最新記事
学校

公的調査では見えてこない、子どもの不登校の本当の理由

2024年9月11日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
放課後の小学生

文科省調査では「無気力、不安」が不登校要因として最も多いが民間調査では「教職員との関係」などが多い KeyRabbits/photoAC

<小中学生の不登校の要因について、文科省調査と民間調査の間には大きな違いがある>

新学期が始まったが、子どもが学校に行くのを渋る家庭もあったのではないだろうか。いつの時代もそうだが、特に近年では、学校生活に不適応を起こす子どもが増えている。

それは、不登校の児童生徒数の推移で見て取れる。不登校の児童生徒とは、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(病気や経済的理由、新型コロナウイルスの感染回避による者を除く)」をいう(文科省)。統計では、こうした理由により年度内に30日以上休んだ者が、不登校児童生徒として計上されている。

この数は、平成初頭の1991年度からの推移が分かる。<図1>は、小・中学校の不登校児童生徒数がどう変わってきたかを示したものだ。

newsweekjp_20240911013218.png


不登校児の数は1991年度では6万7000人だったが、世紀が変わった2000年度では13万4000人にまで倍増した。平成不況の深刻化により、親が失職するなどして、情緒が不安定な子が増えたためかもしれない。

その後は微減するものの、2012年度をボトムに増加に転じる。2017年度以降は「うなぎ登り」とも言える推移で、毎年1万人、2万人と増え、2021年度から22年度にかけては5万4000人も増加した。2022年度は29万9000人で、「不登校児30万人の時代」という見出しが新聞に踊った。

スマホが子どもにも行き渡るようになった時期と重なるが、夜遅くまでSNSやゲームに興じ、朝起きるのが辛くなったとか、趣向を凝らした動画で知識を得られるので学校に行くインセンティブが薄れたとか、要因はいろいろ考えられる。インターネット上で創作物を発信して、普通のサラリーマン以上の収入を得る生徒だっている。学校に行くのは月に数回。親や教師も公認だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

川崎重社長、防衛事業の売上高見通し上振れ 高市政権

ワールド

米16州、EV充電施設の助成金停止で連邦政府を提訴

ワールド

中国最新空母「福建」、台湾海峡を初めて通過=台湾国

ワールド

ウクライナ安全保証、西側部隊のロシア軍撃退あり得る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中