米が設置した海中監視網をかいくぐって西太平洋に出る動きを、一層強めるかもしれない。
日米が南西諸島に海中監視システムを確立したことを示す報告はあるが、与那国島の西側の海峡に関しては信頼に足る報告がない。この海域は日台の管轄下にあり、両者は正式な軍事同盟を結んでいない。そのため共同で長期的に海中監視システムを運営するのは困難かもしれない。
中国はこの隙を突き、日米の対潜能力が強い第1列島線を避けることで、探知されずに西太平洋に進出する可能性を高めようとするだろう。台湾と与那国島の海域調査に力を入れ、対潜ヘリの出動を増やしてきたのはそのためだ。